ご挨拶

「栄枯盛衰・前途洋洋」をお訪ねいただきありがとうございます。

このブログは、2006年2月26日から書き始めました。当時、私は45歳。社会人となって20年余、なんともいえない行き詰まり感を抱えていました。40代半ばで多くの人が遭遇すると言われる「中年期の危機(中年クライシス)」をどう乗り越えていくかを、自分自身の問題としてとらえ、その日々の試行錯誤の足跡を記すことで、同じような悩みを抱える同世代の読者の参考になればと始めました。

個人としての心の問題、これからの生き方、働く場としての職場のこと、ともに暮らす家族と家庭のことなど中年クライシスを取り巻くいろいろなテーマに加え、ネット社会のおける技術進歩が個人の生活にどう影響するかなども関心事です。ご関心のあるテーマがある場合は、左下のカテゴリーから該当するものをクリックしてみて下さい。

タイトルの「栄枯盛衰・前途洋洋」の由来については、2006年2月26日の「四字熟語」の記事をご参照下さい。私の書いたもののどこかひと言でも、ご来訪された方の、役に立てばと思っています。

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2009年10月25日 (日)

インターネットに繋がらない生活

またしばらくブログが書けなかった。しばらく前、インターネット接続に使っているCATV会社が貸与ぢているモデムが型式が古くなったので交換するという話になり、新型モデムに交換してもらってからインターネットに繋がりにくくなった。
我が家は家族はデスクトップ4台、ノート1台を、モデムから無線ルーター経由で無線あるいは有線でパソコンに繋いでいる。

最初は繋がりにくいだけだったが、その後、とうとう1台以外繋がらなくなった。新型モデムに合わせ、無線ルーターの設定を変える必要があるようだが、いろいろいじってみてもうまくいかない。あるいは、現在使用している無線ルーターの機能の一部が故障しているのか、結局、原因はわからずじまいで、2週間近くたってしまった。

その間、私のパソコンでは電子メールも、インターネットのホームページも見ることができない日が続いた。ホームページを見られないのは、我慢できるが、電子メールが見られないのは困った。ちょうど、あるプライベートな飲み会の幹事をしていて、会場の案内から、出欠の確認まですべて電子メールでやりとりしていたので、最後の出欠連絡の確認できないまま、会の期日だけが迫る。かろうじて一瞬繋がったノートPCで電子メールを確認し、なんとか事なきを得たが、いまや電子メールが抜きでの生活が無理だということがよくわかった。

私だけでなく子どもたちもインターネットが繋がらないと困ると言われ、結局、新しい無線ルーターを買い、ルーターを入れ替えたら、これまで通り5台のパソコンに繋がるようになった。

新しいルーターを繋ぐ時に、最初はうまくいかず、モデム側の電源もいったん30分ほど置いて繋ぐよう説明書の注意書きがあり、その通りやったらうまくいった。
ひょっとすつと、前のルーターも電源を切ってしばらく放置しておけばうまく繋がったのかもしっれないと思ったが、いまさらうまくいっている新しいルーターの設定を全部やり直す気にもならず、前の無線ルーターが故障していたのかどうかはわからずじまいだった。

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2009年10月14日 (水)

時代の変化、社会の変化をどうとらえるのか

最近、ブログを書く回数がめっきり減っているし、書いている内容も10回連続で将棋の話題。将棋のブログと誤解かれるかもしれない。
常々書いているように、自分ひとりの頭脳だけで勝負し、その結果責任を一人で背負うプロ棋士の生き方は、究極の自己責任の世界であり、その生き様から我々が学ぶものは多いと思っている。

しかし、将棋だけに関心を持っているわけではなく、他にもいろいろな事に関心はある。特に、この半年ほど考えていることは、昨年(2008年)夏のリーマン・ショック以降、時代が変化したことは、誰もが認めるところだろう。

しかし、これまでの時代を支えてきたもののうち、何が変わったのか、一方、変わらないものは何なのか。変わりつつあるものがおぼろげであってもつかめれば、これからの自らの生き方を考える上で、何かのヒントになるかもしれない。そんなことを考えながら、あさるように本を見繕いながら読みあさっているのが、正直なところだ、

時代が変わっているというのは、多くの人が感じていることのようで、硬軟取り混ぜて、現在をどうとらえ、未来へどう活かしていくかをテーマにしている本が増えたように思う。

すでに、このブログで紹介した本以外にも

橋本治著『大不況には本を読む』(中公新書クラレ)
堤清二、三浦展著『無印ニッポン―20世紀消費社会の終焉』(中公新書)
上野千鶴子、辻元清美著『世代間連帯』(岩波新書)<紹介済み>
高原基彰著『現代日本の転機―「自由」と「安定」のジレンマ 』(NHKブックス)
藤原和博著『35歳の教科書―今から始める戦略的人生計画』(幻冬舎メディアコンサルティング)
五十嵐 敬喜、小川 明雄著『道路をどうするか』(岩波新書)
村上龍著『無趣味のすすめ』(幻冬舎)

まだ、今のところ、ブログの記事として取り上げるには至っていないが、いずれ、書く機会が来ればと思っている。変化の大きさを考えれば、まだまだ多くの本を読んで、自分の考えをまとめていくことが必要なのだろう。当面は、インプットの時期である。

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2009年10月12日 (月)

第68期A級順位戦4回戦、谷川浩司九段と森内俊之九段が勝って名人挑戦者レースのトップ、2番手を維持

将棋の第68期 A級順位戦は10月に入り4回戦が始まった。先週(2009年10月8日)、大阪で3連勝中の谷川浩司九段が3連敗とふるわない佐藤康光九段と対局、東京ではともに2勝1敗の森内俊之九段と三浦弘行八段が対戦した。

ホームグラウンドの大阪で戦う谷川九段は、ここで勝って4連勝とし、単独トップの地位を維持しておきたいところ。強敵である森内九段が星一つの差で追っていることもあり、森内九段との直接対決まで1勝の差は維持しておきたい。
一方、永世棋聖の資格を持つ佐藤九段はまさかの3連敗スタート。他に丸山九段、藤井九段と3連敗が2人いるが、4回戦で2人の対局が組まれており、どちらかは連敗を脱する。ここで敗れると最下位2人に入ることが確定すし、4敗となれば残り5連勝でも名人挑戦は絶望的になる。

東京で対局する森内九段、三浦八段の2人はともに2勝1敗であり、勝って3勝1敗とすれば、谷川九段の成績次第では名人挑戦者レースの同率首位の可能性も出てくる。負けて2勝2敗となれば、一歩後退である。

大阪の谷川vs佐藤戦は、谷川九段が先手。谷川九段から角交換のあと、後手の佐藤九段が向かい飛車に構える。腰掛け銀でお互い向かいあう。谷川九段の駒が、全体に前に進み、谷川陣にスペースができたところを狙い、佐藤九段が角を放ち馬作りを狙う一手で中盤戦に突入。谷川陣の守りが万全でないことを咎める狙いか、自陣を美濃囲いで固める佐藤九段は飛車切りまで敢行して攻める。しかし、谷川九段は手にした飛車、角を次々と佐藤陣に打ち、自陣に引き戻し、最後は自玉を金1枚、銀3枚に加え竜1枚、馬2枚で守る鉄壁の布陣。佐藤九段の攻めを受けきって、攻めが途切れたところで、端から攻め、守りの馬2枚も攻めに出動、佐藤九段を投了に追い込んだ。
これで、谷川九段は単独トップを守る4連勝。佐藤九段はまさかの4連敗となった。

東京の森内vs三浦戦は三浦八段の先手。後手の森内九段の一手損角換わりに対して、三浦八段は 4筋からの早繰り銀で対抗。将棋の流れは、森内九段の駒が手順にそって自然と前へ前へと進むのに対し、三浦八段の攻め駒の右銀や飛車が自陣で右往左往している。三浦八段も後半、飛車、銀、桂馬を動員して攻勢に出たが、森内玉は巧みに逃げ、最後は森内九段に王手飛車取りに角を打たれ、飛車を抜かれた。そこから10手もしないうちに三浦八段の投了となった。全体を通して、森内九段の懐の深さを感じさせるような指し回しで、竜王戦の挑戦を決め、気力充実をうかがわせる内容だった。4回戦では、2勝1敗どうしの星のつぶし合いが3局(森内vs三浦戦、郷田vs井上戦、木村vs高橋戦)あるが、まず森内九段が3勝1敗として谷川九段追撃に名乗りをあげた。

次は、木村八段vs高橋九段戦が10月15日に行われる。どちらが、名人挑戦者レースに踏みとどまるだろうか。

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2009年10月 1日 (木)

第50期王位戦七番勝負第7局、深浦康市王位、挑戦者木村一基八段を相手に、3連敗後の4連勝で執念のタイトル防衛

7月13・14日の第1局で開幕した第50期王位戦七番勝負、挑戦者木村一基八段が破竹の3連勝でタイトル奪取を手中にしたと思われたが、故郷佐世保での第4局で勝利した深浦康市王位がその後3連勝してとうとう互角の成績に持ち込み、昨日(2009年9月29日)からタイトルの行方を決める最終の第7局が始まった。

対局場は、2年前羽生王位からタイトルを奪い、昨年は挑戦者羽生名人を退けタイトル防衛を決めた神奈川県秦野市の「陣屋」。陣屋での第7局で2連勝の深浦王位にとっては、相性のいいホームグラウンドに帰ってきたようなものであろう。

第7局は振り駒で深浦王位の先手。戦型は、双方居飛車で飛車先を突き合う相掛かりから、深浦王位の横歩取りに対し、後手木村八段は8五に飛車を引く、「中座飛車(8五飛戦法)」に。
途中、木村八段が角切りの強手で、攻めの主導権を握り、飛車を深浦陣に打ち込み、深浦玉の行動範囲はかなり狭くなる。しかし、深浦王位も玉の逃げ道を作りつつ反撃をうかがう。攻防が入れ替わりながらも、深浦玉は自陣からするすると盤面中央に逃げ出す。木村八段は自陣角で深浦玉の逃げ道を抑えようとするが、駒があまりない6筋から8筋の中央を角筋を避けながらが深浦玉はどんどん上へと逃げ、木村陣に入玉しただけでなく、木村八段が放った△9二の自陣角の背後、木村陣の隅、▲9一へと逃げ込んだ。隣の▲8一に王様を守る成銀が張り付く。木村八段としては、深浦玉に自陣の9一まで逃げ込まれては、前に動く駒が中心になっている将棋では簡単に詰ませることはできない。自玉に余裕のできた深浦王位は、左右から木村玉を挟撃。受けのなくなった木村八段が無念の投了となった。
投了図を見ると、深浦玉を追い詰めるべく木村八段が深浦陣に放った△3九飛が、そのままの場所にある。この飛車が、「竜」になって深浦玉を追い詰めることができないまま、終ったことが木村八段の最大の誤算。どこかで、深浦玉の上部脱出を遮る一手が必要だったのだろう。

深浦王位は、昨年の竜王戦で渡辺竜王が羽生名人を相手に演じた3連敗後の4連勝を、木村八段を相手に再演してみせた。竜王位挑戦こそ逃したものの虎の子の「王位」タイトルは死守し、3連覇を達成した。
王位タイトル3連覇は、50期の歴史の中で、大山康晴、中原誠、谷川浩司、羽生善治の4人の永世名人しか成し遂げていない。「5連覇、または通算10期」という「永世王位」の称号も可能性が出てきた。永世王位となると、大山、中原、羽生の3人だけとなる。永世称号棋士として将棋界の歴史にその名を刻めるか、まずは、次回の第51期での防衛を目指すことから始まる。

第50期王位戦第7局 深浦康市王位vs木村一基八段戦の棋譜

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2009年9月26日 (土)

第68期A級順位戦3回戦終了、谷川浩司九段が3連勝で単独トップに

第57期王座戦での羽生善治王座の防衛が決まった昨日(2009年9月25日)、大阪の将棋会館では、A級順位戦3回戦の最終局、谷川浩司九段(2勝)vs丸山忠久九段(2敗)の対局が行われた。
名人戦棋譜速報の解説によれば、これまでの2人の対戦成績は谷川九段25勝、丸山九段23勝と拮抗している。

谷川九段は前回名人挑戦者となった第64期順位戦以来久々の開幕2連勝のスタート。過去2年、降級を気にする成績だっただけに、今期の復調が目立つ。これまで、A級でただ1人の40代棋士だったが、今期は2歳年上でかつてタイトルを争ったライバル高橋道雄九段、関西から同じ若松七段門下の弟弟子井上慶太八段という2人の40代棋士が揃ってA級に復帰し、健闘していることも刺激になっているに違いない。
一方の丸山九段は、A級・名人12期目にして初の2連敗スタート。過去をさかのぼってもみても、プロ3年目の第51期(1992年)順位戦C級1組で2連敗して以来の不調のスタートだ。これまで数年間維持してきた王位戦リーグ、王将戦リーグからも陥落しており、昨年後半からの不調が目立つ。
3回戦を終了したA級棋士の8人は2勝1敗が6人、3敗が2名となっており、ここまで2連勝の谷川九段は、3連勝として単独トップに立ちたいところ。一方、丸山九段としては、早く1勝をあげ、降級レースからは一歩距離を置きたいところ。

本局は、丸山九段の先手。居飛車の丸山九段に対し、谷川九段はゴキゲン中飛車。どちらも負けたくないということからか、相穴熊でお互い守りを固める展開に。中盤以降の解説では、ずっと丸山九段優勢とのコメントが続いていたが、最後の寄せの場面で、寄せ切れず、谷川九段が逆転。丸山九段が投了し、谷川九段の3連勝、丸山九段の3連敗が決まった。

これで第68期A級順位戦3回戦を終了した時点でのA級棋士10人の成績は以下の通りとなった。( )内は今期のA級順位。
3勝0敗 谷川九浩司段(7位)
2勝1敗 郷田真隆九段(1位)、森内俊之九段(3位)、木村一基八段(5位)、高橋道雄九段(9位)、井上慶太八段(10位)
0勝3敗 佐藤康光九段(2位)、丸山忠久九段(4位)、藤井猛九段(6位)

2年前の第66期 A級順位戦で4回戦を終えた時点で、4勝2名、3勝1敗3名、1勝3敗3名、4敗2名となり、2勝2敗者がおらず、上位グループ5名とと下位グループ5名にくっきり分かれたことがあったが、今回も3回戦を終えた時点で1勝2敗者がおらず、3勝1名、2勝1敗6名、3敗が3名と明暗が分かれる結果となった。
第66期の時は、その時点の4連敗だった谷川九段と佐藤康光九段は3勝6敗で残留を果たし、1勝3敗の3名のうち、久保利明八段(当時)が2勝7敗、行方尚史八段が1勝8敗で降級となった。

今回はまだ3回戦であり、2勝1敗の6名の中から降級者が出ないとは言い切れないが、3連敗の3人にとって、2つの勝ち星の差は大きい。4回戦は、なんと3連敗の3人のうち、丸山九段と藤井九段が生き残りを賭けて戦う。負けた方は4連敗となり、A級残留が覚束なくなる。
一方、もう一人の3敗佐藤九段は3連勝スタートの谷川九段との対局。ここで、3連勝の谷川九段に土をつければ、挑戦者レースも混戦となるが、負ければ丸山vs藤井戦の敗者とともに降級にさらに近づくことになる。
来年3月のA級順位戦の最終局にどんな結末を迎えることになるのか、今期も目が離せない。

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2009年9月25日 (金)

第57期王座戦五番勝負は羽生善治王座が3連勝で挑戦者山崎隆之七段を降し、18連覇達成

羽生善治王座が2連勝で、挑戦者山崎隆之七段をカド番に追い込んだ第57期王座戦5番勝負。
9月27日が誕生日の羽生王座にとって、生まれ月の9月から始まる王座戦は相性が良く、1992年の第40期王座戦で当時の福崎文吾王座からタイトルを奪って以来、これまで17連覇。
また、2005年の第53期王座戦から3連勝でのタイトル防衛を続けており、第52期王座戦第4局で当時の森内俊之三冠(名人・竜王・王将)に勝ってタイトル防衛を決めて以来、5番勝負では負けなしの15連勝と、とにかく王座戦では挑戦者につけいる隙を与えないという感じである。

タイトル初挑戦の山崎七段にとって3連敗は避けたいところ。先手の山崎七段は相掛かりから横歩取りに展開、羽生王座は飛車を8五に引く「中座飛車」に。序盤ですぐ飛車交換となり、お互いに取った飛車を打ち「竜」を作る展開になり、中盤を飛び越し、いきなり終盤戦に。先に玉の守りを崩された山崎七段は、先に先にと攻めなければならないが、要所できっちり守った羽生王座の前に攻めあぐね、その間に自玉をじわじわと攻められ、いつの間にか羽生優勢に。ほどなく、山崎七段の投了となり、羽生王座のタイトル防衛、18連覇が決まり、自ら2日早い誕生日祝いとなった。羽生王座の連覇はいつまで続くのだろうか。

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2009年9月22日 (火)

高橋道雄九段の講演会で考えたこと(2)-キャリアアップの秘訣

2回前の記事で、「高橋道雄九段の講演会で考えたこと(1)-40代後半での復活の理由」(2009年9月14日)との記事を書いた。私なりに、同い年の高橋九段の復活の理由を考えてみたものだ。
1983年には当時としては、最低段の五段で王位のタイトルを獲得し、それを含め20代で5回のタイトルを獲得し、A級昇級も果たし30代半ばまでA級棋士の地位を7年連続で維持した強豪である。
谷川九段を除き、同世代のスター棋士たちが下位のクラスへ降級していく中で、B級1組で踏みとどまり、今期(第68期)は、最初のA級降級以降、3回目のA級復帰を果たした。
私は、高橋九段が2005年以降、多くの棋書を集中して書き、自分の過去の棋譜を含め、自分の将棋を見直して、整理したことが復活の原動力になったのではないかと考えのだが、ご本人はどう考えているのか、いつか聞ける機会があれば、聞いてみたいものである。

高橋九段は講演の中で、「キャリアアップの秘訣」という話をしていた。これが、書きたかった二つめのテーマである。

「チャンスが来た時、そのチャンスがつかめるかどうか。チャンスをつかみ損ねると二度とチャンスが来ない人もいる。一方で、チャンスをつかめる人には、またチャンスが巡ってくる。」とのことだった。
では、どうしたらチャンスをつかめるのか?彼が、中原誠16世名人など先輩棋士たちから学んだことは、「(これに勝てば昇級、タイトル挑戦といった)大事な対局、将棋ほど積極的になる」ということだっとのこと。高橋九段自身もそれを心がけ、ほとんどのここ一番という勝負はものにしてきたという。
大事は対局であれば、慎重に、安全に指したくなるのは人情だろうが、それでは、将棋用語でいう「手が伸びなく」なってしまうということらしい。むしろ、「積極策に自ら踏み込んで行き、自分で勝ちをつかもうとすることで、自然と手も伸びることになる」というようなことを言われていたように思う。もちろん、そのためには、前回も書いた「日々の努力の積み重ねが大切で、積み重ねの裏付けがなければ単なる暴発で終ってしまう」とも。

40代になって峠を過ぎたと思われた森下卓九段が、タイトルホルダー、賞金ランキング上位者計12名で争う「JT将棋日本シリーズ」、郷田真隆九段(3連覇)、谷川浩司九段(2連覇2回)に次ぐ、2連覇を成し遂げた。
第28回の初回の優勝時の森下九段のコメントは「今回のJT杯は4局とも『当たって砕けろ』の気持ちでした」である。守るのではなく積極的に攻めていったからこそ、勝てたとということであろう。

しかし、積極策を取ったからと言って、いつも勝てるとは限らないだろう。積極策に出て、それでも勝てなかった時には、どう考えるのかについては、高橋九段に質問したいと思ったが、他の質問者の質問が長く、時間が遅くなって聞けなかった。
おそらく、慎重・安全策をとって、自分の力を発揮できず負けた場合は自分自身も後悔することになるが、積極的に指して、自分としても実力を発揮したと思える内容なら、悔しいだろうが、それは相手の方が強かったと納得できるということなのだろう。常に、安全策に甘んじず、自分の可能性を信じ積極的な将棋を指していれば、たとえ負けても、得るものがあり、次のチャンスに繋がっていくということなのだろう。

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2009年9月18日 (金)

第68期A級順位戦3回戦、森内俊之九段vs井上慶太八段戦、三浦弘行八段vs木村一基八段戦はともに井上八段、木村八段が勝ち、4人全員が2勝1敗に

昨日(2009年9月17日)は、将棋の第68期A級順位戦3回戦の森内俊之九段(2勝)vs井上慶太八段(1勝1敗)戦が井上八段の本拠である大阪の関西将棋会館で、三浦弘行八段(2勝)vs木村一基八段(1勝1敗)戦が東京千駄ヶ谷の将棋会館で行われた。
どちらも2連勝と1勝1敗の対決で、2連勝の森内九段、三浦八段は白星を伸ばし名人挑戦権レースをトップで走り続けたいし、1勝1敗の井上八段、木村八段はなんとか勝って2勝1敗とし、挑戦者争いに踏みとどまりたいところ。特に、11年ぶりにA級復帰の井上八段は今期の順位が10位であり、藤井九段、佐藤九段が3連敗と不調スタートとはいえ、順位は上なので、ここで負けて1勝2敗で黒星先行となると、順位差を考えれば、安心はしていられない。

昨日、仕事から帰って、この東西でのA級順位戦のネット中継(名人戦棋譜速報)を見ていたのだが、ふっとソファに横になったら、すっかり寝入ってしまい、気がついたら窓の外は薄明るくなっていた。
「将棋の結果は?」とパソコンを開くと、どちらも1勝1敗の井上八段と木村八段が勝っていた。

大阪の森内vs井上戦は、後手森内九段がゴキゲン中飛車を採用、井上八段は居飛車。9筋に玉を穴熊に囲い、長期戦となった。途中、お互い大駒を捌きあい、駒割は金と桂香の2枚換えとなった。優勢と言われていた森内九段に緩手もあったようで、井上八段が、桂馬・香車を持った井上八段が、桂馬・香車・と金などの小駒を使って、先日紹介した高橋道雄九段の『寄せの極意』に登場したような、穴熊崩しの手筋を連発。攻め合いとなったものの、最後は穴熊の中の森内玉を横から2枚飛車で狙った井上八段の強烈な攻めに森内九段の投了となった。

東京の三浦vs木村戦は、双方居飛車から木村八段の横歩取りに。後手の三浦八段は8四飛車を採用。木村八段は飛車を5筋(▲5六飛)に回し中央突破を目指す。三浦八段は、木村陣に角を成り込み馬を作るが、自玉の守りが壁銀で弱点を抱える。結局、木村八段が5筋を制圧し、三浦陣を5筋から突破。三浦玉を中央から1筋に追つめ投了となった。▲5六に構えた木村八段の飛車は、その後動くことはなかったが5筋で攻めににらみを効かすとともに、六段目で横にもにらみを効かせ、最後はその飛車の横効きを利用した▲6六歩で、木村陣の△9九から自陣の守りにも効いていた三浦八段の馬の効きを遮断、三浦八段を投了に追い込んだ。最終的には、大駒の働きの差が勝敗を分けたような将棋だった。

これで、A級順位戦で3回戦を終えた8人は、2勝1敗が6人、3敗が2人という星勘定になった。残るは谷川浩司九段(2勝)vs丸山忠久九段(2敗)の対戦。来週9月25日の2人の対戦で、3回戦が終了する。谷川九段が3連勝で単独トップとなるのか、はたまた丸山九段が勝って2勝1敗7人の大混戦となるのか。

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2009年9月14日 (月)

高橋道雄九段の講演会で考えたこと(1)-40代後半での復活の理由

一昨日(2009年9月12日)午後から、豊島区の千早文化創造館で開かれた将棋のプロ棋士高橋道雄九段の『将棋の世界』と題する講演会を聞きに行った。

講演は、14時からのスタートで、前半1時間が高橋九段の講演、後半1時間が今期(第68期)のA級順位戦初戦で高橋九段が佐藤康光九段に勝った将棋の大盤解説という構成。大盤解説の聞き手役として、井道千尋女流初段の姿も見えた。

高橋九段の講演で印象に残ったことを二つ書いてみたい。まず一つめは、50歳を目前にしての高橋九段の復活についてである。

高橋九段は、現在、将棋界のトップ棋士の証明ともいえるA級(10名)と竜王戦ランキング戦1組(16名)の両方に名を連ねている。順位戦は、前回A級からB級1組に陥落してから4年間B級1組で戦い、前期(第67期)B級1組で8勝4敗で1位となり、深浦王位、久保棋王、渡辺竜王といった年下のタイトルホルダーを抑えて、3回目のA級復帰を決めた。
竜王戦でも17期(2004年)に1組から降級し、18期以降ランキング戦2組で戦ってきたが、前期の第21期(2008年)に2組3位となって、今期第22期は1組に復帰。復帰するや、1組3位となり挑戦者を決める決勝トーナメントにまで駒を進めた。
考えてみれば、名人戦・竜王戦で、A級(含む名人)と1組(含む竜王)の両方に名を連ねるのは、高橋九段のほかには、羽生善治名人、佐藤康光九段、丸山忠久九段、郷田真隆九段、木村一基八段の5人だけである。皆30代であり、その中で来年4月に50歳を迎える高橋九段がその地位に復活したということは、特筆すべきことだろう。

高橋九段は、自らを大山康晴、中原誠、米長邦雄といったかつてのトップ棋士たちが将棋界にまだまだ一線級として活躍した時代に、谷川浩司九段を後を追い、55年組と言われた南芳一、塚田泰明、島朗、中村修など一度はタイトルを獲得した同世代の棋士たちと、それまでの将棋界に新しい風を吹き込み、風穴を開けたと語った。しかし、共に戦った同世代の棋士も、谷川九段以外は、B級2組以下のクラスに落ちてしまっている。

高橋九段によれば、棋士も40代になると、下を見るようになるのだという。それは、タイトル獲得や棋戦優勝という高みを目指して努力を続けるより、まだ自分の下にはこれだけいるということで安心してしまい、いつか努力を続けることが疎かになってしまうということだろう。
最近では、自分よりも後輩の棋士たちの中にも、下に落ちていく棋士が増えて来ているとも語った。

それに対し、高橋九段は、人生はこれからも続いていくものであり、過去を振り返るのではなく、常に、「現在(いま)をどうするか、これからどうするか」を考えているという。一朝一夕で何かができるわけではないので、日々の積み重ねを大切にし、向上心を持って過ごすこと、と語っていた。

具体的には、現在は、対局に加え、師範として女流棋士の指導、地元の小学校で小学生に将棋を教えること、さらに将棋の本を執筆で、多忙だという。
高橋九段の書いた将棋の本をネットで検索すると、タイトルを争っていた1980年代後半に数冊、98年に詰将棋の本が出版されているが、その後は2005年以降に集中している。
例えば、『寄せの極意』という本は2008年2月に出版されているが、自らの実戦譜での寄せ手順をいろいろなケースに分けて解説している。読むと、この局面でなぜそのように指したのか、プロ棋士の考え方がアマチュアにも解るように丁寧に解説されている。

寄せの極意―対居飛車、対振り飛車を徹底解説 終盤の華麗な技で勝利をつかめ! (スーパー将棋講座)

講演での高橋九段の話を思い出し、『寄せの極意』を読んで思ったのは、将棋の本を書くということは、これまでの自分の将棋を見直すことであり、高橋九段は、その作業の中で、自らの強みを再発見したのではないかということである。
高橋九段は、最近では「先手なら矢倉、後手なら8五飛戦法しか指さない」と発言している。自らの得意戦法に自信を持っているからこそいえる言葉だろう。

将棋連盟のホームページの年度別成績から高橋九段の成績の推移を見ても、復活の軌跡がわかる。

2000年度 43戦28勝15敗 勝率0.6511(B級1組-7勝5敗)
2001年度 42戦24勝18敗 勝率0.5714(B級1組-7勝5敗)
2002年度 34戦12勝22敗 勝率0.3529(B級1組-2勝9敗)
2003年度 30戦17勝13敗 勝率0.5666(B級1組-9勝3敗)
2004年度 25戦08勝17敗 勝率0.3200(A級-1勝8敗)
2005年度 30戦10勝20敗 勝率0.3333(B級1組-4勝8敗)
2006年度 30戦16勝14敗 勝率0.5333(B級1組-8勝4敗)
2007年度 34戦19勝15敗 勝率0.5588(B級1組-7勝5敗)
2008年度 39戦24勝15敗 勝率0.6154(B級1組-8勝4敗)
2009年度 9戦3勝6敗 勝率0.3333(A級-2勝1敗)

1960年生まれの高橋九段は2000年が40歳。ちょうどここに載っているのは、40代での成績である。前回のA級復帰の2004年度、A級で1勝8敗に終っただけでなく、他の棋戦も含め8勝17敗と絶不調。翌2005年度、陥落したB級1組でもあわや降級かという成績で、勝率3割台が2年続いた。
並の棋士なら、ここで自分の限界を感じて諦めてしまい、下のクラスに転落してもおかしくなかったと思うが、高橋九段はここから復活する。2006年度には再び勝率5割を超え、昨年度2008年度は2000年度以来8年ぶりに勝率6割を超え、順位戦、竜王戦ともトップクラスに復帰したのはすでに説明した通りだ。ちょうど、将棋の本の出版が増えだした頃から成績が上向き始めたのは偶然ではないだろう。

私がこのブログで常々テーマとして意識してきた「中年クライシス(中年期の危機)」に、高橋九段も40代前半から半ばにかけて遭遇したのだろう。将棋の本を書くことで、自らの力を再確認し、得意技に磨きをかけるという形で、その危機を乗り越え、復活を遂げたのではないだろうか。

講演で高橋九段も語っていたが、これまで高橋九段の世代を追い落とす立場にいた羽生名人を中心とした最強世代の棋士の中にも、一時の勢いがなくなった棋士も出始めている。1969年から71年生まれの羽生世代はもうすぐ40歳。
今期のA級は、これから中年クライシスを迎える最強世代と、それを乗り越えた高橋九段の対決でもある。高橋九段は、今年のA級での目標との聴衆からの質問に、「最終戦に組まれている同世代のライバル谷川九段と最高の状態で対戦すること」と語っていた。それは、最終戦で名人挑戦権を賭けて戦いたいということだろう。さて、2010年3月に迎えるA級順位戦の最終戦をどのような状態で迎えることになるのか、これからは高橋道雄九段の戦いぶりにも注目していきたい。

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2009年9月12日 (土)

第22期竜王戦挑戦者決定戦第3局は森内俊之九段が深浦康市王位を破り挑戦権獲得、竜王位奪還に向け始動

昨日(2009年9月11日)は、将棋の第22期竜王戦七番勝負での渡辺明竜王への挑戦者を決める挑戦者決定三番勝負の第3局。第1局深浦、第2局森内と勝って1勝1敗で迎えたこの第3局の勝者が挑戦者となる。

昨年(2008年)6月の名人失冠以来、タイトル戦からも遠のいていた森内俊之九段。第18世名人の有資格者としては、早く無冠を返上し、永世名人にふさわしいタイトルがほしいところ。現在、将棋連盟で最高位にランクされる竜王位は申し分のないタイトルだろう。まして現在のタイトルホルダーは、5年前の2004年第17期竜王戦で自分から竜王位を奪った渡辺明竜王である。この間、渡辺竜王は次々と登場する挑戦者を退け5連覇を果たし、初の永世竜王の資格を手にした。森内九段として、竜王戦七番勝負の舞台で再び相まみえ、自らの力でタイトルを取り返し、リベンジを果たすことは望むところであろう。

一方の深浦康市王位にとっても、この一番に勝って竜王位挑戦を決め、返す刀で月末の王位戦七番勝負の最終第7局でも勝って、王位3連覇、王位のタイトルホルダーとして竜王戦に乗り込み、で対戦成績では分のいい渡辺竜王から竜王タイトルも奪い、自身初の二冠を実現したい。また過去21年の竜王戦の歴史の中でランキング戦1組優勝者は挑戦者になれないというジンクスに、今期の1組優勝者である自分が挑戦者になることで終止符を打つこともできる。

後手となった深浦王位から角交換を行う角換わりの展開となりの38手目の時点で先後同型となった。そこから先手森内九段が攻めに出る。48手目の後手の深浦王位の△6三金との新手が登場したが、森内九段の攻めは続き、深浦陣をどんどん崩していく。
深浦玉は自陣を脱し、森内陣に入玉するまで逃げるが、最後は森内九段の上下からの挟撃に追い詰められ、投了となった。

第22期竜王戦挑戦者決定三番勝負第3局 深浦王位対森内九段の棋譜

これで渡辺明竜王への挑戦者は森内俊之九段に決まった。森内九段が竜王位を奪われた5年前、挑戦者となった渡辺明現竜王は、将来を嘱望される若手のホープではあったが、前年の第51期王座戦で羽生王座を苦しめたとはいえ、順位戦ではC級1組の在籍する五段の棋士に過ぎなかった。
当時の森内竜王が若い挑戦者を前に油断があったとは思わないが、奨励会時代から戦いを繰り返してきた同世代の棋士たちと比べれば、渡辺五段に関する情報が不足していた点は否めないだろう。
5年間、相手は竜王位防衛を続け、段位は九段まで昇段、順位戦もA級目前のB級1組まで駆け上がってきた。
森内九段は緻密に相手を分析し、作戦を立て戦いに臨むことと言われており、事前に対戦相手とスケジュールが決まる順位戦では高い勝率を残している。挑戦が決まった直後のインタビューには「終わったばかりで実感がありませんが…(七番勝負まで)時間があるので、しっかりと調整したいと思います」とコメントしている。昨年の羽生名人を挑戦者に迎えた七番勝負とはまた趣の違った竜王戦七番勝負が見られることになるだろう。

渡辺竜王vs森内九段の対戦成績は過去9勝9敗。渡辺竜王がどのように受けて立つかと合わせ、興味深い第22期竜王戦七番勝負は1ヵ月後の2009年10月14・15日の比叡山延暦寺での第1局で幕を開ける。

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