« 季節の節目、「夏至」 | トップページ | ワールドカップ予選、日本完敗 »

2006年6月22日 (木)

ゲド戦記第1巻『影との戦い』を読み終わる

ゲド戦記第1巻『影との戦い』を読み終わった。この本の主題は、かなり哲学的で、児童文学というには、少々レベルが高いと思う。

ゲド戦記 1 影との戦い (ソフトカバー版)
ゲド戦記 1 影との戦い (ソフトカバー版)

魔術師の素養を持つ、少年ケドは魔法学院で、自らの尊大さやねたみから、自分に力を過信し、死者の霊を呼び出し、それとともに死者の国から、彼を狙う影を、現世に呼び込んでしまう。その影は、彼を追いかけ、彼を虜にしようとする。ケドは、逃げ続けるが、影は執拗に追いかけてくる。彼は、少年時代に自分を育ててくれた故郷の恩師のもとに帰り、そこで、その影に向かい合い、今度は自ら影を追いかけることを決心する。

おとといの記事で取り上げた、「訳者あとがき」に書いてある通り、自我の影の部分を自らに取り込み、統合する過程を描いた作品といえるだろう。まさに、青年期の課題である本当の自分を知るということを、象徴的に描いた作品だと思う。

以前、同時代ライブラリー版の『影との戦い』を読んだ時も、おぼろげに感じ、今回も読んでいて感じたことだが、この作品は、読んでいて、どこか無機質で、透明で、乾いた印象を受ける。どうしてだろうと考えて見ると、他の児童文学とは違い、主人公であるゲドを筆頭に、登場人物の発言や会話が少ないような気がした。主人公の行動を、著者が淡々と記録しているのだ。

明日に悩む大学生や、中年世代にお勧めだと思う。

*関係する記事
6月20日:ゲド戦記6冊セットと第1巻『影との戦い』
6月22日:『影との戦い』(本編)

6月26日:ゲド戦記第2巻『こわれた腕環』
6月30日:ゲド戦記第3巻『さいはての島へ』

7月5日:ゲド戦記第4巻『帰還』
7月9日:ゲド戦記第5巻『アースシーの風』
7月16日:ゲド戦記『ゲド戦記外伝』
8月5日:『ゲド戦記』宮崎吾朗監督のメッセージ
8月13日:映画『ゲド戦記』を見て

| |

« 季節の節目、「夏至」 | トップページ | ワールドカップ予選、日本完敗 »

心と体」カテゴリの記事

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

映画・テレビ」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

人生」カテゴリの記事

ゲド戦記」カテゴリの記事

コメント

はじめまして。
私のブログで、映画『ゲド戦記』に関する記事を書き、その中でこちらの記事をご紹介させていただきました。
どうぞよろしくお願いします。
TBもしてみたのですが、反映されないようでした。

投稿: umikarahajimaru | 2006年8月31日 (木) 15時32分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ゲド戦記第1巻『影との戦い』を読み終わる:

» ゲド戦記・「影との戦い」「こわれた腕環」 [徒然ノート]
「影との戦い」 少年ゲドは,自分にふしぎな力がそなわっているのを感じ,真の魔法 [続きを読む]

受信: 2006年6月28日 (水) 16時54分

» ゲド戦記� 影との戦い [親子で選ぶ児童書]
保護者の方へ 読んだ人ならわかるかと思いますが、この本は、かなり設定が複雑で、難しい話です。大人向けといっても良いでしょう。けれど、この本は『人生論』について多くのことを学ぶことが出来ます。有名なファンタジーですし、是非、子供に読ませておきたい1冊です。... [続きを読む]

受信: 2006年7月21日 (金) 12時56分

» ゲド戦記(1)影との戦い [しずくの部屋]
おもしろいとか、そういう本ではないかも。ぐんぐん引き込まれる感じではないです。ち [続きを読む]

受信: 2006年8月12日 (土) 12時23分

» もう少し先へ 映画『ゲド戦記』 [海から始まる!?]
 あまりの雑音のため、うっかりすると見逃しかねないところでしたが、ちゃんと自分の目で確かめてよかった。宮崎吾朗版『ゲド戦記』は、傑作ではないにせよ、読みどころがあって、普通に楽しめる作品でした。作品に対する賛否はともかく、日本国内で、2006年夏の最大の話題作が、『ゲド戦記』であることは、まず間違いのないところでもあり、ここでは、映画『ゲド戦記』とは何だったのかと考えるためにも、様々な角度からこの作品にアプローチしてみたいと思います。... [続きを読む]

受信: 2006年8月31日 (木) 15時26分

« 季節の節目、「夏至」 | トップページ | ワールドカップ予選、日本完敗 »