『影との戦い』
ゲド戦記第1巻『影との戦い』を読み終わった。この本の主題は、かなり哲学的で、児童文学というには、少々レベルが高いと思う。
魔術師の素養を持つ、少年ケドは魔法学院で、自らの尊大さやねたみから、自分に力を過信し、死者の霊を呼び出し、それとともに死者の国から、彼を狙う影を、現世に呼び込んでしまう。その影は、彼を追いかけ、彼を虜にしようとする。ケドは、逃げ続けるが、影は執拗に追いかけてくる。彼は、少年時代に自分を育ててくれた故郷の恩師のもとに帰り、そこで、その影に向かい合い、今度は自ら影を追いかけることを決心する。
おとといの記事で取り上げた、「訳者あとがき」に書いてある通り、自我の影の部分を自らに取り込み、統合する過程を描いた作品といえるだろう。まさに、青年期の課題である本当の自分を知るということを、象徴的に描いた作品だと思う。
以前、同時代ライブラリー版の『影との戦い』を読んだ時も、おぼろげに感じ、今回も読んでいて感じたことだが、この作品は、読んでいて、どこか無機質で、透明で、乾いた印象を受ける。どうしてだろうと考えて見ると、他の児童文学とは違い、主人公であるゲドを筆頭に、登場人物の発言や会話が少ないような気がした。主人公の行動を、著者が淡々と記録しているのだ。
明日に悩む大学生や、中年世代にお勧めだと思う。
*関係する記事
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8月5日:『ゲド戦記』宮崎吾朗監督のメッセージ
8月13日:映画『ゲド戦記』を見て
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コメント
はじめまして。
私のブログで、映画『ゲド戦記』に関する記事を書き、その中でこちらの記事をご紹介させていただきました。
どうぞよろしくお願いします。
TBもしてみたのですが、反映されないようでした。
投稿: umikarahajimaru | 2006年8月31日 (木) 15時32分