ハリウッド・リメイク版「shall we dance?」と日本の「shall we ダンス?」の違い
先日、書きかけながら消えてしまった、ハリウッド・リメイク版の「shall we dance?」と日本版の本家「shall we ダンス?」との違いについて、改めて考えてみる。 (MovieWalkerのリメイク版とオリジナルの比較はこちら)
大筋で日本版のストーリーを踏襲しているリメイク版の中で、違いが際だつのが、主人公の妻のあり方だ。
日本版の主人公杉山(役所広司)の妻昌子(原日出子)は専業主婦だが、リメイク版の主人公ジョン・クラーク(リチャード・ギア)の妻ビヴァリー(スーザン・サランドン)は部下も持つキャリア・ウーマンとして描かれている。その違いは、そのまま夫との関係の違いにもなる。 昌子とビヴァリーの違いを示す映画の場面はいくつかあるが、印象的だったのは、以下の5つである。
(1)映画の始まりのところで、描かれる2人の姿は、対照的だ。日本版の妻昌子を見て、「三食・昼寝付」という言葉を思い出した(いまやそんな言葉は誰も使わないが…)。夫抜きでは、彼女は生活できず、経済的に夫に依存している。住宅ローン返済のため、パートを始めたことが語られるが、働き始めたことが、昌子にどういう影響を与えたのかは、映画では描かれてはいない。 一方の、ビヴァリーはキャリア・ウーマンと妻・母をこなす活動的な女性。相応の収入もあると思われ、もし離婚するようなことになっても十分生活していく経済力はある。経済的に夫から独立している。
(2)途中、夫の素行調査を私立探偵に依頼するところは、同じだが、ビヴァリーは探偵に対し、「人はどうして結婚すると思う?それは自分の人生の証人がほしいからよ」と語る。夫婦がお互いに相手の人生の証人になっているという点で、対等であることをあらわしていると言えよう。日本版では、このような人生論めいたことは、妻は一切語らない。ただ、夫が何をしているのか心配しているだけである。
(3)夫が家族に隠れて出場したダンス競技会に、探偵に教えられやってきた母と娘。娘の応援に主人公が動転し、他のペアと接触し、パートナーのスカートを破いてしまう。その後、母と娘は会場から出て行くが、リメイク版では、主人公は妻を駐車場まで追いかけ、必死に弁解する。「いまでも十分幸せなのに、さらに何かを求めたことが恥ずかしい」と。 日本版では、妻を追いかけることはせず、その日の夜の自宅のリビングでの夫婦の会話に場面になる。日本版では、主人公は言葉少なく、「なぜダンスなの?」という妻の質問には直接答えず、「所詮、自分には似合わないから、もうダンスやめる」とだけ語る。
(4)主人公のあこがれた女性(日本版の舞、リメイク版のポリーナ)がイギリスへ出発する前の送別パーティに、日本版では妻は参加しないが、リメイク版では、主人公が妻ビヴァリーを連れて行き、ポリーナとビヴァリーは対面する。(リメイク版では、妻がパーティに来ることになるところが見せ場の一つだが、さすがにまだ映画を見ていない人に悪いので、ここには書かない)
(5)映画の本編が終わったあとの、エンディングで、リメイク版では、登場人物のその後を示すシーンがいくつか登場する。その中で、主人公と妻ビヴァリーがキッチンで楽しそうに踊るカットがある。日本版では、将来の夫婦の姿は全くわからない。
これを、日米の文化の違いとのみ考えるのか、日本の夫婦の将来像としてリメイク版を見るかは、意見の分かれるところだと思う。
この先を書きあぐねていたら、周防正行監督自身が書いた『小説版Shall we ダンス?』(幻冬舎文庫)のあとがきの中に、その答えらしきものを見つけた。今回も長くなってしまったので、それについては、次回、改めて書くことにしたい。
「Shall we ダンス?」関連の記事はこちら
5月6日:「Shall we ダンス?」を見る
5月13日:周防監督が書いた「『Shall we ダンス?』アメリカを行く」
6月5日:ハリウッド・リメイク版「shall we dance?」と日本の「shall we ダンス?」の違い(本編)
6月6日:リメイク版「Shall we dance?」が描こうとしたもの
| 固定リンク | 0
「恋愛」カテゴリの記事
- 言葉にして伝えることの大切さ(『男の復権』を読んで・その2)(2007.01.03)
- 人生の四季 、『ライフサイクルの心理学』を読み終わる(2006.07.30)
- ゲド戦記第4巻『帰還』(2006.07.05)
- ゲド戦記第2巻『こわれた腕環』(2006.06.26)
- リメイク版「Shall we dance?」が描こうとしたもの(2006.06.06)
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- マンガ『弱虫ペダル』大ヒットの理由を考える。主人公小野田坂道は指示待ち世代の典型?(2015.09.06)
- 『赤毛のアン』を読み始める(2014.09.21)
- 漫画『坂道のアポロン』ボーナス・トラックとのファンブック、ログブックを読み、アニメ『坂道のアポロン』のブルーレイディスクで見た制作関係者の本気(2012.11.23)
- 深夜アニメ『坂道のアポロン』が素晴らしい(2012.06.10)
「家族」カテゴリの記事
- 赤﨑正和監督の映画「ちづる」の劇場公開を見て、母久美さんの本『ちづる』を読んで考えたこと(2)~劇場公開までのもう一つのドラマ(2011.11.07)
- 赤﨑正和監督の映画「ちづる」の劇場公開を見て、母久美さんの本『ちづる』を読んで考えたこと(2011.10.31)
- 記事の総数もようやく1200本へ、過去1年半を振り返りこれから迎える50代を考える(2010.09.02)
- 公私ともに一段落、そろそろブログも復活しなくては…。(2010.03.27)
- バレーボールに賭けた長男の中3の夏が終わる(2009.07.20)
「人生」カテゴリの記事
- 令和元年の年の瀬にブログ更新を再開(2019.12.21)
- 49歳という年齢とブログのテーマ(2009.11.11)
- 「中年クライシス」から「中年の覚悟」へ(2009.06.01)
- 大人と子供を区別するもの、人の事を考えられるか(2007.03.05)
- 訃報:『14歳からの哲学』の池田晶子さん死去(2007.03.03)
この記事へのコメントは終了しました。

コメント
TBどうもありがとうございました。
2ところからトラバ返しトライしたのですが、何故か出来ませんでした。すいませんでした。
投稿: latifa | 2006年7月27日 (木) 09時13分