『ゲド戦記』宮崎吾朗監督のメッセージ
先月29日から、いよいよスタジオ・ジブリのアニメ『ゲド戦記』の上映がはじまった。ブログで試写会を見た人のコメントを見ると、必ずしも絶賛というほどではない、むしろ酷評といえるようなものも多い。一方、今日のTBS「王様のブランチ」の先週の映画ランキングでは、初登場で1位だった。
自分自身が、まだ見ていないので、何とも映画自体の出来は評価できないが、宮崎吾朗監督は、文学作品としての『ゲド戦記』を読み込んで、彼なりの問題意識をもって映画化に取り組んだことがうかがえる。
手元にある公開前の映画『ゲド戦記』のパンフレットに宮崎吾朗監督の「演出ノート 人間の頭が、変になっている」という一文がある。
それによれば、現在39歳の彼は、ゲド戦記は20年以上前の高校生の時に最初に読んだという。その当時は、ハイタカ(ゲド)が自分の影との合一を果たす1巻とテナーが暗い墓所から解放される2巻に心引かれたそうだが、今回、改めて読み直すと、映画化された3巻、そして4巻、外伝に心ひかれた書いている。その理由として、彼自身の加齢と、我々を取り巻く環境の変化を上げている。そして、次のように語る。
今、私たちの暮らしている世界は、まるで第3巻に登場するポート・タウンやローバネリーのようです。みな、必死にせわしなく動き回っていますが、それは目的があってのことではないように見えます。目に見えるもの、見えないもの、それら全てを失うことを、ただ恐れているようです。人々の頭がおかしくなってしまった感じです。
一つひとつを例にあげることはしませんが、その原因は国内外の様々な社会状況の激変にあるのはあきらかです。けれど、どうすれば社会が良くなるのか、目指すべき方向は誰も提示できずにいます。そして、大人たちは誇りや寛容さ、いたわりの心を失い、若者たちは未来に希望を見いだせず、無力感におそわれています。
結果、生きることの現実感は失われ、自分や他人が死ぬことの現実感も失われています。自分の存在を曖昧にしか感じられないならば、他者の存在も希薄にしか感じられないのは当然で、減らない自殺や理由なき殺人の増加は、その象徴に思えます。(中略)世界の均衡が崩れつつある原因が人間の内にあること、その根源を辿れば生と死の問題に行き着くこと、そこに、私たちにいま最も必要なテーマがあると思うのです。
(中略)私は、「いま、まっとうに生きるとはどういうことか?」という自分自身の問いを「ゲド戦記」に投げかけ、ハイタカをはじめとする多くの登場人物たちの声に耳を傾け、再び問い返すということを続けてきました。それが、この映画の主題になっていることは間違いありません。(以下略)
(宮崎吾朗「演出ノート 人間の頭が変になっている」より)
私もゲド戦記第3巻『さいはての島へ』を読んだとき、これは、まさしく現代日本社会を描いた作品ではないのか?と思った。
すでに、映画を見た人の感想はどうだろうか。私も、1週間の夏期休暇の間には、映画館に足を運び、ぜひ見たいと思っている。
*関係する記事
6月20日:ゲド戦記6冊セットと第1巻『影との戦い』
6月22日:『影との戦い』
6月26日:ゲド戦記第2巻『こわれた腕環』
6月30日:ゲド戦記第3巻『さいはての島へ』
7月5日:ゲド戦記第4巻『帰還』
7月9日:ゲド戦記第5巻『アースシーの風』
7月16日:ゲド戦記『ゲド戦記外伝』
8月5日:『ゲド戦記』宮崎吾朗監督のメッセージ(本編)
8月13日:映画『ゲド戦記』を見て
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