映画『ゲド戦記』を見て
映画『ゲド戦記』を見た。
今日、午後、中3の次女と一緒に2駅となりのシネマコンプレックスに見に行く。館内は、お盆休みの日曜日ということもあって、かなりの人。しかし、映画館側も、大きな映写室で上映しており、席にも十分余裕があり、予定通りの時間に見ることができた。
いろいろなブログで、この映画についての様々な感想が書かれており、中には酷評といえるものもあるのだが、非常に「良くできた映画」というのが私の感想である。
確かに、この映画は原作者ル・グインの『ゲド戦記』と同じではない。
あるブログに作者ル・グインが次のように語ったと書かれている。
「It is not my book. It is your film. It is a good film.」
(ブログ「すべて世はこともなし」2006/8/9「ゲド 戦いのはじまり」より)
原作者ル・グイン女史が、好意的ニュアンスで語ったのか、否定的なニュアンスで語ったのかは、知りようがないが、「これは私の書いた話とは違う」という趣旨は間違いないだろう。
原作6冊を読み通した上で映画を見れば、それはよくわかる。話のベースは、第3巻の『さいはての島へ』になっているが、この映画の主人公ともいえるアレンが、自分の影におびえ逃げる姿は、第1巻の『影との戦い』で描かれる若い頃のハイタカ(ゲド)の姿と重なるし、映画の重要な登場人物であるテナーとテルーと農場は、第4巻の『帰還』で主な舞台となるものだ。また、ハイタカとテナーの微妙な関係も第2巻の『こわれた腕輪』の経緯が背景になければ、たしかにわかりにくい。また、作品の舞台となるアースシーの世界のハブナー島を中心にした東西南北の広がりも、映画では捨象されている。
それでも、私はこの映画は素晴らしいと思う。この映画は、ル・グインの『ゲド戦記』を、宮崎吾朗という監督が、自分なりに理解し、その自分なりの理解を、絵にし、言葉にし、音楽にしたものだと思う。
彼の主張は、ひとことで言えば「生きるとはどういうことか?」ということであり、それを回りくどい技巧は凝らさずに、ストレートにぶつけてきている。それは、宮崎吾朗監督が、封切り前のインタビューで語っていること、そのままである。それは登場人物のひと言、ひと言として現れている。「語りの映画」と言えるかもしれない。
中3の次女は、「よくわからないところもあったけれど、心うつものがあった」と最後には、うっすら涙を浮かべていた。登場人物のひと言が、そしてテルーの歌う歌のあるフレーズが心のどこかにひっかかっていて、何となく気になる。そして、もう一度見て、その気になるところを確かめたい、そんな気にさせる映画だと思う。
原作を読まないで見た方には、原作6冊を読むことを勧めたい。今、原作を読んでいて、まだ映画を見ていない人は、原作を全て読み通してから、映画を見た方がいいだろう。原作を途中まで読みかけで、映画を見るのだけはやめた方がいい。どちらも、中途半端になってしまうだろう。
*関係する記事
6月20日:ゲド戦記6冊セットと第1巻『影との戦い』
6月22日:『影との戦い』
6月26日:ゲド戦記第2巻『こわれた腕環』
6月30日:ゲド戦記第3巻『さいはての島へ』
7月5日:ゲド戦記第4巻『帰還』
7月9日:ゲド戦記第5巻『アースシーの風』
7月16日:ゲド戦記『ゲド戦記外伝』
8月5日:『ゲド戦記』宮崎吾朗監督のメッセージ
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コメント
はじめまして、renkonnです。
トラックバックをお送りしたところ、早速の返信をありがとうございました。
随分前に書いたエントリーなのですが、今日偶然、貴殿の日記を知り、トラックバックさせて頂きました。
投稿: renkonn | 2006年9月 6日 (水) 23時32分
renkonnさん、コメントありがとうございました。映画「ゲド戦記」については、原作者ル・グインさんのコメントが出されたこともあり、改めて自分なりに整理しようと思っていますが、まだ手が着いていません。renkonnさんのブログも「ゲド戦記」について多く書かれており、一度時間を作ってじっくりと読ませていただきたいと思っています。
投稿: 拓庵 | 2006年9月 6日 (水) 23時44分