気がかりな河合隼雄文化庁長官の容態・その2
今朝の日本経済新聞に脳梗塞で倒れ入院中の河合隼雄文化庁長官の主治医が4日(昨日)、河合長官の容態につき発表したとの記事が出ていた。
「小康状態を保ち、生命の危機的状況はほぼ脱した」とのコメントの一方、依然として「意識は回復しておらず重篤な状態」とある。
昨日は、小坂憲次文部科学大臣が高松塚古墳の視察し、河合長官の家族に面会したこともあり、容態の発表があっったのかも知れない。
まだ、意識不明ということだ。この世とあの世との境で、さまよっているということだろうか。
河合長官の最近の本に『大人の友情』(朝日新聞社、2005年)がある。
その中に、白洲正子さんから聞いた話がのっている。
白洲さんが晩年病気で瀕死の状態になられた。親族一同が危篤と思って見守る中で、白洲さんは「大丈夫、大丈夫」と言われたらしい。一同、変な気がしたが、幸いにも奇跡的に治って元気になった。
その後、お会いしたら、「私、死にかけたのよ」と話をして下さった。ふと気がつくと自分は一人で山道を歩いていた。ところが、桜の花が満開で、それが散りはじめ、その花吹雪のなかを、これなら一人でゆける、というので「大丈夫、大丈夫」と言ったらしい。そのとき、このようにして一人でちゃんとあちらにゆけるのだから大丈夫という気があったようだ。このような話であった。
この話に私は深く心を打たれたし、さすがに白洲さんらしいなと感じた。
(河合隼雄著『大人の友情』朝日新聞社、85~86ページ)
ぜひ、ここで語られている白洲正子さんのように意識を回復し、あの世の入り口の話でも、我々に笑い飛ばすように語ってほしいものだ。
(追記:その後、『大人の友情』は2008年2月に朝日文庫に入った)
*河合隼雄関連の記事
3月7日:『中年クライシス』
8月24日:気がかりな河合隼雄文化庁長官の容態
9月1日:『明恵 夢を生きる』を読み始める
9月5日:気がかりな河合隼雄文化庁長官の容態・その2
9月7日:『明恵 夢を生きる』を読み終わる
9月8日:90年代後半の世相を語る『縦糸横糸』を読む
11月1日:河合隼雄文化庁長官、休職
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コメント
初めまして。
河合先生をたどってきました。
意欲的に活動されていただけに
疲れがたまっていたのではないかなと思います。
まだまだ先生のお話が聞きたい。
私もこちらへ戻ってきてくれることを
心から祈っています。
投稿: rin | 2006年9月 7日 (木) 18時58分
rinさん、コメントありがとうございました。
河合長官の考えというのは、生き方のお手本として、私の心の一部をなしているという感じです。ぜひ、もう一度、こちらの世界に戻ってきていただきたいと、願っています。
投稿: 拓庵 | 2006年9月 7日 (木) 19時34分