森内俊之名人から見た羽生善治3冠
今日は、また将棋の話を少し。将棋の名人戦の主催を毎日新聞社から朝日新聞社に移すという騒動が持ち上がってから、再び将棋界のことを関心を持って見るようになった。将棋連盟の月刊誌『将棋世界』も9月号、10月号と買って読んでいる。(米長会長によれば、販売部数の低下に歯止めをかけるべく、編集部も意欲的な編集をしているようだ)
将棋盤と駒を持ち出して、棋譜を並べるほど熱心ではないが、毎月掲載されるタイトルホルダーのインタビューは、トップを極めた棋士たちの人間性を垣間見ることができて、面白い。9月号は、最近、タイトル戦の常連である佐藤康光棋聖(36)、そして直近の10月号は森内俊之名人(35)である。
森内名人のインタビューの中で、ライバルである羽生善治3冠(王位・王座・王将)(35)について語ったところがある。(森内と羽生は同い年、小学生名人戦でも戦っている)
「羽生さんは別格の存在ですね。将棋界の枠を超えているという意味でもそうですし、学んだことは数多いです。」
「子供のころは確かに対抗心がありましたけれど、途中から差が開きすぎて後ろ姿が見えなくなってしまいましたので、そういう気持ちはなくなりました。自分が一つ上のステップに上がったと思えたとき『彼はこうしてクリアしてきたのか』とすごさがわかる。棋士の中では一番尊敬しています。そういう感情を持つことは勝負師としては問題なのかも知れませんけれど…」
「羽生さんのすごいところは周りを引き上げてながら、自分も上がっていくところだと思います。勝負の世界では仲間がそのままの場所にいてくれれば自分が上がったとき差が開く分けで、勝ち負けだけを考えればその方が得になるわけですが、かれの場合はそう考えずにもっと大きな視点で見ています」
(日本将棋連盟発行『将棋世界』2006年10月号、18~19ページ)
同年齢で将棋界の一方の雄である森内名人から「周りを引き上げて、自分も上がっていく」と評される羽生3冠というのも偉大だ。かつて、羽生3冠が、将棋界のタイトル7つを全て手中に納めたことがあったが、その後、ライバルの成長もあって、まさに群雄割拠。
しかし、トップが周りを伸ばし、自分もその追い上げに脅威を感じつつも成長していく。追う者と追われる者が、しのぎを削りギリギリの勝負を繰り広げる。こんな前向きの回転をしている組織は、どんどん強くなると思う。
一方で、将棋というものが、厳しい勝負の世界でありつつも、以前書いたメディア・イベントの一つに過ぎないことをよく認識しているのが、将棋連盟会長になった米長邦雄永世棋聖だろう。人々に注目され、関心を持たれてこそ、成り立つ仕事・組織であることをわかっているはずだ。注目され、関心も持たれても、その重圧や好奇心に耐え、またそれにふさわしい内容を備えた後輩達だと信頼しているからこそ、いろいろな形で、話題作りをしているのではないかと思う。
これからも、毎月の『将棋世界』の購読者となって、将棋界の動きに注目していきたい。
*将棋に関する記事(2006年)
4月26日:『将棋世界』5月号
6月19日:第64期将棋名人戦
8月2日 :将棋名人戦、朝日新聞に
8月27日:米長邦雄将棋連盟会長の『不運のすすめ』
9月9日 :森内俊之名人から見た羽生善治3冠
9月20日:将棋名人戦、朝日・毎日の共催へ協議開始
11月18日:郷田真隆九段の揮毫「晩成」
12月23日:第19期(2006年)竜王戦-佐藤康光棋聖及ばず、渡辺竜王に立ちふさがる最後の壁は羽生3冠
12月30日:将棋名人戦、毎日・朝日両新聞社の共催の詳細固まる
*上記記事を含め、このブログの将棋に関する記事の一覧はこちら→アーカイブ:将棋
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