「中年クライシス」を魂の意思で乗り越えた片岡鶴太郎、『鶴太郎流墨彩画入門』から
『鶴太郎流墨彩画入門』(片岡鶴太郎著、角川oneテーマ21)を読んだ。11月の新刊で、CIA試験の前日に仕事の帰りに寄った書店で、目についたので、すぐ購入。試験中は、我慢をして試験が終わったあと一気に読み終わった。
しばらく前の日本テレビの「いつみても波瀾万丈」のゲストで出ていた時の話が印象的で、それ以来気になっていた。(今回、調べてみると放送は2006年2月5日だった)
その時の印象的に残った話は、
(1)中学3年の時、成績がとても悪くて、今の成績では公立高校進学は無理と言われ、家庭の経済的事情で公立しか行けないことから、夏休みに独学で徹底して勉強し、夏休み明けには成績がトップクラスになり、無事公立(都立)高校に入学したこと。
(2)お笑い芸人として人気の絶頂にあるとき、このままではいけないとボクシングを始めたこと。
(3)今では画家としても、たくさんの作品を残していること
などである。見たときは、もっといろいろなことを鮮明に覚えていたと思うが、1年近くたっているので記憶もおぼろげである。
ただ、その時、軽薄なお笑い芸人から個性派俳優に転身して成功したタレントといった程度の印象しかなかった片岡鶴太郎が、ただならぬ人であることを感じた。
とはいえ、その後、それ以上詳しく調べるわけでもなく過ごしていたが、今回、新刊書として並んでいるのをみて、すぐに手に取った。体裁は「墨彩画のすすめ」的な形になっているが、内容は彼が40歳にして出会った墨彩画を通じて、彼自身の生き様を語るものになっている。
何かを「やりたい」と思う気持ちは、その人の魂が語りかけてきた言葉だとわたしは思っています。思いたったが吉日、すぐ始めてみることです。(中略)
わたしもそうでした。もうすぐ四十歳になろうというとき、ふと絵に呼ばれたのです。(中略)突然、無性に絵を描きたくなった。椿を見ても何の花かわからなかった人間が、その美しい花を描いてみてたまらなくなったのです。
理屈では説明できない衝動のようなものに駆られて、本当に自由気ままに自己流で始めてみた。そうしたら、もう面白くてすっかりのめり込み、いまでは自分は絵に生かされていると思うまでになっています。絵を描きたいという「魂の意思」に素直に応えたからいまの自分があるのだと思うと、そのことに気づいた自分は何とも幸せな人間だと思います。
社会的な地位や権勢を勝ち取ることや、金銭的な満足を得ること、それも私たちに何かしらの喜びを与えてくれるでしょうが、魂というものはそれだけでは満足しないような気がします。魂の意思というのは、頭で考えて判断するものではなくて、そうせざるをえないような心の動きみたいなものです。
それは、おそらく誰の中にもあります。それに気がついて、その感覚を目覚めさせて生きるのか、それとも眠らせたままで自分の人生を終わらせていくのか。本当に後悔のない有意義な人生とは、魂の意思に導かれる道なのではないでしょうか。それが、人間の本来的な姿のように私は思います。(『鶴太郎流墨彩画入門』4~5ページ)
私が下手に解説めいた事を書いたり、書き足すことは何もない。放送があったのが、今年の2月5日、自分で意識したことはなかったが、私もTVの画面から伝わってきた鶴太郎さんのオーラに影響され、このブログを始める(2月26日)ことになったのかも知れないと思った。
片岡鶴太郎公式ホームページはこちら。
| 固定リンク | 0
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 東京都心の紅葉(2010.11.24)
- 切手で学んだ日本の美術、東京の美術館を巡って(2010.10.10)
- 絵本『はらぺこあおむし』の作者エリック・カールさんの展覧会に行く・その2-出会いの不思議(2008.05.05)
- 絵本『はらぺこあおむし』の作者エリック・カールさんの展覧会に行く・その1-創作の秘密(2008.05.05)
- 将来やってみたいこと「スケッチと書道」(2007.11.29)
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- ブログの記事が1300タイトル到達(2011.10.23)
- 「名菓ひよ子」は東京のお菓子か?福岡のお菓子か?(2011.08.15)
- ズボンプレッサーを買う(2011.04.23)
- 2011年の年初に、2010年を振り返る(2011.01.04)
- 2011年の初夢はラグビーでトライする夢だった(2011.01.03)
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- マンガ『弱虫ペダル』大ヒットの理由を考える。主人公小野田坂道は指示待ち世代の典型?(2015.09.06)
- 『赤毛のアン』を読み始める(2014.09.21)
- 漫画『坂道のアポロン』ボーナス・トラックとのファンブック、ログブックを読み、アニメ『坂道のアポロン』のブルーレイディスクで見た制作関係者の本気(2012.11.23)
- 深夜アニメ『坂道のアポロン』が素晴らしい(2012.06.10)
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 西野智彦著『ドキュメント通貨失政』(岩波書店、2022年)を読み終わる(2023.02.24)
- 三宅香帆著『それを読むたび思い出す』(青土社、2022年)を読み終わる (2023.02.18)
- 北条早雲(伊勢新九郎盛時)を描く『新九郎、奔る!』(ゆうきまさみ、小学館)(2021.05.22)
- 『戦乱と政変の室町時代』(渡邊大門編、柏書房)を読み終わる(2021.05.16)
- 小野不由美著『十二国記』シリーズ (新潮文庫版)を読み終わる(2015.03.01)
「人生」カテゴリの記事
- 令和元年の年の瀬にブログ更新を再開(2019.12.21)
- 49歳という年齢とブログのテーマ(2009.11.11)
- 「中年クライシス」から「中年の覚悟」へ(2009.06.01)
- 大人と子供を区別するもの、人の事を考えられるか(2007.03.05)
- 訃報:『14歳からの哲学』の池田晶子さん死去(2007.03.03)
「仕事」カテゴリの記事
- 2011年のラグビーの初夢と8年後(2019.12.22)
- NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」第174回「夢の旅客機、未来へのフライト」を見て、全日空(ANA)について考える(2012.02.19)
- PHP新書『日本企業にいま大切なこと』(野中郁次郎・遠藤功著)で語られた「知の創造のために必要な相互主観性」に納得(2011.10.09)
- 東日本大震災のその日(2011.03.13)
- 新しい職場での最初1週間が終る(2011.03.05)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
トラックバックありがとうございました。
片岡さんの文章、とってもきれいで読みやすいですね・・。知りませんでした。
>魂というものはそれだけでは満足しないような気がします。
の一文にとても共感しました。
投稿: Toko | 2006年12月 2日 (土) 08時00分