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2006年12月20日 (水)

作家高橋克彦の半生を語る『開封 高橋克彦』

今月の講談社文庫の新刊で『開封 高橋克彦』(道又 力著)という一風変わった本が出た。15年間、高橋克彦の秘書をつとめた著者が書いた、高橋氏の全作品の解説と生まれから作家デビューするまでの半生の伝記の2部構成になっている。

東北の岩手・盛岡を本拠に活動する高橋克彦氏の小説のうちは、主に東北出身の歴史上の人物・事件を取り上げた『風の陣』(奈良時代の橘奈良麻呂の乱、藤原仲麻呂の乱を生きた丸子嶋足)、『火怨』(蝦夷反乱の首領アテルイ)、『炎立つ』(前九年・後三年の役から奥州藤原氏)、『天を衝く』(秀吉に反旗を翻した九戸正実)という古代から近世までの一連の東北シリーズと元寇の時の鎌倉幕府の執権北条時宗を取り上げた『時宗』を読んでいるので、その人となりには興味があった。

第2部の小伝を読むと高校時代演劇部に属し、戯曲を書いていたこと。 実家は医院で、医者を継ぐつもりで、医学部入学のため浪人生活を続けていたが、文学や演劇への関心が強く、なかなか勉強に身が入らず、見かねた弟が、医学部を受験し医者を継ぐことになり、本人は4年浪人の末、早大商学部に進学したこと。作家デビューのきっかけとなった江戸川乱歩賞受賞作の『写楽殺人事件』は、地元の新聞記者だった中津文彦氏が『黄金流砂』で乱歩賞を受賞したことがきっかけで、過去の受賞作と選考委員の選考評を全て読み、傾向分析した上で、次回は自分が乱歩賞を取ると家族や友人に宣言して、本当に翌年、受賞したことなど数々のエピソードがちりばめられている。

また、弟の親しい友人(不慮の事故で亡くなった)の霊に何回も遭遇したり、自分やよその老婆の生霊にあったりと、霊感の強い人であるエピソードも載せられている。

最初に第2部の伝記を読み、第1部の作品解説に戻って読んでいるが、歴史物だけでなく、SF、ホラー、サスペンス、伝奇物とその作品は幅広い。まだまだ、面白そうな作品が多いので、解説を参考にもう少し高橋克彦の世界にも浸ってみることにしたい。

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