畠中恵の『しゃばけ』『ぬしさまへ』『ねこのばば』を読む
この1週間、新潮文庫の『しゃばけ』、『ぬしさまへ』、『ねこのばば』(いずれも畠中恵著、柴田ゆう挿画)を読んでいた。
『楊家将』を読んで、心理学や精神医学の新書も悪くはないが、たまには面白い小説を読むのもいいなと思い、書店の売り場をうろうろしていたら、妖怪変化を描いた怪しげなイラストに惹かれ、文庫になっていた3冊をまとめて買った。
話の舞台は、江戸時代。日本橋の廻船問屋「長崎屋」の若だんな「一太郎」の周りで起こる怪事件を、若だんなが解決していく推理ものなのだが、単なる推理小説というよりは、シリーズの1冊め『しゃばけ』の裏表紙のキャチコピーにある「大江戸人情推理帖」という説明がいちばんぴったりくるように思う。挿絵に出ている妖怪変化が、主人公の若だんなとどのような関係で、どんな活躍をするのかは、書きすぎると面白みがなくなってしまうので、読んでのお楽しみということにさせていただきたい。
シリーズ第1作めの『しゃばけ』は、2001年第13回ファンタジーノベル大賞(主催:読売新聞社、清水建設)の優秀賞受賞作で、若だんな一太郎が初登場の長編。その後の2冊は、若だんなと彼を巡る人々?を題材にした短編集で、廻船問屋「長崎屋」を舞台にした『しゃばけ』ワールドは、その奥行き、広がりをましており、読み手も、いつの間にかその世界に引き込まれてしまう。
さらに文庫化はされていないが、単行本で第4作『おまけのこ』(短編集)、第5作『うそうそ』(長編)と書き継がれており、さらに一太郎の少年時代を描いた『みぃいつけた』というイラストブック(絵本)も登場し、すでにシリーズで100万部を突破するヒット作になっているらしい。新潮社にホームページには、「しゃばけ倶楽部~バーチャル長崎屋~」というコーナーも設けられている。
新潮社の売れ筋の一つのようで、今回も『みぃつけた』の発売と『ねこのばば』の文庫化の機会に合わせ、キャンペーンを行っているようで、多くの書店で平積みで、このイラストが見えるように並べられているし、小説新潮の9月号では、著者のロングインタビューを掲載するなど、大変な力のいれようだ。
かくいう私も、文庫3冊を読んだところで、すっかり『しゃばけ』ワールドのとりことなってしまい、今日の帰り、残る2冊の単行本に、イラストブック、小説新潮まで買い込んできた。しばし、長崎屋の世界にひたるとしよう。
*『しゃばけ』関連の記事
2006年12月8日:畠中恵の『しゃばけ』『ぬしさまへ』『ねこのばば』を読む
2006年12月13日:畠中恵の『しゃばけ』ワールド第4作『おまけのこ』
2006年12月17日:畠中恵の『しゃばけ』ワールド第5作『うそうそ』を読み、シリーズ全体のテーマを考える
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コメント
はじめまして!
トラックバックありがとうございました♪
こちらも早速トラックバックさせていただきました。
これからもよろしくお願いします!
しゃばけシリーズ、本当に面白いですよね。
第6弾、第7弾・・・とずっと続いてほしいシリーズですね!
投稿: miwa125 | 2007年1月14日 (日) 17時47分
miwa125さん、私が勝手に送ったTBにコメントまでいただきありがとうございます。畠中恵さんの「しゃばけ」ワールドは、独自の物語世界を確立し、ファンも多いので、まだまだ続くのではないでしょうか。楽しみですね。
投稿: 拓庵 | 2007年1月14日 (日) 21時29分