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2006年12月13日 (水)

畠中恵の『しゃばけ』ワールド第4作『おまけのこ』

先週このブログでも紹介した畠中恵の『しゃばけ』シリーズの第4作『おまけのこ』(新潮社)を読んでいる。5話からなる短編集で、最後の1話を読んでいるところだ。

著者の畠中恵さんは1959年生まれ。一時は漫画家をしていたというが、都筑道夫の小説教室に通い、作家修業をしたという。小説教室通って、これだけの物語世界を作り出せるのなら、物書き志願者としては、定年後にでも、一度通ってみようかという気にもなる。

すでに、紹介してある『ぬしさまへ』『ねこのばば』の2つの短編集でもそうだが、最初の長編『しゃばけ』での登場人物やその後の短編でのちょい役で出てきた人々を取り上げ、その生い立ちや主人公である廻船問屋長崎屋の若だんな一太郎とかかわることになった背景が、少しずつ描き出される。話が進めば進むほど、一太郎を中心とした『しゃばけ』ワールドは、その奥行き・広がりを増し、そこに一つの世界が動いているような気がしてくる。

『ゲド戦記』の作者ル=グウィンは、「ゲド戦記の舞台であるアース・シーの世界を自分が創作したのではなく、すでにそこにあり、自分はその世界に行って、そこでの出来事を記録しただけだ」といいう趣旨にことをエッセイの中で語っているが、『しゃばけ』ワールドも作者の畠中さんにとって、同じような存在になりつつあるのではないだろうか。登場人物ひとりひとりが、勝手に動き出し、作者はそれを追いかけているだけという物語世界が、作り上げられている。

『しゃばけ』シリーズにはファンも多く、ブログでも多く取り上げられている。短編集の書評では、それぞれの書き手が、自分はこの話が好きというコメントも多い。『しゃばけ』ワールドの登場人物たちは、それぞれに過去や悩みをかかえながら、生きている。読み手が感情移入したり、応援したくなる登場人物がいること、そして回を経るごとに、その数が増え、ますます物語世界の奥行き・広がりが増していることが、多くのファンを惹きつけてやまない理由だろう。第5作の『うそうそ』も楽しみである。

*『しゃばけ』関連の記事
2006年12月8日:畠中恵の『しゃばけ』『ぬしさまへ』『ねこのばば』を読む
2006年12月13日:畠中恵の『しゃばけ』ワールド第4作『おまけのこ』
2006年12月17日:畠中恵の『しゃばけ』ワールド第5作『うそうそ』を読み、シリーズ全体のテーマを考える

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