『物語のはじまり』(松村由利子著)に思う・その2
昨日、取り上げた『物語のはじまり』の著者、松村由利子さんは、やはり同級生だった。ご本人と連絡がとれ、同じ高校の同じ学年だということがわかった。
同じ時に、同じ学校で学んだ人が世に出て認められ、賞賛を受けるのは誇らしいものである。自分も負けないように、頑張れねばならない。
松村さんの『物語のはじまり』のおもしろかった一節を紹介したい。「2.食べる」と題した章の中で、俵万智の歌を紹介したあとに、こう述べている。
一緒にごはんを食べていて今ひとつ楽しくなかったら、その恋はやめた方がいい。
ものすごく性格のいい人で、話題が豊富、自分のことも大事にしてくれる--でも、ごはんを食べると違和感がある、という人は確かにいる。会話のリズムが合うのは、恋がが長続きする上で大事なポイントだが、ごはんを食べるつつ会話のリズムが合うことは、その一ランク上のポイントといってよい。
(松村由利子『物語のはじまり』中央公論新社、48ページ)
確かに、話すだけなら違和感はないのに、食事に行ったり、飲みに行ったりすると、なぜか話がうまく噛み合わない人というのは、たしかにいる。結局、なんとなく居心地が悪く、いくら好ましく思っても、それ以上先には進まない。
ドラマなどでは、お見合いの時、必ず向かいあって食事をするシーンがよく出てくるが、案外、そういうところをチェックしているのかも知れない。
松村さんは、新聞記者だっただけあり、さらには歌人として、言葉と向き合っていることもあって、文章に無駄な修飾語もないし、読み直さないとつながりがよくわからないといったところもほとんどなく、読みやすい。
昨日など、帰りの電車で読んでいて、つい引き込まれ、急行から各駅停車に乗り換える駅を乗り過ごしてしまった。
残るは「8、見る」「9、老いる」「10、病む、別れる」の3章。いよいよ、老い、病み、別れという我々のこれからの現実が突きつけられる。心して、ページを開くことにしよう。
松村由利子さんのブログ:「そらいろ短歌通信 松村由利子の自由帳」
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