歌集『薄荷色の朝に』(松村由利子著)を読み終わる
松村由利子さんの最初の歌集『薄荷色の朝に』読み終わった。
最初に「薄荷」という字は、なんと読まれただろうか?正しくは「ハッカ」である。私は、漢字検定準1級と、プロフィールにも書いているのだが、お恥ずかしながら、読めなかった。
グーグルで「薄荷色」で調べると、英文でMINT GREENとあり、薄い緑色である。まず、タイトルからして分からないのだから、詠読み手失格である、情けない。
この歌集には、1994年に「短歌研究新人賞」を受賞した際の「白木蓮の卵」と題した26首を先頭に、1991年から98年までの8年間の341首が取り上げられている。歌集のタイトルになった薄荷色は、「白木蓮の卵」の中の次の歌に登場する。
風の変わる予感満つれば薄荷色のTシャツ一枚ベランダに干す
作者30代の作品集といえるこの『薄荷色の朝に』全体を通して、押さえきれずほとばしる想いが、五七五七七の31文字にあふれ出ているという印象を受けた。作者の師である歌人の馬場あき子さんの巻末での解説にある「青春挽歌」との評がふさわしいと思う。
先に読んだ第二歌集『鳥女』が、自らの内面をえぐり、31文字の中に閉じこめたと感じたのとは対照的だ。『鳥女』では、一人の女性の情念というようなものが感じられるのだが、その想いはどこか乾いた感じがする。
30代は無我夢中で走り抜け、40代になってふと立ち止まった時、大きな惑いがあったのではないだろうか。作者にも、中年期の危機(中年クライシス)、曲がり角があったのではないか。第二歌集『鳥女』は、その中年クライシスを乗り越えようとした中で、できあがってきたものなのではないだろうか。
『薄荷色の朝に』の中で、気になった歌を一首だけ紹介し、好き勝手に書いてしまった感想を終えたい。
近づけど決して交わらざる思い人の心は放物線に似る
松村由利子さんのブログ:「そらいろ短歌通信 松村由利子の自由帳」
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