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2007年2月12日 (月)

「名人は選ばれたものがなる」-郷田真隆名人待望論

将棋に関する話を続けて書いた中で、永世名人の話を書いたが、その記事を読んだ方から、いただいたコメントの中に、将棋界で語られる「名人は選ばれたものがなる」というフレーズがあった。

今回、私は挑戦者となった郷田真隆九段を応援しているが、郷田九段が選ればた人となれるかについて、考えてみたい。

郷田真隆九段は、不屈の人である。今回、名人挑戦を決めるまで、過去2回、名人挑戦者リーグであるA級に昇級したものの、いずれも1期で陥落。2回目の時は、通常であれば残留することも多い4勝5敗の成績で降級だった。しかし、降級後のB級1組では、常に8勝4敗以上の成績を残し、いずれも2期でA級に復帰。3回めのA級挑戦となった前期は、最終戦を前に早々に勝ち越しを決め、5勝4敗の成績で今期のA級ランク4位を手にした。そして、満を持して臨んだA級4期めの今期、羽生三冠、佐藤棋聖など同世代のライバルを破り、最初からトップを譲ることなく、最終戦を前に名人挑戦を決めた。

郷田九段は、自らの扇子に「晩成」と揮毫している。羽生世代の一人に数えられる中、1つ年上の佐藤棋聖、同学年の羽生三冠、森内名人らが華々しく活躍する中で、「晩成」という言葉は「いずれは自分が取って代わる」という決意の現れだと私は解釈している。また、その「晩成」という書は堂々としていて立派だ。

更に、不謹慎に書くことではないと思うが、名人挑戦を決めた対局の朝、お父さんが亡くなるということがあった。

その不屈の戦いぶりや、「晩成」という言葉を使っていること、父の死に立ち会えなかったことなど、郷田九段の挑戦者決定には、私は、ある種の「物語」や「ドラマ」を感じずにはいられない。

「名人は選ばれた棋士がなるもの」という言葉の中には、その時代の将棋ファン、広くとらえれば社会一般の人々が望む「物語」や「ドラマ」を、一身に引き受けて演じてみせられるかということが含まれているのではないかと思う。

そのためには、まずその棋士自身が、そういう「物語」「ドラマ」の素地を持っていること、そして、人々がその実現を望むことという2つの要素があるだろう。

四冠まで制しながら名人だけは手に届かなかった現米長邦雄永世棋聖が7回めの名人挑戦にしてようやく手にした「49歳の名人」、羽生善治三冠がかつて七冠を手にした時は「七冠というスパースターを見たい」という7冠待望の中、当然、名人位も羽生七冠が手にすべきものだった。

今回の郷田九段には、ようやく長い不況から立ち直ろうとしている日本経済・日本社会が背景にあり、郷田九段の不屈の戦いぶりは、経済の回復ぶりと軌を一にするもののようにも見える。今の、日本社会は、そのような不屈の名人の誕生を歓迎するのではないか、そんな気がしている。

「物語」や「ドラマ」は十分に備えている。あと大事なことは、どれだけ、郷田名人を待望する機運が広がるかだろう。私のブログのような、ささやかな媒体でも、こうやって書き記すことで、いくらかでも4月から始まる将棋の名人戦に関心のある人の目にとまり、一人でも多くの郷田ファン、郷田シンパを作る事につながり、郷田名人待望の機運が広がればと考えている。

*将棋に関する記事(2007年)
1月8日:
佐藤康光棋聖、5連続タイトル戦挑戦者
1月17日:佳境を迎える将棋A級順位戦、郷田真隆九段へのエール
2月2日:祝・郷田真隆九段、A級最終戦を残し、第65期将棋名人戦での森内俊之名人への挑戦権獲得
2月3日:第65期将棋A級順位戦8回戦の詳細
2月3日:郷田真隆九段、父の死を知らず
2月3日:将棋永世名人位の重み
2月10日:将棋第65期順位戦B級1組第12回戦の結果分析とB級2組での渡辺竜王の昇級確定
2月12日:「名人は選ばれたものがなる」-郷田真隆名人待望論
3月3日:将棋界の一番長い日、将棋第65期A級順位戦の最終局の結末

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コメント

郷田ファンです。
最終戦がんばってー!!

投稿: 山猫 | 2007年6月23日 (土) 09時20分

山猫さん、コメントありがとうございます。
名人戦最終局の第7局が来週の木・金に迫ったこともあり、再び郷田真隆名人待望論という記事を書きました。よかっったら、そちらも読んで下さい。

投稿: 拓庵 | 2007年6月23日 (土) 21時26分

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