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2007年2月 6日 (火)

『風が強く吹いている』(三浦しをん著)を読み終わる

年末年始少し長めの休みをとることにしていたので、休み中に読もうと年末に買ったまま、結局読まないまま「積ん読」になっていた本が何冊かある。

『風が強く吹いている』(三浦しをん著、新潮社)もその1冊。TBSの「王様のブランチ」で、箱根駅伝を舞台にした話と聞き、中学から大学まで陸上部にいた私としては、ぜひ読んでみようと思い、購入。しかし、その後、このブログでも紹介した短距離選手を主人公にした『一瞬の風になれ』(佐藤多佳子著)の存在を知り、より自分のやっていたことに近い『一瞬の風になれ』を、まず読んだ。

次は、いよいよ駅伝である。『風が強く吹いている』の主人公は、寛政大学4年生の清瀬灰二(ハイジ)。ある春の夜、銭湯からの帰り、コンビニから万引きをして猛スピードで走って逃げる若者を魅入られたように追いかけるところから、この小説は始まる。
逃げていた若者が、寛政大学に入学するため、上京してきていた蔵原走(かける)。走が、この小説のもう一人の主人公である。
住むところのない走をハイジが、自分に住む寛政大生用の「青竹荘」に連れ帰り、9室のうち残っていた最後の1室の住人にする。青竹荘には、既に9人の住人がおり、走が加わって10人となった。走の歓迎会の席上、青竹荘の世話人ともいえるハイジが、この10人で箱根駅伝を目指すと宣言し、住人達からは不満の声が上がる。
その不満をなだめつつ、どうやってハイジは、素人ばかりの集団を、箱根駅伝を目指す集団に変えていくのか、ハイジの手腕が見所の一つだろう。
後半、10人のメンバーのひとりひとりが走りながら、自らを振り返る場面も、なかなかいい。

『一瞬の風になれ』も『風が強く吹いている』も、陸上競技という個人競技の中での、短距離のリレーと長距離の駅伝というチーム競技の要素が強い種目を素材に、画一的な管理社会、弱肉強食の競争社会のアンチテーゼを描いているようにも思う。
個性ある人をどうやって育てるのか、どういう時に人は成長し、力を発揮するのか。仲間と一緒に、チームを組むことで、1人で走る時以上の力が引き出されるのではないか。
今、この時代に相次いでこれらの作品が書かれたのは、やはり、現実社会が息苦しい部分く、人と人のつながりが希薄になってきているからなのであろうか?そんなこともふと考えさせられた作品だった。

しかし、陸上競技、とりわけ「走る」ということが、短距離、長距離のそれぞれで小説に取り上げられ、どちらも多くの人に読まれ、評判になっているのは、ながく陸上をやって来たものとして、うれしい限りである。

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受信: 2007年2月 8日 (木) 22時20分

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受信: 2007年2月 9日 (金) 00時08分

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