第65期将棋名人戦に関する話題、過去の森内-郷田戦の意外な結果
将棋の第65期名人戦の第1局は、先手番となった挑戦者の郷田真隆九段が119手で森内俊之名人を降し、1勝をあげたのは、このブログでも一昨日(4月11日)書いた通りだ。
私は、一昨日のブログに
「わずかとはいえ、統計的には先手の勝率が高い将棋界。
自らの先手番において確実にに勝利を収めておくことは、タイトル戦のような力の接近したトップ棋士同士の戦いであれば、タイトル奪取に向けての欠かせない第一歩といえるだろう。」
と書いたのだが、今日になって、「過去の両者の対戦で、先手・後手による勝率の違いはどれほどなのだろうか」ということが気になった。最近の6戦は、森内名人の6連勝なのだが、その際の先手・後手はどうなっていたのだろうと思い、毎日インタラクティブに出ていた過去の対戦成績と「棋譜でーたべーす」での先手・後手の記録と突き合わせてみた。なんとも、驚くべきことがわかった。
過去の対戦成績
| 年 | 棋戦 | 先手 | 後手 | ||
| 1989 | 新人王 | 郷田 | ○ | 森内 | × |
| 1991 | 若獅子 | 森内 | ○ | 郷田 | × |
| 1993 | 王将 | 郷田 | ○ | 森内 | × |
| 1994 | 王将 | 郷田 | ○ | 森内 | × |
| 1995 | 王位 | 森内 | × | 郷田 | ○ |
| 1995 | 王将 | 森内 | ○ | 郷田 | × |
| 1997 | 棋聖 | 郷田 | ○ | 森内 | × |
| 1997 | 棋王 | 郷田 | ○ | 森内 | × |
| 1999 | 早指し | 森内 | ○ | 郷田 | × |
| 1999 | 王座 | 森内 | × | 郷田 | ○ |
| 1999 | A級 | 郷田 | × | 森内 | ○ |
| 2000 | 棋王 | 郷田 | ○ | 森内 | × |
| 2001 | 王座 | 森内 | ○ | 郷田 | × |
| 2001 | 棋王 | 森内 | ○ | 郷田 | × |
| 2001 | 王将 | 森内 | × | 郷田 | ○ |
| 2001 | 棋王 | 郷田 | ○ | 森内 | × |
| 2002 | 王座 | 郷田 | × | 森内 | ○ |
| 2002 | 銀河 | 森内 | ○ | 郷田 | × |
| 2002 | 王将 | 郷田 | ○ | 森内 | × |
| 2002 | 棋聖 | 郷田 | ○ | 森内 | × |
| 2003 | 竜王 | 森内 | ○ | 郷田 | × |
| 2003 | 王将 | 森内 | ○ | 郷田 | × |
| 2005 | 王将 | 森内 | ○ | 郷田 | × |
| 2005 | 棋王 | 郷田 | × | 森内 | ○ |
| 2006 | 竜王 | 森内 | ○ | 郷田 | × |
| 2006 | 王将 | 森内 | ○ | 郷田 | × |
| 2007 | 名人 | 郷田 | ○ | 森内 | × |
一昨日の名人戦第1局も含め、両者の対戦は27戦。成績は森内名人14勝、郷田九段13勝とほぼ互角であるが、上の表を見てもわかる通り、先手番の勝率が異様に高い。27戦中、先手の21勝6敗、勝率0.777である。
両者それぞれの先手番での成績は、森内名人11勝3敗(0.785)、郷田九段10勝3敗(0.769)であり、ここでも偏りはない。
2003年から2006年までの森内名人の6連勝のうち、5戦は森内名人が先手番、2005年の棋王戦のみが郷田九段の先手番を後手番の森内名人が破っている。
この対戦成績を見る限り、2人の力は拮抗しているといってよく、先手・後手のわずかな差がほぼそのまま勝敗に反映されていると見るべきだろう。
第1局での郷田九段の扇子の音に森内名人みずから抗議するというやや神経過敏とも思われる反応も、この成績を見れば頷ける。名人と九段という肩書きの差ほど、実力は離れてはいないことを、森内名人自身よくわかっているからこそ、自分の力が100%発揮できる環境を確保したいという思いが強かったのだろう。
一方、この戦績を見ると、『将棋世界』でのインタビューでの郷田九段の答えの意味がよくわかる。
記者が、「通算成績は郷田九段から見て12勝14敗とほぼ互角ですが、最近は6連敗中です」と問いかけたのに対し、次のように答えている。
「最近勝っていないんですよね(笑)。ただ、番勝負は4つかつかどうかという戦いですし、先後がありますから、それほど気にはなりません」
(『将棋世界』2007年5月号16ページ)
タイトル戦では、初戦に振り駒で先手・後手を決めると、あとはフルセットになって最終戦もつれ込むまでは、順に先手・後手が入れ替わる。(最終戦は、再度、振り駒で先手を決める)
このインタビューの答えは「これまでの、対戦成績からいって、先手番なら、めったに負けることはない」という自負の表れだろう。事実、先手番となった第1局に勝利したことで、それを証明してみせたことになる。
おそらく、今回の名人戦の焦点は、どちらが先に、相手の先手番で勝つことが出来るかということになるだろう。2人の対戦での後手の勝率は0.222。確率的には後手番の勝ちは4~5戦やって1回、2人の7番勝負では2回は起きないだろう。
先に、後手番で相手の先手番をブレイクした方が、圧倒的な優位に立つことになり、おそらく名人位をも制することになろう。
郷田九段にとっては、森内名人が先手番となる第2局を制することが、一気に名人位をたぐり寄せることになる。
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