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2007年4月12日 (木)

IC乗車券PASMO(パスモ)見込み違いで発売制限

昨日(2007年4月11日)の朝日新聞夕刊こ「パスモ売り切れ寸前」との記事を見つけた。
先月から、東京近郊の私鉄各社で発売を開始したIC乗車券PASMOが、発行者側の当初予想を上回る売れ行きで、このままのペースで販売していると、近々在庫切れとなるおそれがあり、今日(4月12日)から発売を制限することになったらしい。
「へぇー、そうなんだ」と思っていたら、今朝、駅のでも、お詫びの放送が流れていて、私鉄各社では、ちょっとした事件になっているようだ。

PASMOを運営するPASMO協議会のプレスリリースと新聞記事から、これまでの経緯と再構成すると次の通りだ。

①PASMO協議会としては、3月18日のサービス開始から2007年度末(2008年3月末)までの1年間で500万枚の発行を目指していた。

②3月18日のサービス開始時に400万枚の在庫を用意、残る100万枚については、7月までに納品予定。さらに、300万枚を追加発注済で、8月頃から納品予定。

③実際の販売は、初日(3月18日)だけで51万枚が売れ、4日めの3月21日には100万枚を突破、さらに4月9日には300万枚を突破した。

④現在の販売ペースでは、追加納品がある8月前に、在庫がなくなると予想されることから、4月12日から8月まで販売制限を行う。

⑤発売制限期間中は、原則、PASMO定期券のみの販売で、自動販売機等で通常のPASMOの販売は一時中止。クレジットカードと連動するオートチャージ用PASMOについても、4月13日受付分をもって一時中止。申込受付再開は9月頃の予定。

年間で500万枚と見込んでいた発行枚数が、発売開始から1ヵ月たたずに300万枚売れてしまったと言うのだから、発売者側としても「うれしい誤算」の域を突き抜けて、「全くの見込み違い」といえるだろう。

当然、発売前には各種データから需要予測をして、発売に踏み切ったと思われるが、どこかで、予測の前提を間違えたのだろう。
需要予測は、①定期券の利用者がどの程度PASMO定期券を利用するか、②不特定多数の利用者が500円を預託して購入する通常のPASMOを購入するか、③オートチャージ機能付のPASMOがどれほど売れるかの3つの要素で想定されただろう。
参考になるのは、先行して使われているJR東日本のSuicaの利用データしかないと思われるので、Suicaの浸透度を参考にしたのではないだろうか。

検証用のデータがほとんどないので、確たることは何も言えないが、ネットで検索していると日本政策投資銀行が作成した資料の中に、2002年度の関東大手私鉄8社の年間輸送人員が45億8000万人、うち定期利用客28億人というデータが見つかった。
少々データも古いし、PASMOを利用できる鉄道会社はもっと多いが、一方関東私鉄8社がPASMO利用の中核ではあるので、その後の4年間の8社での輸送人員の減少と、対象会社の拡大とが相殺されると考えて、仮に28億人をPASMO定期券の対象マーケット考えてみる。
28億人を365日で割り算をすると現在の定期券の利用者は767万人。PASMOの当初の販売予定数500万枚は、ちょうど65%になる。
当然、PASMO定期券以外の一般のPASMO販売もあるので、500万枚の算定根拠は、定期券利用者の50%がPASMO定期券へシフト(約380万枚)、残り120万枚は一般のPASMO販売といったところだろうか。

PASMO協議会など、PASMOの販売サイドでは、Suicaと相互利用できるようななったことによる利便性の向上による需要喚起効果の見極めが難しかったのだろう。
定期券のPASMOシフト率が、JR東日本での定期券利用者のSuica定期券比率より遥かに高かったのではないだろうか。

私は、PASMOサービス開始直後に、オートチャージ機能付のPASMOを入手すべく、オートチャージPASMOと連動したクレジットカードを申し込んだ。元のクレジットカードは届いたが、申込から1ヵ月かかるというオートチャージPASMOはまだ届かない。
こんな事態になろうとは、想像もしていなかったが、定期券の更新日も迫っているので、早く届いてほしいものだ。

(お詫び)上記の関東私鉄8社の定期券利用者の試算のロジックに誤りがありました。「28億人を365日で割り算をすると現在の定期券の利用者は767万人。」と書いていますが、定期券の利用者は、通常は、通勤・通学とも往復をするので、この前提で試算をする場合、「年間定期輸送人員28億人÷(365日×2)≒383.5万人」が正しい答えになります。さらに、週休2日制が一般的と考えて週5日の乗車とすれば、更に上記の383.5万人に7/5を乗ずるのがより実態には近いと思われます。その場合は、関東私鉄8社で537万人の定期券利用者となります。PASMO発行の私鉄各社の定期券利用者500万人というのが、案外当たらずとも遠からずの数字かも知れません。(2007年4月15日追記)

(4月15日追記)PASMOの販売側であるPASMO協議会広報のコメントが「ITmedia+Dモバイル」というサイトの「“売れすぎ”PASMO、発売停止―定期券のみに」という記事(4月11日)の中にあった。
「定期券についてはほぼ予想通りだったが、そのほかのPASMOについては予想をはるかに超える売れ行きとなった。うれしい悲鳴ではありますが、お客様にはご迷惑をかけて、申し訳ありません」(PASMO協議会広報)
定期券の見込み違いではなく、一般のPASMOが想定外の売れ行きだったとのことのようだ。いままで、パスネットを使っていた不特定多数の人たちが一気にPASMO購入に走ったということらしい。

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