佐藤多佳子原作、映画『しゃべれどもしゃべれども』を見た
先週から公開されている映画『しゃべれどもしゃべれども』を見に行った。原作は、同名の佐藤多佳子さんの小説。
主人公の今昔亭三つ葉にTOKIOの国分太一、三つ葉の話し方教室に通う無愛想な美女十河五月に香里奈、三つ葉の師匠今昔亭小三文に伊東四朗、三つ葉の祖母春子に八千草薫、大阪から転校してきていじめられている小学生村林優、元プロ野球選手湯河原太一に松重豊という配役。監督は平山秀幸監督。
原作の持つ独特な繊細雰囲気をどう映像化するだろうかと思ってみたが、原作に込められた作者の思いを実にうまく切り出し、映像化していた。
映画では、原作に登場する主要人物である三つ葉のいとこのテニススクールのコーチ良や師匠小三文の弟弟子の草原亭白馬の2人をカットし、登場人物の人間関係を整理しているのだが、それによって原作の雰囲気が崩れることはなく、むしろ枝葉が整理されて、より幹の部分がはっきり伝わるように思われた。
それぞれ、うまく人と話ができないという悩みを抱える五月、村林、湯河原の3人二つ目落語家の三つ葉のもとに集まって、落語を勉強することに。しかし、教える三つ葉自身、自分にしか話せない落語を見つけられず、小三文師匠に怒られている身。
最初は、よそよそしくうち解けない4人が、様々の事件を通じて親しくなり、それぞれが他の3人の影響を受けながら少しずつ変わっていく。
そして、ラストを飾る村林と五月の語の発表会。映画では、ここで、原作に少し変更を加えているのだが、これも原作の思いをうまく掬い取って、思わずぐっと来る場面に仕上げてある。
三つ葉が同門会の席で「火焔太鼓」をしゃべる場面、最初はとりつくしまのないほど無愛想な五月が後半わずかではあるが笑顔を見せるようになる微妙な役作り、無骨な湯河原が発表会になかなか現れない五月の代役を練習してうろたえるところ、そして小学生村林君の本職顔負けの落語などなど、見所は多いが、やはり発表会での五月の落語がクライマックスだろう。
DVD化されたら、改めてもう一度見てみたい。
これから、見ようとする人には、原作を読んだ上で見ることを勧めたい。監督や脚本家が、原作のどこをどう変えて、原作に勝るとも劣らない佐藤多佳子ワールドを表現しているかを堪能していただきたい。
(画像はオフィシャルサイトのダウンロード用壁紙を利用)
原作を読んだ際のブログはこちら
2007年5月9日:佐藤多佳子著『しゃべれどもしゃべれども』を読み終わる
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コメント
TBありがとうございました。
映画のほうも良い出来上がりで楽しめる作品のようですね。
映画館にはなかなか足を運べないのですが、DVDになったら見てみたいと思います。
投稿: robita | 2007年6月 5日 (火) 10時45分