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2007年6月20日 (水)

岩宮恵子著『思春期をめぐる冒険』(新潮文庫)を読む

昨日の記事で書いた『夜のピクニック』の前に、岩宮恵子さんが書いた新潮文庫の今月(2007年6月)の新刊の『思春期をめぐる冒険』を読んだ。サブタイトルが「心理療法と村上春樹の世界」。

思春期をめぐる冒険―心理療法と村上春樹の世界 (新潮文庫 い 88-1)

書店で手にとって、「村上春樹作品は一冊も読んでないから…」と一度は買うのをやめたのだが、もともと心理学には興味があるほうなので、次に書店で見たときに、結局買って読み始めた。

作者の岩宮恵子さんは1960年1月生まれ。臨床心理士で、現在島根大学教育学部教授。島根大学教育学部のホームページの教育研究スタッフ一覧の岩宮教授のページを見ると次のように書かれている。

自己紹介・アピール
漫画や小説がとても好きです。おもしろい漫画やアニメについて学生さんから情報をもらうと、必ず読んでいます。大勢の人が夢中になるものには、その時代を生きる人の何かを刺激していると思ってます。その「何か」が何なのかを考えながら本を読んだりするのが趣味です。

現在の研究分野・テーマ
現代の思春期のさまざまな問題を、この世とは異なった世界(異界)という視点から考えています。なぜ、思春期の子どもたちは「異界」がテーマになっている漫画やゲームに夢中になるのかということを、思春期という時期の特性とあわせて考えています。また、「異界」との関連で、夢の分析の研究もしています。

本書は、多くの村上春樹作品を題材に、著者が臨床心理士として治療にあたったクライアントの事例も交えながら、主に思春期に起こるこころに起因する種々の問題を、著者がテーマとしている「この世とは異なった世界(異界)」との関わりという視点から考えている。
著者が語る「異界」は、単なる各個人の潜在意識という枠を超えおり、「あの世」に近いイメージがある。

我が家の中学生の長男が夢中になって見ているアニメなどをたまに見ても、自分たちが暮らす世界があり、それとは別の世界(異界)があり、主人公がその両方を往来するという世界観を持つ話が多いのに驚く。
そのような物語の構図は、先般ディズニーで映画化され話題になったC.S.ルイスの『ナルニア国』の物語などにも登場しており、目新しいものではないが、アニメで語られる世界観はどうも病的なものが多いような気がして気になっている。そのような懸念は、昨年読んだ岩波新書の『ファンタジーの世界』(脇明子著)でも書かれていた。

この本の内容を数行で紹介するのは難しいが、次の一文を紹介しておきたい。

思春期と異界
「変化する」ということは、それまでのあり方が象徴的な意味で「死」を迎えるということである。生きてる限り、毎日変化があるのは当然であるが、特に思春期は心身とも大きな変化の時である。そのため表面に見えている適応がどうであろうと、変化の裏側にある「死」の気配が色濃くなる。成長や進歩といったプラスに見える変化の裏にも必ずどこか「死」のイメージは存在している。
(『思春期をめぐる冒険』(新潮文庫)60ページ)

思春期を迎える少年少女が何かトラブルを起こした時、その表面にのみにとらわれていると、彼らがとらわれている「裏側」の死と向き合っている部分を見落としてしまい、大人から見ると何がなんだかさっぱりわからないということになってしまう。その「裏側」の部分のあり方を描き出しているのが、村上作品だというのが著者の評価であろう。

村上春樹氏の著作を一作も読んだことのない私には、おそらくこの本の半分しか理解できていないと思う。村上作品にチャレンジしてみようと思う。

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受信: 2007年7月27日 (金) 10時57分

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