佐藤多佳子さんの作品に共通するもの
昨日、あるサイトから私が書いていた佐藤多佳子さんの作品に関する記事のトラックバックがあったので、訪ねてみると、佐藤多佳子さんに関するブログに記事ばかりを集めたリンク集で、その中に私の記事も取り上げているとのことで、トラックバックがあったようだ。
そのリンクをつぶさにみていくと、なんと佐藤多佳子さんご本人が書いているブログが見つかった。高名な作家がブログなど書くわけないと思いこみ、検索したこともなかった。あたらめて、「佐藤多佳子」で検索をしてみると、ホームページも作られていて最新情報などが書かれている。
ブログを読むと、今日(2007年6月3日)と6月9日のテレビに出るとのこと。今日は、朝7時からフジテレビの「ぼくらの時代」というトーク番組にあさのあつこさん、森絵都さんの3人で出演するとのことで、ビデオの録画予約をした上で、朝起きて見た。
番組の中で、なぜ陸上をリレーを描いたのかという問いについて、佐藤さんは「スポーツが好きで、スポーツを描いたコミックも好きで、自分が感動したコミックのような話を書きたいと思った。サッカーも見るのは好きだが、(両チームあわせて)22人を文章だけで表現するのは難しい。リレーなら4人なので掘り下げて表現できると思ったし、バトンをつないでいくので、コミュニケーションもあるので」という趣旨の話をしていた。
昨日見た佐藤さんが原作者である映画『しゃべれどもしゃべれども』もコミュニケーションがテーマだ。
映画の公式サイトには主要な出演者のコメントも出ているのだが、コミュニケーションという切口から興味あるものが2つある。
松前豊(元プロ野球選手湯河原太一役)
最初、出演者はみんな人見知りでしたが、撮影中にだんだん仲良くなり、最後には4人で机を囲んでいるだけで楽しい豊かな関係が作れました。まるで映画と同じように。
国分太一(今昔亭三つ葉役)
この作品は一人一人の感情がゆっくりと変わっていって、みんないい方向に進む優しい映画です。
改めて、映画を見終わり、今朝のテレビでの佐藤さんのコメントを聴きながら、読み終えた佐藤作品を振り返ってみると、どの作品にも共通することがあることに気がついた。
普通、小説の主人公は一人で、主人公を中心に物語世界も、ストーリーも作られることが多いのだが、佐藤作品は必ず、2人以上の主役級の人物が登場する。
『一瞬の風になれ』では新二と連、『しゃべれどもしゃべれども』では三つ葉と五月、『サマータイム』では進と姉の佳奈、2人にとってともに大切な広一、『黄色い目の魚』では木島悟と村田みのり、『神様がくれた指』ではすりのマッキーこと辻牧夫とタロット占い師の昼間薫、『スローモーション』でも柿本千佐と兄一平と及川周子。
そして、その2人ないし3人の間でのコミュニケーションというものが、いつも作品の中でのテーマになっている。
コミュニケーションといった時、それは、必ずしも喋ることだけではない、『サマータイム』ではピアノが奏でる音楽が、『黄色い目の魚』では、悟が描く絵やデッサンが言葉以上に気持ちを伝えることがある。
それぞれの主要な人物達が、種々のコミュニケーションを通じて、お互いに影響を与えあい、少しずつ変化をしていく。
佐藤作品の繊細さは、その人と人がコミュニケーションを通じて変わっていく様を丹念に描くことによって、表現されているように思う。
このブログの佐藤多佳子さん関連の記事はこちら→アーカイブ:本屋大賞作家佐藤多佳子
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