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2007年6月 8日 (金)

小川洋子著『博士の愛した数式』を読んだ

遅ればせながら、第1回本屋大賞受賞作である小川洋子さんの『博士の愛した数式』(新潮文庫)を読んだ。映画にもなった話題作で、一度読んでみよう、映画も借りてみようと思いながら、そのままになっていた。先週末、書店の文庫コーナーに平積みで置いてあるのが、目について手に取った。

博士の愛した数式 (新潮文庫)
博士の愛した数式 (新潮文庫)

交通事故の後遺症で記憶が80分しか持続しない、もと大学教授の数学者である「博士」、その博士のもとに家政婦として出向く「私」、頭が平らなことから博士に「ルート」と名づけられた私の息子、この3人を中心に物語りは展開する。

80分しか記憶が持続しない博士との関係は、80分離れてしまうとゼロクリアで、振り出しに戻る。朝、博士を訪ねた私は、家政婦として博士とともに過ごす夕方までの間、関係を深めるが、翌日になれば、また振り出しに戻る。毎日、毎日がその繰り返しだ。
ある時、私に小学生の息子がいると知った博士は、母と子は離れているのはよくないと、息子も連れてくるように言い、学校が終わったあと、私の息子ルートは博士に家に来るようになる。ルートは、博士に算数の宿題を教えてもらったり、3人で食事をしたり。
私とルートの親子も、ルートが生まれてきてからずっと母子家庭だったこともあって、祖父のような父のような博士を慕って、博士を落胆させることの無いように気を使う。博士も、その日、その日私達母子に、さりげない心配りをする。
博士と私とルートがお互いを大切にし、思いやる心遣いが、この小説で作者が一番語ろうとしていることなのではないかと思う。

3人の関係をつなぐのは、お互いのさりげない思いやりに加え、博士の世界の言葉といえる数式・数論と博士とルートがともに応援する阪神タイガースであり、かつての阪神のエース背番号28の江夏豊である。

小川さんが、本作を執筆するにあたって取材をした数学者の藤原正彦さんが文庫版の解説を書いているが、これが軽妙洒脱にして、あたたかいまなざしで書かれており、必読である。

映画では、博士を寺尾聰、私を深津絵里が演じている。この週末にDVDを借りて見てみようと思う。

小川洋子さんも、佐藤多佳子さん、上橋菜穂子さんと同じ1962年生まれである。

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