サイモン・シン著『フェルマーの最終定理』(新潮文庫)を読み始める
先週の土曜日、家の近くの書店をとくにあてもなくのぞいてみたら『博士の愛した数学』副読本、小川洋子さん推薦と帯に書いた本が目についた。
内容は、17世紀以降、3世紀以上世界の数学者を悩ませた「フェルマーの最終定理」をイギリス生まれの数学者アンドリュー・ワイルズが1994年に証明するまでの、ノンフィクションだ。
「Xn+Yn=Zn、この方程式はnが2より大きい場合には整数解を持たない」という問題が、17世紀のフランスの数学者ピエール・ド・フェルマーが書き残し、20世紀に至っても世界中の誰も証明出来なかった「フェルマーの最終定理」である。
ちなみに、nが2の場合は、「X2+Y2=Z2」となり、「直角三角形の斜辺の二乗は、他の二辺の二乗の和に等しい」という誰でも中学校で習う「ピタゴラスの定理」になる。nが2から3以上に入れ替わった途端、それを満たす整数でのX,Y,Zの組み合わせは存在しないということをフェルマーは言っており、自分ではそれを証明したと書き残しているが、証明自体は残っていないので、以後3世紀以上、多くの数学者がそれを証明しようと取り組んできた。そして最後にその偉業を成し遂げたのがワイルズ博士である。
今のところ、半分ほど読み終わり、19世紀までの数学者の苦闘の歴史を読み終わった。これから20世紀の取り組みと、いよいよワイルズ博士本人の登場となる。
『博士の愛した数式』には、フェルマーの最終定理そのものは、出てこなかったと思うが、副読本と名づけられているのは、本書の始めの方で、『博士の愛した数式』に出てくる友愛数や完全数についての丁寧でわかりやすい説明があるし、虚数を発見した数学者オイラーの話、素数が暗号にどう使われたかなど、原作や映画で話題としては出てくるけれど、十分説明が加えられなかった人物や話題が掘り下げられているからだろう。
もちろん、本書のテーマである「フェルマーの最終定理」証明に向けての各時代の数学者の生き様も人間臭く面白い。
本書だけで単独で読んでも、ノンフィクションとして楽しめるし、『博士を愛した数式』の原作を読んだり、映画を見た人にとっては、博士と家政婦母子の世界を深みを持たせてくれる貴重な副読本である。
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