フリーペーパー文庫本『ゲドを読む。』を入手、河合隼雄文化庁長官の最後?の対談が掲載されていた
今日、吉祥寺に行った時に入った書店で、児童書コーナーをのぞいてみると、『ゲド戦記』ソフトカバー版が平積みで並べてある。そのとなりに『ゲドを読む。』と題した黒い表紙の文庫本が置かれていた。
手にとって見ると、「前書き」:糸井重里氏、「『ゲド戦記』の愉しみ方」と題したゲド戦記論を人類学者の中沢新一氏、ほかにも河合隼雄文化庁長官(当時)と映画『ゲド戦記』の宮崎吾朗監督の対談など盛りだくさんである。
面白そうだから、買ってみようと裏表紙の値段の印字を探すが見つからない。奥書には、「非売品」とあり、「前書き」をよく読むと「この本は無料です。」と書いてある。
念のため、店員さんに「これは売り物ではないのですか?」と聞いてみると「どうぞ、お持ち下さい」とのことなので、1冊もらってきた。
家に帰ってから、改めてグーグルで検索をしてみると、この本の成りたちがわかった。
発行元は、「ブエナ ビスタ ホーム エンターテイメント」。ディズニーのビデオなどを販売している会社だ。昨年公開されたスタジオジブリのアニメ映画『ゲド戦記』(宮崎吾朗監督)のDVDが、2007年7月4日から「ブエナ ビスタ」から発売されるのに先立って、110万部が印刷され6月6日から書店やDVDの販売店などで無料頒布されていたらしい。表紙の色も、私がもらった黒に加え青、赤、黄色、ピンクの計5色があるらしい。
新手の無料広告本ということのようだ。
(詳しくはこちらをご参照→『ゲドを読む。』の公式サイト)
しかし、内容は値段をつけて販売されている文庫本と比べても遜色はない。中沢論文、河合×宮崎対談以外にも、宮崎駿、河合隼雄、清水真砂子、上橋菜穂子、中村うさぎ、佐藤忠夫といったそうそうたるメンバーの人々が雑誌などの書いたゲド戦記に書いた文章が再録されており、ページ数も200ページに及ぶ。
なかでも、本の最後に再録されている河合隼雄文化庁長官(当時)と宮崎吾朗監督の対談は2006年7月28日に東京・丸の内の文化庁長官室で行われたと書かれている。
河合隼雄氏は、以前から児童文学やファンタジーをよく読まれており、心理学者の視点から児童文学やファンタジーを読み解いた著書も多い。(『子どもの宇宙』岩波新書、『ファンタジーを読む』講談社+α文庫など)
原作は全て読み、映画も見終わった河合文化庁長官は、原作を踏まえ、どういう意図で映像化したのか、しなかったのかを宮崎監督に問いかけながら、映画『ゲド戦記』に対する自らの感想も語っている。
河合長官が脳梗塞で倒れたのは、この対談から1ヵ月もたたない2007年8月17日である。おそらくは、心理学者としての河合隼雄氏の言葉や文章が活字化された最後のものではないだろうか?
河合隼雄ファンで、まだ手に入れられていない方は、1冊手に入れておいてもいいのではないかと思う。
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