報道から再現する河合隼雄さん追悼式の様子
昨年(2006年)8月に脳梗塞で倒れ、今年7月に亡くなった河合隼雄・元文化庁長官の追悼式が、昨日(2007年9月2日)午後1時から京都市の国立京都国際会館で行われた。
各報道機関によれば、小泉純一郎前首相をはじめ約2000人が参列したという。
追悼式の式次第は以下の通り(京都大学ホームページより)
開式
挨拶
京都大学副学長 東山紘久
黙祷
追悼の詞
京都大学総長 尾池和也
文部科学省事務次官 銭谷眞美
国際日本文化研究センター所長 片倉ともこ
日本臨床心理士会会長代行 乾吉佑
故人追憶
哲学者 梅原猛
哲学者 鶴見俊輔
人類学者 中沢新一
献奏
ブラームス『弦楽六重奏曲 第1番変ロ長調』
第一楽章、第二楽章
遺族挨拶
河合俊雄
献花
閉式
各社のニュース報道から、可能な範囲で各参列者の挨拶を再現してみる。
まず、最初の「挨拶」に立ったのが追悼式の代表発起人であり、河合さんの弟子の1人であり臨床心理学者として著作も多い東山紘久京都大学副学長。
「一人の心理学者として最後までカウンセリングを続けた。冗談が好きな人で、失った悲しみは大きい」(共同)
「『あの世もなかなかおつなものや』と言いながら、起きあがると期待していたが、かなわなかった。迷える人々のために、あの世でもカウンセリングをしておられるだろう」(読売)
「追悼の詞」
最初に「追悼の詞」を述べたのは同じ京都大学の尾池総長。
「私はホラを吹くだけと違(ちご)て、フルートも吹く」と言われたというエピソードを紹介。(毎日)
さらに、梅原猛さんが初代、河合隼雄が2代め所長を務めた京都の国際日本文化研究センターの片倉ともこ所長。
「『夢の話は向こうでするわ。あんたもはよ来なはれ』と言わんばかりに早く逝ってしまわれた」(読売)
「故人追憶」
哲学者梅原猛さんの言葉は、様々な表現で各社で取り上げられている。
「友情の厚さに、涙を流さんばかりでした。学者としても優れていたが、実践家としても素晴らしかった」(朝日)
「学生紛争の時、学生と話をするのを楽しんでいた」(毎日)
「天皇が権力、武力を持たない特異な構造が日本の特徴とする『中空の理論』はぐれた着想」(日経)
「私が別れの言葉を言うのに驚いている。35年前にエレベーターの中で夢について研究したらと話し、そのことを忘れずに著書を出された。知的好奇心の素晴らしさにびっくりした」(京都新聞)
「私が死んだ時の葬儀委員長は河合さんに、と思っていたのに、私がお別れの言葉を言わなければならないとは。人の百生分、千生分も働いた。ゆっくりとお休みください」(読売)
「ユングの学説と東洋の文化を結び付け、河合心理学を発展させた業績は大きい。普通の人の百生分、千生分(の人生を)働いたので、ゆっくりお休みください」(共同)
続いて、哲学者の鶴見俊輔さん
「米大陸先住民と笛でうち解け合う魂の自由さが、学問をたぐいまれなものにしている」(日経)
「魂の自由な動きが、この人の学問をたぐいまれなものにした」(毎日)
「この人に会うことができて京都に来てよかったと思った」(読売)
「あなたに会うことができてよかった」(朝日)
3人めは人類学者の中沢新一さん
「神様の前で度の過ぎた冗談を言って、この世に差し戻されたのか、今でも先生の笑い声が自分のなかで響いている」(日経)
河合さんが倒れた昨年8月17日に対談する約束だったことを明かし、「夢の中で対話を繰り返している。今でも先生の笑い声を感じる」(読売)
フルートを自ら奏でるなど音楽好きの故人の要望もあって、ブラームスの弦楽六重奏の献奏が行われたのち、最後に遺族代表として、ご長男で京都大学教授の河合俊雄さんが挨拶。
「父にとっても、(倒れる)予兆を感じていた様子はなかった。意識が戻らず、誠に無念。河合はみなさんにとって父であり、河合隼雄という物語の中で生き続けている」(読売)
「庶民的な父だったが、華やかな式を喜んでいると思う」(日経、共同)
冒頭の東山京大副学長の言葉のように、もう一度、夢から覚めたように、垣間見たあの世のことを語ってくれるのではないかと、願っていたが、叶わぬこととなってしまった。
私個人としては、買い込んだ未読の河合隼雄さんの著作を、じっくり読んで、冥福を祈ることにしたい。
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