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2007年9月13日 (木)

河合隼雄著『心にある癒す力治る力』を読み終わる

先日読み終わった河合隼雄著『閉ざされた心との対話』に続く「心理療法の現場から(下)」とサブタイトルのついた『心にある癒す力治る力』(講談社)を読み終わった。

心にある癒す力治る力―心理療法の現場から〈下〉 (心理療法の現場から (下))
心にある癒す力治る力―心理療法の現場から〈下〉 (心理療法の現場から (下))

下巻でも河合隼雄さんと8人の臨床心理士、精神科医、家庭裁判所の調査員など、心を病んだ人たちと対峙している人たちの対談である。
上巻にあたる『閉ざされた心との対話』が主に、小学生から大学生と向き合っているカウンセラー、臨床心理士が中心だったの対し、下巻では、カウンセリングの手法(夢分析、箱庭療法等)の特色のあるカウンセラー、家庭裁判所で少年少女事件の調査を行うなかでカウンセリングに近い仕事をしている調査員、企業の社員相手にカウンセリングを行う産業臨床心理士など、切り口が多彩だ。

どれも興味深い話が多いが、自分が企業で働くサラリーマンということもあり、第六章「働きざかりの心の病」で登場する箕輪尚子さんの話は、とりわけ興味深く読んだ。

箕輪さんは、インタビュー時(1999年)に時点で、電気機器メーカーA社、通信事業会社B社、化学メーカーC社の3社に産業臨床心理士としてかかわっているが、3社の企業風土・文化が全く違い、カウンセリングの対象になる患者の病気の種類、発症の契機が全く違うのだという。

A社は個性が大事にされていて、一人一人が社会的使命感をもって働いているようなところがあります。新規の患者数は年に20人くらいです。
一方、B社は個人よりも組織が優先している感じ。これはこれで、利益が安定しているとか、簡単に解雇されないとか、それなりにいい面もあるんですが、人間的な面では抑えられているところがありますから、自分の感情を体験できず徐々に無気力になっていく。症状としては、遁走とか、会社に来られなくなるというのが多く、年7、80人は患者が出てきます。
C社では上と下の信頼関係がしっかりしていて、下が上に猜疑心がなくて言いたいことが言える。だからほとんど患者さんが出ず、年にせいぜい3人くらいです。
(『心にある癒す力治る力』141~142ページ)

A社の場合、会社に入ったときから、自分で考えるとか、創造するということのトレーニングをされてくるんですが、B社の場合は、そうしないことがいいことで、自分で発想したらいかん、上から言われたとおりにやることがいいことだと言われてきましたから、いまさら自分で考えろといわれても困るんです。
(『心にある癒す力治る力』142ページ)

会社別の症状の違いについての河合さんの問いにには、次のように答えている。

A社の場合ですと、自分の仕事が上司に認められないのではないか、自分の存在が会社に大事に思われていないのではないかという感じで出てくるんです。
B社の場合は、本人たちもよくわからない。だから、上司に連れられてくることが多い。会社に来ない、どうしたのかと聴いても、「よくわからんないけど調子が悪い」という感じです。自分というものがしっかりしていない。
C社の場合、みんな自由気ままに振る舞っていますからすごく気楽ですが、若いときにしっかりしたしつけがないので、自分勝手に振る舞ってきた人は、中高年になったとき、誰も言うことを聞いてくれなくなって浮いてしまう。
このように、企業の組織の風土と文化というものと、その人のパーソナリティとの関連で、病気が発症してくる傾向があると思います。
(『心にある癒す力治る力』143ページ)

終身雇用制が崩れつつある日本の企業社会だが、とはいえ、一生の間に、いくつもの企業を渡り歩くわけにもいかない。
たった3つの会社の比較でも、これだけ風土・文化に違いがあるのだから、就職の時に、いかに自分にあった職場を見つけるかが大切かということを改めて感じる。
一生懸命探してて、意中の会社・職場に巡り会い、めでたく採用となっても、その会社が別の会社に買収されたりすることも、珍しいことではなくなったので、意中の職場に採用されただけで、安心できないところが、つらいところではある。
それでも、社会人としての最初の訓練を受ける場が、どこになるかは、その後の人生に大きく影響を与えるだろう。

現在は、この対談からすでに8年が過ぎ、サラリーマンを巡る状況は厳しくなる一方だ。B社のような会社で、考える訓練をされなかった社員も、いやおうなく考えなければならなくなってきている。そういった時代の変化が、「メンタルヘルス・マネジメント検定」という資格を生み出すことになったのだと思う。生きにくい時代になったものである。

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