河合隼雄著『閉ざされた心との対話』を読み終わる
今年(2007年)の7月に亡くなった河合隼雄さんの著書で最近買い込んだ3冊の内の1冊、『閉ざされた心との対話』(講談社)を読み終わった。
サブタイトルに「心理療法の現場から(上)」とあるように、『心にある癒す力治る力』と題した下巻がある。
内容は河合隼雄さんと各地でカウンセリングの仕事をしている臨床心理士の人との対談で、河合さんが聞き手になって、それぞれのカウンセラーの経験を語ってもらうというものだ。初版が発行されたのが1999年5月。対談自体は1998年4月から翌1999年1月にかけて行われ、講談社の月刊誌「本」にそのダイジェストが連載されていたという。
上巻にあたる『閉ざされた心との対話』には9人のカウンセラーとの対談が収められていて、そのうちスクールカウンセラーとして小中高生やや大学での学生相談などを行っている。(9人の中には、以前このブログで紹介した『思春期をめぐる冒険 心理療法と村上春樹の世界』(新潮文庫)の著者である岩宮恵子さんも含まれている)
9人それぞれに、感動的な話、なるほどそうかと思わせる話があるが、そのうちの一つを紹介しておきたい。
9人のカウンセラーの最後の登場する大学の学生相談室のカウンセラーをしている高石恭子さんという方のコメントである。高石さんは、たまたま私と同じ1960年生まれである。
学生相談室なので、相談の内容は必ずしもメンタルなことと限定しているわけではないようだ。高石さんのカウンセリングの際のモットーは「間口は広く奥行きは深く」ということ語っているが、中には”「顔を洗って出直しておいで」と言いたくなるような学生もときどき来ます”とのことなのだが、最後に
ただ、気をつけているのは、どんな切りだし方であっても、それが相談室にもちこまれる限り、背後には彼らの成長したい欲求が動いていると思うんです。人の悩みには軽重はない、という姿勢を忘れないように、いつも肝に銘じています。
(『閉ざされた心との対話』224~225ページ)
という言葉で、締めくくられていた。
親として、自分の子供の話に耳を傾ける時に、このような真摯な姿勢で聞こうとしているだろうかと、少し反省した締めくくりの言葉だった。
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