こどものターミナルケアを語る細谷亮太著『小児病棟の四季』(岩波現代文庫)
細谷亮太という小児科のお医者さんが書いた『小児病棟の四季』(岩波現代文庫)を読んでいる。
細谷先生は、1948年生まれ。東北大学医学部を卒業し、聖路加国際病院に小児科医として勤めている。妻がTVで細谷先生の話を聞き、素晴らしい話をしていたので、是非、書いたものを読みたいというので、昨日、「平山郁夫展」を見た帰り、竹橋から神保町まで歩き、三省堂書店の本店で、細谷先生の本を3冊買ってきた。そのうちの1冊がこの『小児病棟の四季』である。
もともと、1998年に岩波書店からシリーズ「生きる」の1冊として出された『いのちを見つめて』が、2002年に文庫化された際、再編集・改題されたものである。
細谷先生は、小児ガンが専門ということもあって、治療をしても助かる見込みのない終末期の患者の残り少ない人生(いのち)を、最期の日を迎えるまで、少しでも痛みを少なくし、その人らしく充実して過ごせるように環境を整える終末期医療(ターミナルケア)も手がけている。
専門の小児ガン以外にも、現在の医学では治療できない数々の難病に冒されたこどもたちが、細谷先生のもとに託される。本人や家族と病状について真摯に話し合い、残り少ない日々を病院で過ごすか、家族とともに在宅で過ごすかも、本人と家族の選択である。重たく辛い現実を受け入れ、けなげに生きるこどもとそれを支える親や兄弟・姉妹。それを暖かいまなざしで描いたのが、本書である。ちょっとした描写に、思わずぐっときて目頭が熱くなるところもある。
親はこどもに「勉強していい成績を取ってくれ」「いい高校、大学に入ってくれ」とどうしても期待してしまう。しかし、現実は期待通りにはいかないことの方がほとんどで、親としては文句の一つも言いたくなってしまう。しかし、それも健康であればこそ。人生をスタートして間もない時期に、人生を終えなければならなかったこどもたちがいることを思うと、こどもが健康でいてくれるだけで、ありがたいと思わなければならないのだろうと、本書を読みながら自戒している。
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