根本橘夫著『なぜ自信が持てないのか-自己価値感の心理学-』(PHP新書)を読み終わる
PHP新書の2007年10月の新刊のうちの1冊根本橘夫著『なぜ自信が持てないのか』を読み終わった。サブタイトルが「自己価値感の心理学」。
社会的な成功の如何に関わらず、自分の人生を納得し楽しんで生きている人がいる一方で、周りからみてどんなに成功していようが、自分の生き方、存在そのものに自信が持てない人がいる。前者が「自己価値感」を感じている人であり、後者が「自己無価値感」に悩む人である。
なぜ、「自己価値感」を持てる人と「自己無価値感」に苛まれる人に分かれてしまうのか、どこに原因があるのかを解き明かし、自己無価値感に苦しむ人に、どうやればそこから抜け出せるのかのヒントについても、語りかけようとしている。
結論から言えば、成長する過程で親の無条件の愛情の元で育てられれば、自分が親から認められ受け入れられていると感じ、自分は価値のある人間だと「自己価値感」が育まれ、親の十分な愛情を感じられない環境、あるいは条件付きの愛情しか与えられない環境で育つと十分な「自己価値感」を感じられず、「自己無価値感」に悩まされるというものである。
突き詰めれば、子育てをする親の側の子供への接し方次第で、「自己価値感」を持てる子になるか、「自己無価値感」に悩まされる子になるかが決まるということであり、親に対する警鐘を鳴らす本でもある。
このような考え方自体は、現代の心理学の基本にある考え方なので目新しいわけではないが、本書では、現代社会、特にバブル経済崩壊後の日本が、自己価値感を獲得しにくい時代と位置づけて、その中で、自分自身が自らを分析した上で、どう生きるべきか、親としてどう子供に接したらよいかを整理している。
本書の章立てをみるとその流れがよくわかるので、紹介しておく。
『なぜ自信が持てないのか』(PHP新書)
序章 「自分の価値どう感じるか
第1章 自信が持てる人、持てない人
第2章 自己価値感はどのように育つのか
第3章 あなたが自己無価値感に苦しむ理由
第4章 無価値感に翻弄される人々の病理
第5章 自己価値感をおびやかす現代社会
第6章 自己価値感を修復する実践法
おそらく、現代の日本に生きている以上、100%「自己価値感」のみを感じ「自己無価値感」を感じたことがない人などいないと思う。常に「自己価値感」と「自己無価値感」の間で揺れ動くのが人の日常だろう。
大切なのは、なぜ自分が「自己無価値感」に悩まされるのかの原因を認識し、自分が親として大人として子供や周りの人々が「自己価値感」を感じられるような働きかけをすることだろう。
一方、そうは言っても、この社会に生きる多くの人の中には、自分の「自己無価値感」を補うために、周りの人々を巻き込み振り回している人もたくさんいる。現実には、そのような人たちすべてが「自己価値感」を感じるように働きかけるのは無理だ。神様や聖人君子でない我々一般人は、どのような人と親しく接していくかを考える時、なるべく多く「自己価値感」を感じている人ということにならざるを得ないと思う。
多くの人に読んでもらい、自らの生き方を振り返るきっかけにしてほしい本である。
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