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2007年12月20日 (木)

講談社選書メチエ『加耶と倭』を読む

韓国の慶北大学朴天秀(パク・チョンス)副教授が講談社選書メチエから古代の日韓関係をテーマにした『加耶(かや)と倭』という本を出版した。2ヵ月ほど前から書店で並んでいるのが気になっていたが、10日ほど前に買い込んで、少しずつ読み、一部斜め読みしたものの読み終えた。

加耶と倭 韓半島と日本列島の考古学 (講談社選書メチエ 398)
加耶と倭 韓半島と日本列島の考古学 (講談社選書メチエ 398)

テーマは4世紀から6世紀頃までの朝鮮半島(韓半島)と日本の関係を、日韓の古墳など遺跡の発掘物を中心とした考古学の成果から再考するというものである。

中国大陸では、後漢が滅び、魏・呉・蜀の三国分立から魏の後を継いだ晋(西晋)による統一もつかの間、そ北方民族の侵入により南北朝時代が到来していた。隋による統一は6世紀末である。
朝鮮半島では、北部に高句麗、朝鮮半島南部の東に新羅、西に百済、その間に挟まれて日本ではかつて「任那(みまな)」と呼ばれていた「加耶」諸国がある。

一方、「倭」と呼ばれた当時の日本は、卑弥呼の邪馬台国の後、巨大古墳が造営された時代で古墳時代である。日本書紀によれば、応神天皇、仁徳天皇、雄略天皇などが登場した時代であり「宋書」に登場する「倭の五王」の時代でもある。その後、5世紀後半には吉備地方の反乱、5世紀末から6世紀初めにかけ、武烈天皇の時代に大伴金村による平群氏掃討など、権力闘争が続き、さらに武烈天皇には皇子がなかったことから皇統断絶の危機となり、北陸から継体天皇が迎えられる。継体即位の後には、九州で筑紫国造磐井の乱が起きる。

私が高校時代に使った日本史の教科書(山川出版社『詳説日本史』)では、大和朝廷が朝鮮半島で勢力下に置き、拠点としていたのが任那(みまな)であり、6世紀初めに大伴金村が百済へ任那の四県割譲を認めたことが物部氏にとがめられ、失脚したと書かれていた。

この時期の日本の歴史は、日本書紀に書かれているだけのものについては、神話・伝説の扱いで歴史の教科書でキチンと教えられることはない。
個々の事件は、それぞれドラマがあるのだが、この2世紀ほどの期間を通して見たとき、歴史の大きな枠組みや個々の事件が起きる必然性を感じられず、納得感が得られないというのが、私の偽らざる思いであった。

その思いに多少なりとも、回答を与えてくれたのが、納得できる仮説を提示してくれたのが朴副教授の『加耶と倭』である。
朴副教授は、この時期の韓国と日本の古墳・遺跡での出土品を丹念に検証し、当時の韓国と日本の政治勢力の間に文物の交流がかなりの範囲にわたり行われていたことを示している。韓国側から日本に移入れたものは、馬具や鉄器類、日本から韓国側へ移出されたものは、ヒスイの勾玉(まがたま)などである。
韓国側から移出物は時期により、加耶諸国(当初は金官加耶、後に大加耶)、百済、新羅と主役が交代する。これは、「倭」(日本)への交通路を誰が抑えたかによって変化しているのではないかと予測する。

当時の朝鮮半島南部は、百済、新羅に挟まれなんとか生き残りを図ろうとする加耶(主要6カ国の連合体ではあったものの統一には至らなかった)と加耶諸国の併呑を東西から狙う、百済・新羅という構図だったであろう。
一方、日本は、ヤマト政権による日本列島の統一は道半ばであり、吉備や九州にはヤマト政権としても侮れない地方勢力が存在した。

現在でこそ、国境線が引かれ、日本と韓国という別の国になっているが、当時の九州北部と朝鮮半島南部の勢力間に現在のような国家意識はなかっただろう。各地方勢力の首長たちにとっては、誰と組めば自分たちのムラやクニにとって有利かということが最も重要な判断軸であったろう。

加耶諸国は生き残りのため、九州勢力と連合した可能性は十分にあるし、たとえば、日本の側が軍事支援をした見かえりに、貴重な文物を贈られるこもあったに違いない。
また、日本書紀に見える平群氏や大伴氏の失脚のように、ヤマト政権内部でも、主要豪族による権力争いが続いていただろう。たとえば、その一方が新羅と組み、他方は百済と組むということもあったろう。

また、朴副教授は、九州勢力は百済とヤマト政権に両属していたのではないかともいう。百済が加耶を攻める際に九州勢力の力を借りたのではないかとも言う。

いずれも、それらの仮説を裏付ける出土物があり、当時の政治情勢とあわせて考えると、自分なりの時代の枠組みが組み立てられるような気がする。
週末にでも、ポイントを整理して、もう少し、イメージを固められればと思っている。

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