勝間和代著『効率が10倍アップする新・知的生産術』を読み終わる
時々読んでいる将棋に上野裕和五段のブログ「ちゅう太ブログ」で以前紹介されていた勝間和代さんの『効率が10倍アップする新・知的生産術』が職場近くの行きつけの書店で並べてあったので、さっそく買って読んでみた。
効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法
この手の知的生産術についての本はあたりはずれがあるものが、この本は間違いなく当たりである。
著者が語るのは、いかに効率的に重要な情報をインプットし、それをもとにアウトプットしていくかである。
著者の勝間和代さんは、かつて19歳で公認会計士2次試験に合格、外資系会計事務所、コンサルティングファーム、外資系銀行、外資系証券会社に勤め、現在は経済評論家として独立している才媛である。
著者は情報のインプット・アウトプットについて、自らのノウハウを公開してくれているが、読者として自らの経験も踏まえて、納得した部分をいくつか紹介しておきたい。
まず、インプットの際に情報洪水の中から、本当に重要な本質的なものを見極めるために必要な技術の第一番めに「フレームワーク力」をあげている。
枠組み作り、構造化とでもいおうか。情報を分析してする自分なりの切り口・座標軸を持ち、それに従ってインプットされた情報を分類・整理し、意味づけをして、自分なりにわかりやすく再構成することといえるかもしれない。
このような作業は、日常の仕事の際にやっていると思うが、それを「フレームワーク力」という視点で考えたことはなかった。
彼女は勤めたコンサルティング会社では、フレームワームのない話は、雑談でしかないと相手にされなかったそうだ。
また、人脈作り技術について語ったところでは、良い情報を集めようと思ったら、見返りを期待せず、まず自分が良質な情報を発信し続けることと言っている。著者の言葉で言えば「情報GIVE5乗の法則」である。「GIVE&TAKE」ではなく「GIVE&GIVE&GIVE&GIVE&GIVE」。
かつて20代の終わりから30代の始めにかけ、私も業界調査のレポートを書く仕事をした時期がある。その当時、高度成長時代に始まったとある新興業界について、従来の見方と違う自分なりの見方をまとめたレポートを書いたところ、業界でもそれなりに認められて、その業界の会社の人が話を聞きに来てくれるようになった。
そのような機会に、こちらはもちろん自説を説明するが、その合間には先方の会社の話も聞く。相手も、自分の業界のことを理解している人と認めてくれて
それなりに答えてくれる。そうすると、こちらから出向かなくても、その業界の各社の情報が自然と集まってきて、私はその業界についてますます詳しくなった。
このとき、情報はあるまとまりができ、それが一定規模を超えると自己増殖するのだなと、実感した。
その根底にあるものは、まさにまず自らが良質の情報を発信するということである。
また、この著者の見解のユニークなところは、インプット・アウトプットに技術に加え、それを支えるものとして正しい生活習慣をあげ、喫煙をやめ酒を控えること、よく寝ること、体力をつけること、良い食生活を勧めていることだ。この分野について、類書で触れられているのをあまりみたことはない。
しかし、知的生産を主体である脳も体の一部であり、健康で気力・体力の充実していなければ、脳も十分に働かないと言うことだろう。
ここにあげた3点以外にも、さまざまはヒントにあふれている。自分にあった、ヒントを探し出すのもいいのではないだろうか。
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