先崎学八段の『山手線内回りのゲリラ』を読む
今日、仕事の帰り行きつけの書店の将棋のコーナーに行くと、昨年(2007年)末に発売されたばかりの将棋の先崎学八段のエッセイ『山手線内回りのゲリラ』が並んでいたので、さっそく買い求め、読んだ。
先崎八段は週刊文春にエッセイ『先崎学の浮いたり沈んだり』を連載しており、すでに7年になるという。
以前、職場の同僚が私が将棋好きなのを知ると、週刊文春にプロ棋士の連載があるのを知っているか、と言っていたことがあった。私は週刊誌というものをほとんど読まないので、その連載記事は一度も読んだことはなかったが『将棋世界』に連載されている軽妙洒脱な文章は読んでいたので、さぞおもしろいに違いないとは思っていた。
週刊文春の連載からすでに2冊本になっており、これが3冊目ということ。
主に将棋界の話題が中心だが、中には、囲碁の棋士である先崎夫人を交えた囲碁の棋士との交流、ファンである歌手の中島みゆきを巡る話題など多岐にわたる。
昨年11月になくなった真部一男九段邸で師匠である米長永世棋聖と真部九段の囲碁の話も「真部邸の惨劇」という物々しい題で語られている。(この話題は『将棋世界』2008年2月号の真部九段追悼記事の中で、米長永世棋聖自身も書いており、両方読み比べるのもおもしろい)
私が読んでうれしかったのは、私が応援している郷田真隆九段の話が何ヵ所か出てきて、人柄がうかがえるような郷田九段の発言が取り上げられていたことである。
将棋が好きな方、将棋ファンの方は一度読んでみるとよいと思う。
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コメント
拓庵さん、おはようございます。ご無沙汰しております。また、古い記事にコメントをつけまして恐れ入ります。
先崎八段の「山手線内回りのゲリラ」、遅ればせながら私も読みました。
郷田九段の話、というのは、P.62~65の「天才の死と『文学の毒』」のことかと思いますが、一読して、ああ、いかにも郷田九段らしいなあ、と思いました。お目にかかったこともない人のことなのに、「いかにも郷田九段らしい」とは我ながら変だとは思いますが、そこは先崎八段の筆力の為せる技なのでしょう(実に達者なものだと思います)。何だか、「自分でいいと思う将棋が指せればそれでいいじゃないか」という、郷田九段の声が聞こえて来そうです。いや、先生、もっと欲を出して下さいよ、と勝手に私は云いそうになるのですが・・・
やはり「郷田九段」ではなく「郷田名人」「郷田竜王」(以下略)のように、タイトル名で呼んでみたい。
ところで、先崎八段のこの本は、「山手線内回りのゲリラ」というタイトルのせいか、私が買い求めた書店では、柳美里の「山手線内回り」の横に並べられていました。
投稿: ドクトル・ジバコ | 2008年2月15日 (金) 06時41分
ドクトル・ジバコさん、コメントありがとうございました。
「天才の死と『文学の毒』」での、郷田九段のコメントは、まさしく、郷田九段の将棋に関する思いを表しているような気がしますね。
「そんな素晴らしい人が、なんで賞ごときにそんなにこだわったんだ。作家なら、いい小説かどうか自分でわかるだろう。自分でいい小説だと思うものが書ければそれでいいじゃないか」(『山手線内回りのゲリラ』65ページ)、賞をタイトルに、作家を棋士に、小説を将棋や棋譜に替えるとそのまま、郷田九段の心意気かもしれません。
しかし、最近、居飛車一辺倒だった郷田九段が順位戦で振り飛車などこれまではあまり指していない戦法に果敢にチャレンジしている姿を見ると、昨年の名人戦での惜敗で何か心境の変化があったのではないかという気もします。
当面、タイトル挑戦にもっとも近いのは挑戦者決定トーナメントに駒を進めた棋聖戦でしょう。8人で争うトーメント。あと3つ勝って、佐藤棋聖への挑戦者となり、6年間預けていた棋聖位を取り返してほしいと思っています。
余談ですが、最初の「こんがらがった割り勘」、先崎八段、中田七段、佐藤棋聖、郷田九段の4人で飲みに行き、誰が勘定を払うかで気をもんでいる時に、郷田九段が「じゃ割り勘で」と言った場面も、なんとなくユーモラスで好きです。
投稿: 拓庵 | 2008年2月16日 (土) 17時25分