上橋菜穂子著『神の守り人(上)来訪編』、『神の守り人(下)期帰還編』を読み終わる
上橋菜穂子著『神の守り人(上)来訪編』、『神の守り人(下)期帰還編』の2冊をようやく読み終わった。いつもながら、この作者の物語を作る力量には驚かされる。
著者の「守り人&旅人」シリーズの5冊め、6冊目となる今回の主人公はシリーズの主役女用心棒のバルサ、そしてバルサに寄り添う幼なじみの呪術師タンダ。
恐ろしい出来事で母を亡くしたロタ王国の少女アスラとその兄チキサの2人はだまされて、新ヨゴ皇国の人身売買の組織に売られそうになるが、アスラの持つ不思議な力で難を逃れる。しかし、人買い商人とは別に、ロタ国から2人を追ってきた者たちがいる。たまたま、宿で2人と一緒になったバルサとタンダ。さらわれようとした2人を助けようとして、バルサとアスラは逃げだし、タンダとチキサは追っ手に捕らえられる…。
こうして、手に汗握る冒険譚が始まるが、今回はロタ王国の建国にまつわる言い伝え、ロタ王国の一触即発の政治状況、それらを背景にしたスケールの大きな謀(はかりごと)が巡らされている。読み進むうちに、少しずつ、そのからくりが明らかになっていく時のワクワク感は、「守り人&旅人」シリーズならではである。
さらに、今後のシリーズのストーリー展開の伏線として、前作の『虚空に旅人』でも登場した海の南のタルシュ帝国の存在感も語られている。
また、作中、ロタ王国のヨーサムは、隣国サンガル王国の新王即位の儀式に呼ばれて国を弟のイーハンに託して旅立ち、国を留守にするが、これは前作『虚空の旅人』で新ヨゴの皇太子チャグムが呼ばれた式典と同じ式典のはずだ。
次の『蒼路の旅人』が待ち遠しい。
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