松岡正剛氏の著作と巡りあう
久しぶりの読み応えのある作者に巡りあった。先週金曜日(2008年3月14日)、仕事の帰りによく寄る書店に立ち寄ると、新刊のコーナーに『物語編集力』(ダイヤモンド社)と一風変わったいうタイトルの本があった。
一年ほど前に一生懸命読んだ松村由利子さんの短歌エッセイ『物語のはじまり』を思い出す。
『物語編集力』の監修者は松岡正剛と書かれている。どこかで見た名前だ。そういえば、先々週、熱を出した会社を休んだ時に読んだ成毛眞著『本は10冊同時に読め』(三笠書房知的生き方文庫)の中で、著者の成毛さんが、「私が参考にする書評家」として取り上げていたのが、松岡正剛さんであった。
『物語編集力』という本は、松岡さんが主催するイシス編集学校で学んだ人たちが綴った3000字の物語のうちの秀作を紹介しながら、イシス編集学校の考え方を紹介する本なのだが、巷にゴマンとある薄っぺらな「小説の書き方」のようなノウハウ本ではない。
これまでの長い人類・社会の歴史の中で育まれてきた神話や伝説に共通するものを取り出し、それを書き手が、時代や自分の感性に合わせて、作りかえ、語り直すことで、新たな物語を作ることができるという考え方である。
私は『物語編集力』という発する磁力のようなものに惹かれ、数行目を通しただけで買った。
家に帰って調べてみると、松岡正剛という人はとてつもない人のようである。成毛眞さんは『本は10冊同時に読め』の中で、「知の巨人」と評している。ネットに「松岡正剛の千夜千冊」という書評サイトを開いていて、2008年3月17日現在1227夜となっており、1144夜までが、加筆され7冊の書評全集として発売されている。
松岡さんは、編集というものを単に本や雑誌の編集という狭い範囲で捕らえるのではなく、我々の日常の知的な営みは、全て編集であるという考え方をとっている。
種々の情報を集め、整理して一つの意味を持つつながりある「もの」としてまとめていく。こうした作業は全て「編集」ととらえている。スピーチをしたり、手紙を書いたり、スケッチしたり、研究開発したり、あらゆる事が編集だと言っている。
彼自身の言葉で言えば、編集とは「新しい関係性を発見していくこと」ということである。
私は、これまでなんとはなしに、自分がぼんやりと考え、行ってきたことに、「編集」という言葉がぴったりはまった気がして、すっかり「松岡イズム」のとりことなり、昨日、今日といくつかの書店を回り、入手可能な松岡さんの著作を4冊購入した。
知の編集工学 (朝日文庫)
とりあえず、最初は『17歳のための世界と日本の見方』(春秋社)を読んでいる。
買いそろえた5冊を早く読み上げ、松岡式「編集」術を会得したいと考えている。
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