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2008年4月 4日 (金)

次々と街の本屋が姿を消す背景にあるものを考える

4月に入って、私が通勤で乗り降りする駅前にある小さな書店が店を閉めた。老夫婦と思われる2人でやっていた駅前の寂れた商店街の中の小さな街の本屋だった。

特に本を買う当てがなくても、駅の出口から徒歩1分の場所にあるその書店に、週2、3回は必ず寄っていた私にとっては、子どもの頃、小学校の帰り道に必ずあった駄菓子屋が急に閉店になったような気分である。
小さい店の良さは、どこに何が置かれているかがすぐ分かることで、パソコン関係の雑誌や日本将棋連盟の月刊誌『将棋世界』などは、よくその店で買っていた。

私が今住んでいる家に引っ越してきたのは、2001年6月。引っ越してきた時、我が家の回りの生活圏とも言える範囲の中に、大小の書店が11店舗あった。しかし、現在までの約7年の間に、約半分の6店舗に減ってしまった。特に、この1年は顕著で、駅前の老夫婦の書店もあわせ3店舗が店を閉めた。確かに、閉店になった店は、利用する側から見れば、小さな店であったり、品揃えに工夫が感じらなかったり、幹線道路沿いにありながら駐車スペースがなかったりという店が大半だが、中にはそこそこの店のスペースと品揃えがあり、駐車スペースもあり、近くには大規模マンションもあるチェーン店の店の閉店もあった。

アルメディアという出版社に調べでは、日本の書店数は、2001年の約21000店から2007年5月には17000店ほどに減っているとのことである。

理由はいくつもあげられると思うが、

①まず、本そのものが読まれなくなった(=需要の減少)ということがあるだろう。少子化で、子どもの数が減っていること、本以外の娯楽(TVゲームやインターネット等)の普及なが理由と言えるだろう。
我が家にも3人子どもがいるが、ほとんど本を読まない。妻は、子どもたちが小さい時、懸命に絵本の読み聞かせをしたが、結局誰も本好きな子どもに育たなかった。
父親である私が一番本にお金を使っている。私が児童書の名作である上橋菜穂子さんの『守り人&旅人』シリーズなどを一生懸命読んでいるのに、子どもの方は、もうすぐ成人を迎える長女が一時ハリー・ポッターを読んでいたくらい。子どもたちが買う書籍類はせいぜいコミックである。親としては、この時期にこの本を読むといいのだけれどと思う本はたくさんあるのだが、人に押しつけられた本を読む苦痛も分かっているだけに、あとは、本人たちが必要になれば読むだろうと待つしかないと半ば諦めている。

②もうひとつは流通経路の変化である。今回、閉店した老夫婦の本屋の隣には、コンビニエンスストアがあり、雑誌もかなり置かれている。かつて、街の小さな本屋にとって雑誌が主力の販売商品だったに違いなく、コンビニの出店増は、マイナス材料に違いない。
さらにコンビニの後から登場してきたアマゾンなどのネット書店にも顧客を取られたことは容易に想像できる。私自身はネット通販をたびたび利用するが、家電やパソコン関連が中心で、本はできれば、書店で現物を見て買いたいと思っている。ネットを利用するのは、書店に現物がない場合が中心である。

③最後は、書店という業態内でのパイの取り合いである。全国に名をとどろかす大手書店は、大型店舗を出店を競っており、東京のターミナル駅近辺や全国主要都市には大型書店がずいぶん増えた。大型書店は、品揃えが充実していて、ほしい本を探すのには便利だが、そんな書店ばかりが増えたしわ寄せを食って、街の小さな本屋が消えてしまうのは、「本読み」には決してうれしいことではないと思う。

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コメント

小さな本屋さんがある町、というのは本当の意味で豊かな町なのだ、と思います。
そして、その本屋さんの棚が、まるで友達の家の書棚みたいに「人柄」「趣味」が感じられるものだったら、言うことなしです。

先日、仕事で京都へ行ったとき、詩歌の本を多く置いていることで知られる「三月書房」というところに初めて立ち寄りました。思ったよりも小さなたたずまいで、ちょっとがっかりしたのですが、棚を見てそんな気持ちはどこかへ吹き飛んでしまいました! 「ああ、ここの店主はことばに関する本が好きなんだなぁ……おおっ、食べもの関係も充実している!」と嬉しくなり、ついたくさん買い込んでしまいました(宅急便で送りました……)。

投稿: まつむらゆりこ | 2008年4月 5日 (土) 11時24分

まつむらさん、コメントありがとうございました。

どんな店であれ、その町に書店があるということは、それだけで町の文化でありその町のゆとりの現れではないかという気がします。

まして、まつむらさんが京都で訪ねた三月書房のような、店主が本を選んでいる時の息づかいまで聞こえてきそうな品揃えの本屋さんを見つけるとうれしくなりますね。

出版文化がすたれないよう、せめて自分だけは本を買い続けようと思います。

投稿: 拓庵 | 2008年4月 5日 (土) 12時36分

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