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2008年4月24日 (木)

内田樹著『街場の現代思想』で語られる「結婚」について

内田樹さんの『街場の現代思想』(文春文庫)を読み終わる。独特の毒気を持った鋭い切り口の語りは、なかなか他の評論家や作家にはないものである。

街場の現代思想 (文春文庫)

この本の後半7割ほどは、人生相談風に、最初に読者などからの問いかけがあり、それに内田先生が答えるという形式になっており、テーマは仕事、結婚、離婚、学歴等多岐にわたる。

その中で、結婚をテーマにした論説は、逆説的であるけれど、真実をついている気もするので、紹介しておく。

結婚と恋愛ではプレイヤーに求められる人間的資質がまったく違う。恋愛に必要なのは「快楽を享受し、快楽を増進できる能力」であり、結婚に必要なのは「不快に耐え、不快を減じる能力」なのである。(150ページ)

人類が再生産を維持するために必要な資質は「快楽を享受する能力」ではない。そうではなくて、「不快に耐え、不快を快楽に読み替えてしまう自己詐術の能力」なのである。その能力のある個体だけがそのDNAを次代に遺すことができる。そしてその淘汰圧耐えて生き残った人間を「勝者」とみなすように人類学的にプログラムされているのである。
その「勝ち負け」の判断は、私たちの側の自己決定で、どうこうできるものではない。(152~153ページ)

自分を理解してくれる人間や共感できる人間と愉しく暮らすことを求めるなら、結婚をする必要はない。結婚はそのようなことのための制度ではない。そのでなくて、理解も共感もできなくても、なお人間は他者と共生できることを教える制度なのである。
婚姻は葬礼がそうであるように、人類と同じだけ古い制度である。あるいは、婚姻制度を持たない集団もあったかもしれないが、人類学が教える限り、そのような集団はひとつとして生き残ることができなかった。「他者と共生する」という能力だけが、人間が生き延びることを可能にしているという真理を、この人類学的事実は告げているのではないか。
(162~163ページ)

しばらく前に紹介した『ひとりで生きられないのも芸のうち』(文藝春秋)とも通じるものがある。

ひとりでは生きられないのも芸のうち

著者内田先生の考えに興味をもった方は、2冊併せて読んでいただければと思う。

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