松岡正剛著『誰も知らない世界と日本のまちがい』を読み終わり、『日本という方法』を手に入れる
先週、読み続けていた松岡正剛さんの『誰も知らない世界と日本のまちがい』(春秋社)を読み終わる。
この本は3月25日のこのブログで取り上げた『17歳のための世界と日本の見方』の続編として書かれたものである。
『17歳のための世界と日本の見方』は好評だったようで、同書では扱っていなかった日本と世界の近現代史について語られている。
前作は帝塚山学院大学での講義が基になっていたが、今回は、前作の読者を集め、4日にわたって著者が話したものがベースになっている。
著者は、現在の世界のモデルが産業革命以降のイギリスにあるとし、そのイギリスとイギリスの覇権を引き継いだアメリカがそのモデルを世界に撒き散らし、「同一のルールとロールとツールを使うようになった」ことが、「まちがい」としている。
著者の唱える「編集工学」は以前にも書いたように、単に書籍や放送の編集にとどまらず、社会や個人の文化、意識や行動などを幅広く含む概念である。
著者は、本書では、それぞれ文化風土が違う地域が混在する世界で単一のルールを地域の違いを考慮することなく一律に適応しようとする危うさに警鐘を鳴らしている。
例えば、日本が中国で生まれた漢字という文字で、日本語の音を表現しようとして万葉仮名が生まれ、そこからひらがな、カタカナが生まれたように、受け取ったものを一度咀嚼し、自らに受け入れやすいように修正したり再構成したりして、自分流に変えていくことを「編集」と著者は位置づけている。
アメリカで主導で進む、グローバルスタンダードという名のアメリカンスタンダードを無批判に受け入れていたきた日本のあり方に再考を促しているのが本書だろう。
折しも、サブプライム問題で、アメリカンスタンダードが単なるアメリカのまやかしを押しつけるためのルールでっあったことが明らかになり、馬脚があらわれつつある現在、著者の主張は共感を呼んでいるのか、
松岡正剛フェアを行っている書店があったり、新刊の本書『世界と日本のまちがい』に加え前編にあたる『17歳のための世界と日本の見方』を揃えて、平置きで並べてある書店もあった。
その著者が、日本の歴史を振り返り、日本人が歴史の中で、外からの文化をどのように編集し受け入れてきたかをまとめのが、『日本という方法』(NHKブックス)である。この本は、2006年9月に初版が発行されているが、ほとんどの書店に在庫がなく、あっても汚い本しかなく、いろいろな書店に行くたびに探していたのだが、昨日ようやく見つけた。

日本という方法―おもかげ・うつろいの文化 (NHKブックス)
日本全体で、アメリカンスタンダードを直輸入してきた小泉・竹中政治の見直しをする時期に来ているのだと思う。
その時、歴史を振り返り、過去の日本人がどのような形で他国の文化を受け入れ、自分流に「編集」してきたかは、学ぶ意味があると思う。
| 固定リンク | 0
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 西野智彦著『ドキュメント通貨失政』(岩波書店、2022年)を読み終わる(2023.02.24)
- 三宅香帆著『それを読むたび思い出す』(青土社、2022年)を読み終わる (2023.02.18)
- 北条早雲(伊勢新九郎盛時)を描く『新九郎、奔る!』(ゆうきまさみ、小学館)(2021.05.22)
- 『戦乱と政変の室町時代』(渡邊大門編、柏書房)を読み終わる(2021.05.16)
- 小野不由美著『十二国記』シリーズ (新潮文庫版)を読み終わる(2015.03.01)
コメント