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2008年4月13日 (日)

徳永英明『VOCALIST』シリーズ300万枚突破の意味を考える

このブログでも、何回か取りあげた歌手の徳永英明さんが女性ヴォーカル曲の名曲を集めてカバーしたアルバム『VOCALIST』シリーズ3作の出荷累計(*)が300万枚を超えたという話題が3月下旬に報道された(2008年3月28日スポーツ報知、*記事には出荷か販売かの明示はなし)。
記事では 1作目の『VOCALIST』が100万枚、『VOCALIST2』が90万枚、『VOCALIST3』が115万枚と書かれている。4月9日には3作品をセットにした『VOCALIST BOX』も発売された。

以前記事を書いた時に調べた時は、『VOCALIST3』の発売直後で累計100万枚を超えたと言われていたので、おそらく『VOCALIST3』リリース後にTVなどでも話題にされるように、さらにヒットに拍車がかかったいうことのようだ。

私は3枚のアルバムをレンタルショップで借りてきたパソコンでCDにコピーし、また携帯電話の音楽プレーヤーにもコピーして毎日のように聴いているが飽きることがない。たしかに、取り上げられているどの曲もかつての大ヒット曲ばかりであり、懐かしいという面もあるが、同じようなノリで往年の女性アイドル歌手が女性ヴォーカル曲をカバーしたアルバムを借りてきたところ、全然いいとは思えなくて、1度聴いただけで、コピーもせずに返してしまった。

○人を惹きつける何か
やはり、原曲のよさ以外に歌手徳永英明の持つ何かが、聴く人を惹きつけたからこそ、カバーアルバムとして異例のヒットになったのだと思う。その謎についての、自分なりの納得する答えを見つけたくて、ネット検索を使って、『VOCALIST』シリーズについての彼のインタビューを聞いたり、読んだりしてみた。

(1)なぜ、シンガー・ソングライターが他の歌手のカバーをしたのか?
作詞・作曲と歌唱を一人でこなず、シンガー・ソングライターである彼が、自分の曲でなく他人の歌をカバーする理由は、自分の歌い手(シンガー、ヴォーカリスト)としての部分の力を極めてみたいという思いがあったようだ。
あるインタビューでは、「ファンクラブ限定のコンサートでカバーだけのライブをやったことで、ヴォーカリストとしての思いに火がついた、それまでは自分をヴォーカリストとして認めていない部分があった」(BARKS:『VOCALIST』リリース記念インタビュー、2005.9.8)ということを答えている。
最初は、ヒット曲を「徳永節で歌えばいいと簡単に考えていたが、もとの歌手が作り上げたメロディを完全に把握した上で、そこから徳永流に仕上げていかなければならないということに気がつき、自分のオリジナル曲より真剣に歌った」という趣旨のことも語っている(ユニバーサルレコードのホームページにある「「VOCALIST」発売によせて」と題したコメントビデオ)。

(2)なぜ、女性ヴォーカル曲なのか
男性歌手が女性ヴォーカル曲を歌うことについては、「男性が書いた歌だと気持ちが判りすぎるから、その時は歌えても、しばらくするともうその気持ちではないので歌えない。女性の書いた詩は、俯瞰的になれるので、シンガーに徹することができる。感情を抜きにして、メロディと言霊を気持ちよく歌える」という趣旨のことを話している。

(3)選んだ歌に対する思い
この点は、以前のブログの記事でも書いたが、「一度世の中に広まった曲というのは”お供え物”」のようなもので、それを(神棚から)「降ろしてきて敬意を表し、自分達流に形を壊さずに作り直し」戻した感覚と語っている。

上記の3点だけを見ても、彼が今回の『VOCALIST』シリーズで、単にかつてのヒット曲を歌っただけではないことが判る。

○名曲を継承し再生する
その結果、『VOCALIST』シリーズは、広く人びとに受け入れられ、過去の名曲を現代に再生する役割を果たすことになった。
最初の『VOCALIST』を出した時、彼がどれだけそのことを意識していたかは判らないけれど、『VOCALIST』シリーズの評判が上がるにつれ、過去の名曲を継承し、自分なりの歌い方で再び世の中に送り出すということを意識するようになったのではないだろうか。

○中年クライシスを乗り越えた
さらに、私は彼が40歳早々で脳血管障害系の「もやもや病」という病と戦い、再生、復活したことと無関係ではないだろうと思う。それまでに、シンガー・ソングライターとしてはもちろん、俳優としても活躍していた時に襲った病。それは、まさしく「中年期の危機(中年クライシス)」であったろう。
その復活の過程で、彼が巡り会ったのがシンガー、ヴォーカリストとして、過去の名曲をカバーするということだったのだと思う。

『VOCALIST』シリーズ3作で、歌手としての自分の位置づけと自分自身で作りかえた彼は、この3作で シンガー、ヴォーカリストに徹したことを糧として、再びオリジナル曲を手がけた。中年クライシスを乗り越えた、中堅歌手が、これから先どのように活躍するか、同世代として注目し、応援していきたい。

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