最近の積ん読(つんどく)本-新書編(2008年5月)
週に2、3回は本屋に行って、あてもなく並べてある本の表紙やタイトル、帯のキャッチコピーなどを眺めながら、気になった本を買って読むというのは私の楽しみの一つだが、読み終えるスピードは限られているので、読まない本が溜まってしまうのが難点である。下手をすると、買ったまま読まないで終わる本も出てくる。時々、本棚を整理して、読まないままの本を棚卸し、読んでいない本を確認しておかなくてはならない。
備忘録をかねて、最近買った本のうち新書の中から何冊かを紹介しておきたい。
野村進著『調べる技術・書く技術』(講談社現代新書)
講談社現代新書2008年4月の新刊の打ちの1冊。著者は、1956年生まれの現役のノンフィクションライター。この手の本は、ノウハウ本としてあまた出版されているが、著者は自分のノウハウに加え、自ら吸収してきた過去のライター達から直接・間接に教えられたものも含め、公開し次代に伝えていきたいという目的で書かれている。この本は既に読み終わったが、この本自体が野村進というライターの取材から執筆までの活動を語る優れたノンフィクションという気がした。
大沢真幸著『不可能性の時代』(岩波新書)
こちらは、岩波新書の4月の新刊。現在、京都大学大学院教授である著者は1958年生まれ。専攻は比較社会学・社会システム論とある。
戦後という時代を社会学者見田宗介氏の提起した時代区分「理想の時代 1945年-60年」「夢の時代 1960年-75年」「虚構の時代 1975年-1990年」を紹介して、この時代区分に即して、著者なりの時代の解説をしている。
私が生まれたのが1960年。「理想の時代」から「夢の時代」の転換点で生まれ、夢の時代を育ち、高校生以降は「虚構の時代」を生きてきたことになる。さらに虚構の時代の終焉を象徴するのが、オウム真理教による地下鉄サリン事件とされている。
再び、時代の転機を迎えているように見える昨今、もう一度戦後を見直してみるのも意味があるのではないかと思って手にした。
齋藤孝・梅田望夫著『私塾のすすめ』(ちくま新書)
ちくま新書5月の新刊。現在のオピニオンリーダーとも言える1960年生まれの2人の対談である。同じ1960年生まれの私は、このブログを書き出す前、斎藤氏の本は何冊か読んだし、梅田氏の本はこのブログでもたびたび紹介してきた。2人が対談して、何をテーマに、どのようなことを語ったのか興味深い。
綾野、富坂聰編『中国が予測する”北朝鮮の崩壊”』(文春新書)

これは文春新書の5月の新刊。タイトルだけ見て、立ち読みもせずに買った。朝鮮半島の北側に位置する朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が、国としていつまで存続しえるのか、関心のあるところである。
しかし、それは、北朝鮮という国の事情だけでなく、中国、ロシア、米国というパワーポリテクスの産物であるに違いないし、もし北朝鮮の崩壊が起きれば、隣国韓国や日本にも大きな影響があることは避けられないだろう。
本書は、中国の国防大学国際戦略研究部所属の研究者が発表したレポートを入手した日本人ジャーナリストが抄訳したもののようである。
どこまで信憑性のある話なのかも含め、自分で読んで考えるしかないテーマだろう。
こうやって、最近買った新書を並べてみると、新書という媒体は「時代を映す鏡」なのだろうという気がする。いくつもの出版社から毎月何冊もの新書が出され、全部あわせれば月100冊近くになるだろう。もちろん、とても全部は読み切れないが、興味を持ったものは、読んでおいた方がいいのだろうと思う。
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