村山治著『市場検察』を読み始める
2008年4月に出版されたばかりの村山治著『市場検察』(文藝春秋刊)。「市場」と「検察」あまり組み合わされることのない言葉の組み合わせに興味をひかれ、ゴールデンウィーク用の積ん読本として購入。ようやく、先週週末から読み始めた。
著者は現在朝日新聞の編集委員。著者紹介によれば、1973年毎日新聞入社後、司法・警察関係の記者などを経て、1991年には朝日新聞に移り、バブル崩壊後の大型経済事件を取材したとある。
高度成長時代の「政・官・業」のトライアングル体制の下、護送船団方式でコントロールされながら成長を続けた日本経済。その中で、検察は世の中の変化を後追いするものとされてきた。その検察が、90年代以降のグローバリゼーション、市場経済化の進展の中で、どうその姿を変えてきたかを、その時々、世間を騒がせた大型経済事件と検察の関わりを語る中で、浮き彫りにしようとしたものである。
中村喜四郎建設大臣のゼネコンからの収賄事件を皮切りに、90年代以降起きた数々の事件の裏で、検察がどのように考え、どのような動きをしていたかが、取材に基づいて語られる。
どの事件も「そういえば、あの頃こんな事件があったなあ」と思い出すものばかりで、その背景で、どのような動きがあったのか、そもそもそれらの事件の本質は何だったのか?事件当時の報道はどうしても目先の話題に集中しがちで、なかなか事件の構図、全体の枠組みを分析するには至らない。
構図・枠組みが見えてくる頃には、また別の事件や事故が起きているので、マスコミはそちらに関心を移していくので、新聞紙上で、終わった事件、過ぎた過去がじっくり語られることは少ない。
結局、今回のように、本として出版されるという形になって、ようやく構図・枠組みの謎解きが行われることになる。
その謎解きのおもしろさに夢中になっていたら、また帰りの電車を一駅乗り過ごしてしまった。
最近書店で平置きされてタイトルが何となく気になる『特捜検察vs.金融権力』も同じ著者の手によるものということなので、『市場検察』を読み終わったら、そちらも読んでみようと思う。
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