第66期名人戦第6局、挑戦者の羽生善治二冠が森内俊之名人を破り、4勝2敗で名人位奪回、羽生19世名人誕生
昨日(2008年6月16日)から行われていた将棋の第66期名人戦七番勝負第6局は、3勝2敗で名人位奪回まであと1勝と迫っていた挑戦者の羽生善治二冠(王座・王将)が、森内俊之名人を破り、この七番勝負で4勝目をあげ、名人位復帰を果たした。
名人位在位が通算5期となったことで、永世名人資格もあわせて獲得。昨年の森内18世名人に続く、羽生19世名人の誕生である。
将棋の内容は、このシリーズ第3局、第5局と森内名人が先手番だった時に採用したお互いに飛車先の歩を伸ばしあう相掛かり戦法を、羽生二冠が採用。森内名人が優位を築いた戦法を採用し、自らの先手番が確定している第6局で決めてしまいたいという意思表示でもあったのだろう。
羽生陣営が飛車、角、銀、桂を森内玉の向け攻撃の焦点を絞り込む。途中、森内名人も羽生陣に歩を打ち込み、「と金」作りに成功したが、十分活用しきれないまま終わり、羽生二冠は飛車捨てて、森内玉の逃げ道にふたをした上で、寄せにかかる。森内名人も角を捨てて最後の反撃を試みるが、形作りの感も否めず、再び羽生二冠が攻めに転じると、ほどなく森内名人の投了となった。
その時点で、森内名人は、無冠の前名人・九段となり、羽生二冠は羽生名人(・王座・王将)となった。
羽生新名人にとって、名人位奪回は永年の悲願だったに違いない。以前もこのブログで書いたことがあるが、トーナメントが中心の他のタイトル戦と違い、名人への挑戦権は、プロ棋士の頂点とも言える順位戦のA級に在籍する10人の総当たりリーグ戦を制したものに与えられる。毎年下位2名は、一つ下のB級1組に降級し、B級1組の上位2名が昇級してくる。6月から3月までの10ヵ月間、毎月1局ずつ。おそらく、気を抜ける戦いなど1局もない。このトップ10によるリーグ戦で最も多くの勝ち星をあげなくてはならない。
誰が見ても、現在の将棋界の第一人者の羽生新名人であっても、毎年、A級を制することは容易なことではなかった。
羽生新名人は、初めてA級に昇級した第52期順位戦(1993年度)でA級を7勝2敗で制し、第52期名人戦(1994年)に、前年史上最年長の49歳で新名人となった米長邦雄名人の挑戦者として登場し、米長名人を4勝2敗で降して、初の名人位に着く。その後、それぞれ自分と同じようにA級昇級初年度でA級を制した森下卓八段(第53期)、森内俊之八段(第54期)をそれぞれ4勝1敗で降し、3連覇を達成した。この時点は、通算5期の永世名人位獲得も時間の問題と誰もが考えていたに違いない。
しかし、ここで谷川浩司竜王が待ったをかけた。前年(1996年)秋に将棋界のもう一つのビッグタイトル竜王位を羽生から奪還した谷川は、第55期(1996年度)の A級順位戦も8勝1敗で制し、名人挑戦者として登場し、七番勝負では4勝2敗で羽生名人を破り、3度め、通算5期目の名人位獲得を果たし、永世名人(17世名人)資格を獲得した。
その後、同世代の強者が続々とA級に昇級してくる中、A級を制することさえ難しくなった。その間、名人位は谷川(第55期)から佐藤康光(第56期・第57期)、丸山忠久(第58期・第59期)と森内俊之(第60期)と羽生世代の棋士達の間を転々とする。
久々のチャンスが巡って来たのは、第61期(2002年度)のA級順位戦。この時は、佐藤康光王将、羽生竜王、藤井猛九段との3人が6勝3敗で並んだ。下位から順に組まれるトーナメントのプレーオフで初戦藤井九段、そして佐藤王将を破って森内名人への挑戦者となり、第61期名人戦では4連勝で森内名人から名人位を奪回し、7期ぶり通算4期目の名人位獲得を果たした。永世名人まであと1期となった。
しかし、ここから、ライバル森内俊之が立ちはだかる。名人失冠後の2003年度の第62期順位戦を9戦全勝という圧倒的強さで勝ち抜いた森内は、第62期名人戦(2004年)で4勝2敗で羽生名人を降し、1年のブランクで再び名人に復位。翌年の第63期(2005年)でも、リターンマッチに登場した羽生を4勝3敗の激戦の末降し、名人戦2連覇。通算3期とし、さらに第64期谷川浩司九段を4勝2敗、第65期郷田真隆九段を4勝3敗と毎期挑戦者を退け、名人戦4連覇、通算5期となり、すでに永世名人にリーチをかけていた羽生の永世名人獲得を2度阻んだ後、羽生より先に永世名人位(18世名人)資格を得た。
今期は、すでに永世名人を獲得した森内名人とあと1期の羽生挑戦者の戦い。将棋ファンの気分は「羽生二冠が永世名人になるのは当然」ということだったと思う。守る側の森内名人も相当意識していただろう。実力が拮抗する両者の戦いでは、やはり先に指す先手が有利という近年の実績である。シリーズを振り返って見れば、第3局を除き先手が勝っている。森内名人先手で途中勝勢とまで言われた第3局を、執念で後手番の羽生二冠が逆転勝利したことが、今期の名人戦のキー・ポイントだった。
永世名人位を獲得したことで、現在ある7つのタイトル戦のうち、永世称号を獲得していないのは、竜王位だけとなった。こちらは、連続5期か通算7期という条件で、現在竜王位にある渡辺明竜王が4連覇しており、今期連続5期目の永世竜王位獲得に挑む。
ランキング戦1組の1回戦で深浦王位に敗れた羽生新名人は挑戦者決定の決勝トーナメント進出に黄色信号がともったが、そこから1回戦の敗者8人で行う5位決定トーナメントを制し、1組5位となり、挑戦者への可能性を残した。
郷田真隆九段のファンである私としては、1組3位で竜王戦決勝トーナメント進出を決めた郷田九段に渡辺竜王の永世竜王位獲得を阻む挑戦者となってほしいが、世間は羽生「永世7冠」を期待することだろう。これから始まる竜王戦の決勝トーナメントもおもしろくなってきた。
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