従来の色彩の考え方を見直しを提起する南雲治嘉著『色の新しい捉え方』
私は、いつの頃からか「色」というものにすごく興味を持つようになって、色彩について書いた本をいろいろ読んだり、色彩に関する検定のひとつである東京商工会議所の「カラーコーディネート」検定の3級を受験した(1回目は失敗し、2回目になんとか合格)りしてきた。
特に、「色」が人にどのような影響を与えるのかということに関心があり、色彩心理学的なことに興味があって何冊かその手の本も読んだのだが、どれも今ひとつ腑に落ちなかった。
例えば、一般的に、「青」は男性が好み、「赤」は女性が好むという傾向にあるが、それがすでに、そのような色づかいが身の回りでされている中で育つから、そのように感じてしまうか、それとももっと別の科学的な根拠があるのか、どの本を読んでもその辺りが曖昧で、いつも消化不良というか、喉に魚の骨が引っかかったままのような、気分だった。
光文社新書の2008年6月の新刊の一冊、南雲治嘉著『色の新しい捉え方』は、そんな私のもやもやした思いを、一気に解消してくれそうな本である。
著者は現役のデザイナーであるが、現在、大学などで教えられている色彩学や、色彩検定で資格は「デザインの現場では役に立たない」し、現在、世間に出回っている色彩の本には、根拠がはっきりしない間違ったものの多いという話から始まる。
近年、著しい発達をみせる脳科学や、物理学(素粒子論)を取り入れた色彩論、色彩学に変えていかなければならないと著者は強調している。その思いが『色の新しい捉え方』というタイトルにも反映されている。
脳科学の発達の中で、特定の色とホルモンの分泌との関係が明らかになってきているとのことで、先ほどの青と赤の例でいえば、人間は、青い色を見ると「セロトニン」というホルモンの分泌が促され、セロトニンは血液の生成と神経の安定に貢献するので、結果としてリラックス効果と集中心が生まれ、興奮を鎮める効果をもたらすという。一方、赤い色を見ると「アドレナリン」が分泌され血流が促されるという。
赤は女性が好み、青は男性が好むということの説明として、「子どもを生む女性は血行が良い必要があり、古来、直感的・経験的に「赤」を好んできたのではないか。一方、男性は生活において冷静さを求められることが多く、そのため「青」を好んできたのではないか。」という説があり、それは、上記のホルモンの分泌からも裏付けられていると著者は語る。
全体を通して、それぞれの色の持つ波長やエネルギーを物理的にとらえ、それを知覚した脳がどのような反応を示すかということをベースに「色」が人間に与える影響を捉え直そうとしている。それら、最新の科学により明らかになった成果を踏まえると現在の色彩論のは根拠が薄弱な論・説が多く、見直さなければならない時期に来ているということのようだ。
「色」について関心がある方には、一読を勧めたい。
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