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2008年8月28日 (木)

黒川伊保子著『恋するコンピュータ』に登場する昭和34年から37年生まれの世代論

しばらく前に、このブログで取り上げた黒川伊保子著『恋するコンピュータ』。この中に、一時、私がこだわっていた世代論が登場する場面がある。その切り口が、面白いので、紹介しておきたい。

恋するコンピュータ (ちくま文庫)
恋するコンピュータ (ちくま文庫)

技術者の意識について語ったものである。

「私たちの上の世代は、『鉄腕アトム』や『鉄人28号』に度肝を抜かれて科学信者になった人たちです。この世代が、日本のコンピュータ黎明期を牽引してきたのでした。
これに対し、私たちの世代は、科学技術万能主義に対するアンチテーゼを抱えている世代です。個性を無視して技術に邁進することがほんとうに幸せなことなの?という小さな違和感。ブルトーザーで整地するような力ずくでの開発ではなくて、自分だけにできる独自の技術をこころを込めて提供したいという思いに駆られた世代です。量より質へ転換した、際(きわ)の世代なのかもしれません。不思議なことに、この特徴は、昭和34年から37年くらいまでに生まれた技術者に特に顕著に出るようです。この後の世代は、もう少しバランスよく中庸で、正攻法の大量生産にも機嫌よく応じています。」(黒川伊保子著『恋するコンピュータ』ちくま文庫、66ページ)

著者は1959(昭和34)年生まれ。その著者の年齢から1962(昭和37)年までのあたりの限られた世代が、個性を無視して技術に邁進することに疑問を抱き、自分だけにできる独自の技術を提供したいという思いに駆られた世代だという。
マスではなく、一人の個人としてのあり方、自分にしかできない何かを求めているというには、技術者だけではなく、われわれのような文化系のサラリーマンでも同じだあるような気がする。少なくとも、私(1960年生まれ)は、そこに共感する。

もしそれが、世代の特徴だとしたら、近年、同世代の人たち(梅田望夫-1960年生まれ、斉藤孝-1960年生まれ、茂木健一郎-1962年生まれ、等)に現代社会のオピニオンリーダーと言える人たちが続々と登場しているのも分かるような気がする。
このブログでも取り上げたサントリー学芸賞受賞作『生物の無生物のあいだ』の著者(福岡伸一)も1959年生まれ、同じくサントリー学芸賞を取った『源氏物語の時代』の著者(山本淳子)も1960年生まれである。
共通する思考パターンは、いずれも世間一般の通説を鵜呑みにせず、疑問を呈して、通説に対する自分なりのアンチテーゼを示していることであろう。そして、そこに共通する思いは、それによって社会や世の中を少しでもよくしたいという気持ちではないかと思う。

なぜ、そのようなこだわりがわれわれ世代に共通する特徴になっているのか、その理由はまだ見極め切れていないが、誇らしいことだと思う。いずれは、その列に自分も加わりたいものだ。

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