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2008年8月18日 (月)

黒川伊保子著『恋するコンピュータ』で語られるプロフェッショナルの特徴

先日、このブログで取り上げたちくま文庫の8月の新刊『恋するコンピュータ』。いくつか、なるほどと思わせるフレーズがあったのだが、今日は、その中でも、人工知能の研究者であった著者が、数多くのプロフェッショナルな人々を見つめ続けた結果、見いだした共通点について触れた箇所を紹介したい。

恋するコンピュータ (ちくま文庫)
恋するコンピュータ (ちくま文庫)

「さまざまなプロフェッショナルの認識と思考回路を見つめ続けていくと、その中核に、どのような部門にも共通する基本的な枠組みが存在することに気づきます。
それはよりよく生きようとする思いです。いのち、言ってもいいかもしれません。あるいは、もう少し味気なく生存本能と呼んだ方がわかりやすいかもしれません。
今、目の前にある事象を認識し、これを現在までの自分の経験に照らして咀嚼して、今以降の自分の糧とする力です。さらに、この新たな認識の枠組みを使って過去を再体験し、知識を整理し直して、より質の高い知識を獲得しようとする気持ち。そして、この積み重ねを、自分や自分の周りのものたちの幸せにつなげたい、という願いです。(中略)
特に、各部門でプロフェッショナルとして活躍する人たちには、
認識→咀嚼→過去の再体験→知識の組み直し→自分や社会への還元
というサイクルを、まるで取りつかれたように繰り返すタフな人間的がたくさんいます。」
(黒川伊保子著『恋するコンピュータ』(ちくま文庫)25~26ページ)

常に自分の周りで起きることに関心を持ち、自分の知識の中で位置づけ直し、知識をレベルアップし、それを自分のみならず社会に還元していこうとするということであろう。

著者がこの文章を最初に書いてから10年。いまや、社会のほとんど全員がそれぞれの立場で幸せを感じられた日本の高度成長時代は遠い昔となり、自己責任という美名のもと、誰かの成功は、他の誰かの犠牲のもとでしか成り立たないようなゼロサム社会、格差社会が到来している。
このような時代にこそ、著者の言う「プロフェッショナル」が求められているのではないだろうか。
これから年を経て何歳になろうと、立場がどのように変化しようと、その時々、その場その場での「プロフェッショナルでありたい」という気持ちを持ち続けていたいと思う。

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