将棋の第67期順位戦B級1組6回戦、久保利明八段が1敗守る
昨日(2008年9月19日)は、将棋の第67期順位戦のうち、A級3回戦第4局の藤井猛九段vs三浦弘行八段、B級1組6回戦、B級2組4回戦が東京と大阪の将棋会館で行われた。
有料の名人戦棋譜速報での中継も、計19局のネット中継。私の使っている17インチの液晶モニターでは、せいぜい頑張って、各局のコメント欄は映さず、盤面表示だけにしても、同時に画面に表示できるのは4局まで。
観戦する方も、全てを見切れない。一度はA級棋士となった実力者とこれからA級を狙う新鋭・中堅が戦うB級1組は、A級2組、準A級と呼んでもいいレベルであり、これを他のクラスと同日にやるのはもったいない。順位戦は、そのクラスに属する全棋士が原則参加なので、対局のスケジュール管理上は、B級1組とB級2組を一度に行ってしまった方が、原則トーナメントの他の棋戦との関係を考えれば、楽なのだろうが、無料中継している他の棋戦と違い、有料で中継しているのだから、1局でも多くファンが見る機会を増やすという視点も持っておいて欲しいものだ。
A級については9月24日(水)に予定されている3回戦最終局の佐藤康光棋王vs木村一基八段戦が終わってから、書くことにして、ここでは、混戦のB級1組について書くことにしたい。
B級1組は、定員13人の総当たりリーグ戦なので、各棋士が12戦する。毎回、1名「抜け番」と呼ばれる「対局のない棋士」がいるので、13回戦が最終戦になる。
今回の6回戦は半数の棋士にとっては折り返し点になる。5回戦までのところでは、元A級棋士の関西の井上慶太八段と、前期昇級即降級を辛くも免れた杉本昌隆七段が4勝1敗でトップに並び、すでに一度「抜け番」があった前期5年間守ったA級の地位を明け渡してB級1組筆頭にいる久保利明八段が3勝1敗で追う。
今日の組み合わせは
【東京】
△渡辺 明竜王(3勝2敗)-▲行方尚史八段(1勝4敗)
△屋敷伸之九段(2勝2敗)-▲堀口一史座七段(1勝4敗)
【大阪】
▲杉本昌隆七段(4勝1敗)-△久保利明八段(3勝1敗)
△井上慶太八段(4勝1敗)-▲山崎隆之七段(2勝3敗)
△阿部 隆八段(3勝2敗)-▲森下 卓九段(2勝2敗)
△北浜健介七段(2勝2敗)-▲畠山 鎮七段(1勝3敗)
<高橋道雄九段(2勝3敗)は「抜け番」>
注目は大阪で行われる1敗どうしの戦い杉本七段vs久保八段であろうが、羽生名人との永世竜王位を賭けた10月からの第21期竜王戦七番勝負を控える渡辺明竜王、過去、棋聖位3期の実績を持ち、やっと実績相応のクラスに上がってきた屋敷九段の戦いぶりも気になるところだ。
杉本七段vs久保八段戦は、振り飛車党の2人だが振り飛車にならず、居飛車の横歩取りといわれる戦型に。それぞれの玉の守りが定まらないうちに、戦いが始まり、大駒の飛車と角が動き回る将棋となった。途中、解説によれば、杉本七段が勝つ筋もあったようだが、盤面中央に活路を求めた杉本玉を久保八段が上下、左右からと包囲網も狭め、逃げ場のない状況に追い込み、杉本七段の投了となった。久保八段は4勝1敗、杉本七段は4勝2敗となった。
他の注目の2局はいずれも東京。
渡辺竜王vs行方八段戦は、相矢倉の戦い。後手の渡辺竜王から矢倉からさらに穴熊へと玉の守りを固め、行方陣への端攻めで風穴を開けたが、行方玉は、中央へと巧みに逃げる。行方八段も渡辺陣を桂馬、香車、歩という機動的な駒で攻め、少しずつ渡辺玉の守りの金銀を剥がす。最後は、歩成りの王手に渡辺竜王が投了。勝った行方八段は2勝4敗、渡辺竜王は3勝3敗となった。
屋敷九段vs堀口七段戦も、相矢倉。こちらは先手の堀口七段が玉が矢倉から穴熊に潜り守りを固めた上で、屋敷陣に攻めかかる。堀口の攻め、屋敷の守りという構図の中で、屋敷玉は巧みに攻めをかいくぐり、堀口陣への入玉寸前に。153手の激戦の末、攻め手の尽きた堀口七段が投了した。勝った屋敷九段は3勝2敗で白星先行。敗れた堀口七段は1勝5敗でますます苦しい星勘定になった。
残る3局の結果も踏まえた、6回戦終了後のB級1組のA級への昇級レースの途中経過は次の通り。
【4勝1敗】久保八段(1)
【4勝2敗】阿部八段(5)、井上八段(9)、杉本七段(11)
【3勝2敗】屋敷九段(13)
【3勝3敗】渡辺竜王(4)、山崎七段(12)
【2勝3敗】高橋九段(3)、畠山鎮七段(6)、北浜七段(8)、森下九段(10)
【2勝4敗】行方八段(2)
【1勝5敗】堀口一七段(7)
1敗を守った久保八段が13人中の順位が1位であることもあり、優位な位置を確保していることは間違いないが、まだ久保vs阿部戦、久保vs井上戦も残されており、まだまだ波乱含みであろう。
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