パソコンでの日本語処理の技術史を語る『パソコンは日本語をどう変えたか』(講談社ブルーバックス)
講談社ブルーバックスの2008年8月の新刊の1冊がYOMIURI PC編集部の『パソコンは日本語をどう変えたか』である。サブタイトルに「日本語処理の技術史」とあり、パソコン、ワープロ、携帯電話といったデジタル機器での日本語、中でも漢字の処理技術の歴史を丹念に追いかけたものである。
読売新聞のパソコン誌「YOMIURI PC」の2007年1月号から10月号まで連載された「誰が日本語を作ったか」を大幅に加筆・修正したものらしい。
話は、日本経済新聞社が1967年に電算機による新聞作りを経営計画に掲げたあたりから説き起こされる。IBMと組んだプロジェクトがANNECS(Automated Nikkei Newspaper Editing & Composing System)として結実し、稼働を開始するのが1972年。
それ以降、住民票作成へのコンピューターでの漢字処理の導入、パソコンの登場、パソコンでの日本語処理、日本語処理に特化したワープロの隆盛、日本語入力手法としての富士通オアシスの「親指シフトキー」、ROMを利用した日本語(漢字)処理の特殊性で初期の日本のパソコン市場を独占したNECの98シリーズ、それをソフトウエア上で処理しようとしたIBMのOS-DOS/V、DOS/Vが果たせなかった98シリーズの牙城を崩した黒船「」コンパックの格安パソコン」とマイクロソフトのOS「Windows95」といった流れで、日本語(漢字)処理をキーとした日本のパソコン普及の歴史が語られている。
個人ユーザーとして、職場で富士通のワープロ「オアシス」の親指シフトキーに慣れしたしみ、「Windows95」とともに、本格的にパソコンユーザーとなった自分にとって、書かれていることのほとんどは、同時代人として自分が体験してきたことで、大変懐かし井思いで読んだ。
一方、パソコンに搭載する漢字の字数や字体によって、日本語の表現が制約され、パソコンが日本語を変化させることになるのではないかといった問題意識が著者の思いにはあるようで、それがタイトルが連載時の「誰が日本語を作ったか」から『パソコンは日本語をどう変えたか』変更された理由ではないかと思う。
いまや、漢字をうろ覚えでも、パソコンの方が、候補を示してくれ、ユーザーはその中から正しいものを選べばよい。パソコンから示される候補の範囲でしか、漢字を使いこなせないというのは、現実かも知れない。
一方で、字数の制約を乗り越えようという「今昔文字鏡」という壮大なプロジェクトが、実施されていたりと、今まで知らないことも知ることができた。
パソコンと日本語処理の歴史に興味のある方は、一読されるとよいと思う。
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