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2008年9月23日 (火)

ドトールコーヒー創業者の座右の銘「因果倶時(いんがぐじ)」、鳥羽博道著『ドトールコーヒー「勝つか死ぬか」の創業記』(日経ビジネス人文庫)より

長く日本が不況のせいもあり、実業界で成功した創業者の一代記のようなものもめっきり少なくなったと思うが、今月(2008年9月)の日経ビジネス人文庫の新刊のうちの1冊『ドトールコーヒー「勝つか死ぬか」の創業記』(鳥羽博道著、日経ビジネス人文庫)は、その例外と言えるだろう。底本は1999年にプレジデント社から刊行された『想うことが思うようになる努力』で、文庫収録にあたり改題されたようだ。

著者の鳥羽博道氏は、昭和12年生まれ。埼玉県出身で、高校中退後、いくつかの職場を転々としたあと、ブラジルのコーヒー農園で3年働いた後、昭和36年に帰国、翌年にコーヒー豆の焙煎加工卸業のドトールコーヒーを創業、その後、喫茶店経営にも進出し、現在はグループ合計で約1500店舗を展開する一大チェーンに育てあげた。現在は、社長を退き名誉会長の職にある。

我が家の近くの駅前の大型スーパーの1階にも、ドトールコーヒーが出店している。休日の朝、そこまで片道約30分の道を歩き、コーヒーを一杯飲んで、帰ってくるというのが、健康のための日課になっていて、ドトールコーヒーの存在は私の生活の一部に組み込まれている。そんな縁もあって、読んでみた。

鳥羽名誉会長が経営の原点として強調するのは、言い古された言葉かもしれないが「顧客第一主義」である。創業間もない頃、ある経営セミナーに参加した際、「顧客第一主義」という言葉を聞いて深く感動したという。「それ以来わたしはさらに自信を深めて、顧客第一主義というものをどこまで深く、強く推進できるかという一心でやってきたと言っても過言ではない」(『ドトールコーヒー「勝つか死ぬか」の創業記』136ページ)とまで書かれている。
顧客第一主義とは、お題目としてはどこの企業も掲げているが、この創業者の本腰を入れた取り組みが、コーヒーショップチェーンの激しい競争の中でも、ドトールコーヒーが生き残っている理由の一つだろう。

また、その鳥羽名誉会長の座右の銘として語られているのが、仏教の「因果倶時(いんがぐじ)」という言葉である。

「私が座右の銘にしている言葉に、「因果倶時」というものがある。「原因と結果というものは必ず一致するものだ」と釈迦が説いた言葉だ。現在の「果」を知らんと欲すれば、つまり、現在の自分がどういう位置にあるかを知りたいと思うなら、過去の原因を見てごらんなさいということだ。原因を積み重ねてきた結果として今日がある。原因と結果は一致している。そして、未来の「果」を知らんと欲すれば、つまり、将来自分はどうなるだろうかと知りたいのであれば、今日一日積んでいる原因を見れば分かる。自分自身が毎日、未来の結果の原因を積んでいるということだ。
人生の真理をこれほど厳しく、鋭く突いている言葉はないと思う。この言葉の意味を初めて知った時、一日、一時間どころか、一分、一秒すらおろそかにはできないと、息の詰まるような思いがしたものだ。」(『ドトールコーヒー「勝つか死ぬか」の創業記』220~221ページ)

現在の自分が過去の自分の延長線の上にしかあり得ないように、今日の自分の積み重ねの先にしか、将来の自分の姿はない。将来を見据えて、日々無為に過ごすことがないようにしていくしかない。

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コメント

たまたま観たこちらのブログのこの文章に感激し、自分のブログの文章の参考(というより真似)にさせていただきました。事後報告で申し訳ありません。盗作と言われそうですが、素人なので平にご容赦を。ひょんな「ご縁」で知ったこちらのブログ。これからは楽しみに読ませていただきます。取り急ぎお礼とお詫びまで。

投稿: フォトの鉄人 | 2008年9月29日 (月) 22時07分

フォトの鉄人さん、コメントありがとうございました。

さすが、プロカメラマン。そちらのブログに貼られている写真についつい見入ってしまいました。

よろしければ、またお立ち寄りいただければと思います。

投稿: 拓庵 | 2008年10月 5日 (日) 13時08分

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