サブプライム問題につき、その構造と原因を分析した「金融市場戦略チーム」の第一次、第二次報告書を見つける
米国のサブプライムローン問題が騒がれるようになってほぼ1年が経過した。
米国の景気減速に伴って低所得者向けの住宅ローン「サブプライムローン」の延滞率が上がり、そのサブプライムローンを証券化した運用商品(有価証券)を購入していた世界各国の投資家が評価損の計上を余儀なくされ、中には破綻するところも出てきたという程度の認識しかなかった。
もう少し詳しく理解しなければいけないと常々思っていたが、新聞を読んでも、ただいま現在目の前で起きていることの報道だけで、この世界中に飛び火した事件の構造を説明してくれるような記事は見たことがないし、書店にはあまたの解説本が並ぶが、どの本が素人向きの解説書と信頼がおけ、わかりやすいのか見極めきれず、結局、理解が進まないままだった。
仕事で、いろいろ調べていたら、ようやく素人にもよく分かるように書かれたレポートを見つけた。
2007年9月に渡辺喜美金融担当大臣の私的諮問機関として民間の実務家等を中心に発足した「金融市場戦略チーム」がまとめた2回の報告書である。2007年11月に第一次報告書、さらに2008年6月に第二次報告書がまとめられたもので、現在、金融庁のホームページで公開されている。
特に、第一次報告書は、2007年9月からスタートしたが、11月までの3ヵ月間に証券会社、格付会社、機関投資家等から勢力的にヒアリングそして議論を行ってまとめられたもので、わかりにくいサブプライム問題の構造・構図というものをポイントを整理しまとめている。さらに、原因の分析、今後、マーケットを正常化していくために取り得る施策の提言まで行っており、その提言の多くはその後の国際的な検討でまとめられた対応策の中に反映されたようである。
この報告書を読むと、サブプライム問題は、冒頭に私が書いたほど単純な構図ではない。第一次報告書の概要にまとめられている主要な役割だけを並べてみても、
①サブプライムローンの借り手
②サブプライムローンの貸し手
③貸し手からローンを買い取って証券化商品を組成した銀行等
④証券化商品に格付をした格付会社
⑤証券化商品の販売者
⑥証券化商品を購入した投資家
の6つの役割があり、それが複雑に絡み合っている。(その後、証券化商品の償還を保証した保険会社=モノラインも登場するが、2007年11月時点ではその存在まではあぶり出されていない)
さらに、証券化商品を運用する仕組みとして、長期運用である証券化商品を担保にした短期の資金調達を行うコマーシャルペーパー(CP)を発行するという手法が広まっており、そのCPの償還に問題が生じた場合の償還を保証する(流動性補完)を金融機関等が行っている。
大勢の利害関係者が、サブプライムローンという米国の高リスクの住宅ローンのリスクを分散して負担していたことになるが、サブプライムローンの延滞率の上昇というリスクの増加が、この世界中に張り巡らされたリスク負担の連鎖に、増幅して伝わり、数多くの破綻を招き、現在もまだ解決していないということであろう。
この問題に関心のある方は、報告書を一読されることをお勧めしたい。
<リンク>
第一次報告書の概要
第一次報告書
第二次報告書の概要
第二次報告書
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