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2008年10月21日 (火)

第21期竜王戦第1局【梅田望夫観戦記】を読んで「人間が人間と戦う将棋の面白さ」を考える

永世竜王位を賭け戦いとなった将棋の第21期竜王戦第1局のパリ決戦は、挑戦者の羽生善治名人が初戦勝利で、永世竜王に向けて一歩前進したが、この第1局のもう一つの話題が、2008年6月の棋聖戦第1局に続き、『ウェブ進化論』などの著者梅田望夫氏の観戦記である。
1960年生まれの梅田氏は、かなりの将棋好きで、梅田氏のブログにもウェブ関連の話題に交じって、よく将棋の話題が登場する。よく古今東西の棋書を読んでいるし、長年にわたり将棋界の変遷を見ているし、順位戦やタイトル戦などの主要な対局も時間があるときは、自ら棋譜を並べ、素人の域を超えた棋譜鑑賞をされているようだ。
その将棋に対する造詣の深さを下敷きに、『ウェブ進化論』などの著作でみせた表現力で観戦記を書くので、並の観戦記者の書く観戦記の及ぶところではない。将棋連盟にとっては、願ってもない応援団といえるだろう。

梅田氏は今回の2日間を観戦して計13回の観戦記を書いているが、第2回に「人間が人間と戦う将棋の面白さ」と題して、渡辺明竜王のことを語っている。梅田氏は渡辺竜王が書いた『頭脳勝負』(ちくま新書)の帯に推薦文を書くため、ゲラ段階で読んだことを紹介し、渡辺竜王の話を通じて、自らの将棋界への見方も語る。

誤解を恐れずにいえば、これまでの将棋界は、「将棋が好きなら、将棋を指してください。そして強くなってください。将棋の強さで、将棋への愛をはかりますよ」というところが強かったと思う。
トーナメント・プロの世界はもちろんそれでいい。(中略)
将棋の未来を切り開いていくためには、「指さない将棋ファン」「将棋は弱くても、観て楽しめる将棋ファン」を増やさなくてはいけない。渡辺さんはそう考えて「頭脳勝負」という本を書いた。さらにこの「頭脳勝負」という本は、対局者の心理戦の面白さを描き、「人間が人間と戦う将棋の面白さ」とは何かを突き詰めたもので、人間と人間が戦う最高峰の将棋の魅力は将棋のことをあまりわからない人でも十分に楽しめるものなのだという渡辺さんの願いがあらわれていた。(以下略)
(【梅田望夫観戦記】 (2)「 人間が人間と戦う将棋の面白さ」より)

“将棋の未来を切り開いていくためには、「指さない将棋ファン」「将棋は弱くても、観て楽しめる将棋ファン」を増やさなくてはいけない。”という部分は渡辺竜王の思いであり、梅田氏の思いでもあるだろう。
私は、自分は特に誰かと将棋が指したいとは思わないが、日本の中の一握りの天才たち150名がしのぎを削る世界での、頼るものは自分の力だけという、究極の実力の世界、自己責任の世界での、天才たちの生き様に興味があって将棋を見ている。彼らは、負けても他人のせいにはできない。負けは、自分の力が相手の力に及ばなかったという冷徹な現実が自分に突きつけられるだけの話である。そういう勝ち負けでしか評価されない世界で、その厳しい世界で生きている棋士たちの戦いの記録である「棋譜」は、棋士の生き様の記録でもあり、難しい局面に成った時、自分ならどう指すだとうかと考えたり、そこに表現される棋士の個性に魅力を感じて見ているようなものだ。

今の日本社会で声高に求められている自己責任というものをプロ入りを目指した時から、ずっと背負ってきている150人の天才たち。しかし、その150人も、タイトルを獲れる一握りのスーパーエリートとそれに取って代われる実力を持つ10名ほどのトップ棋士を頂点に、勝負に現れた言い訳のできない、したところで意味のない、階層社会が形成されている。その中で、どう生き抜いていくかは、一人ひとりの個性の表れるところだろう。

プロ将棋が、端的に言ってしまえば、スポンサーの賞金によって成り立つ興業(見せ物)である以上、それは、また、より多くの人に感心も持ってもらってこそ、成り立ち、発展する世界であろう。そこをよくわかっている渡辺竜王は、梅田氏が観戦記の中で書いているように将棋界の次世代を担うリーダーに相応しいといえるのだと思う。

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