将棋第29回JT杯日本シリーズ(2008年度)決勝は前回覇者の森下卓九段vs深浦康市王位の花村門下兄弟弟子対決が実現
一昨日(2008年10月25日)は、第29回JT杯日本シリーズの準決勝第2局が行われた。前回優勝の森下卓九段vs森内俊之九段という昨年の決勝と同じ顔合わせである。
森内九段の先手となった将棋は、相矢倉の戦いに。相矢倉はお互いが駒組みを玉の守りを固め、優位を確保するためのつばぜり合いが続くケースが多いが、中盤で後手の森下九段に、前期優勝時の指し回しを思い来させる思い切った角切りの鬼手が飛び出し、これをきっかけに一気に森内陣を突破。その後、森内九段の反撃もあったが、森下九段が押し切った。http://www.jti.co.jp/JTI/shogi/result/2008/3-2kyoku.html
すでに10月4日に行われていた準決勝1回戦、羽生善治名人vs深浦康市王位戦では、羽生名人の攻めをしのいで入玉に成功した深浦九段が、王位タイトル防衛に続き、羽生名人を降し、本棋戦初めての決勝進出を決めている。
http://www.jti.co.jp/JTI/shogi/result/2008/3-1kyoku.html
決勝戦は、前回(第28回)の優勝者である森下卓九段と七冠復帰を目指す羽生善治名人を相手に王位タイトルの防衛戦に勝利し、九段昇段も勝ち取った深浦康市王位の組み合わせとなった。奇しくも2人は、故花村元司門下の兄弟弟子である。また、森下九段が福岡県出身、深浦王位が長崎県出身と、九州出身棋士の対決ということにもなる。
日本シリーズの出場資格は、「前年度のJT杯覇者、当該年度の4月1日時点での公式タイトルホルダー(竜王・名人・棋聖・王位・王座・棋王・王将)、前年末での賞金獲得ランキング上位者の順で12名まで」というものであり、まさに選りすぐりのトップ棋士で争うものであり、タイトルホルダー以外は賞金ランキング上位者という点で、本当に将棋に勝って稼いでいる棋士ということになる。タイトルホルダー以外はA級棋士が中心にはなるが、今(第29回)大会では、現A級で過去優勝経験もある藤井猛九段や、やはりA級の三浦弘行八段、鈴木大介八段は選から漏れている。
まさに、現在、本当に強くて各棋戦で勝っている棋士12名の星のつぶし合いの中で、勝ち残ったことになる。
深浦王位の去年・今年の活躍は、昨年の王位戦で4勝3敗で羽生善治現名人から王位タイトルを奪い、今年再度の七冠制覇をめざしリターンマッチに登場した羽生名人を再度4勝3敗で破り、王位タイトル2連覇を達成したことだろう。今期(2008年度)は三度目のA級復帰も果たし、本棋戦の優勝とA級残留を決め、名実ともにトップ棋士としてもう一段の飛躍を果たしたいところだろう。
一方の森下九段は、昨年の本棋戦で下馬評を覆し、思い切った指し回しで、見事優勝した。大きな棋戦での優勝は1990年度の第9回全日本プロトーナメント以来、タイトル挑戦を見ても、第48期王将戦(1998年度)で羽生善治王将に4勝1敗で敗れたのが、最後であり、長年守ったA級棋士の座も第61期(2002年度)に2勝7敗で降級。第64期(2005年度)の復帰をはたすが、3勝6敗で1期で降級を余儀なくされた。戦績的には、すでに過去の人になりつつあった森下九段の復活は印象に残るものであった(本ブログ:2008年1月5日: 将棋の森下卓九段の中年クライシス)。過去28回の歴史の中、谷川九段と郷田九段の2人しかいないという本棋戦の連覇を果たし、昨年の優勝がフロックでなかったことを示したいところである。l
11月22日に行われる決勝は、兄弟弟子対決ことですでに話題だと思うが、上述のようにどちらが勝っても、ドラマがある。まさに、第21期竜王戦第1局の【梅田望夫観戦記】で語られた「人間が人間と戦う将棋の面白さ」(第21期竜王戦第1局【梅田望夫観戦記】(2))ではないかと思う。
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