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2008年10月23日 (木)

倉都康行著『投資銀行バブルの終焉』を読み終わる

サブプライム問題に端を発した世界の金融危機に関する本を何冊か読んできたが、知人のmacky-junさんのブログ「神楽坂のキャピタリスト」の中で紹介されていた倉都康行著『投資銀行バブルの終焉』(日経BP社)を読んでみた。

著者は、旧横浜正金銀行を引き継いで誕生した東京銀行(1996年三菱銀行と合併し、現在の東京三菱UFJ銀行)の香港、ロンドン支店勤務の後、米国のチェース・マンハッタン銀行に移り「内外の証券や金融派生商品などのディーラーや商品開発という、市場部門での仕事を長く担当してきた」(『投資銀行バブルの終焉』15ページ)と自ら紹介しているように、金融の現場で、投資銀行の隆盛を見続けてきたビジネスマンである。

預金を集め、それを貸出に回して預金金利と貸出金利との利鞘で利益ろあげる商業銀行に対し投資銀行は企業の発行する債券や株式を引き受けて投資家に販売し、引受手数料や販売手数料で収益を上げる。日本で言えば証券会社に当たる。ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、メリル・リンチなどが大手である。今回の金融危機の中で経営が悪化し2008年5月にJPモルガン・チェースに救済合併されたベアー・ズターンズは米国第5位、2008年9月に経営破綻したリーマン・ブラザーズは米国4位の投資銀行だった。

本書は、その投資銀行が隆盛を極め、しかしその飽くなき利益追求の果てに、サブプライムローンの証券化というビジネスにのめり込み、破綻していったかを描いている。(この本が書かれた時点では、リーマン・ブラザーズはまだ破綻に至っていなかったが、破綻もやむなかったというのは、本書を読むとよくわかる)

今回の金融危機は、詳しく調べれば調べるほど、まさに欧米を中心とした世界の金融機関での信用バブル、金融バブルであるということが見えてくる。金融機関が自らの利益確保のために、金融工学を駆使し、従来の金融の常識を逸脱してリスクをとり、破綻するか破綻寸前に追い込まれるところが続出している。そのリスクテイクは、主に投資銀行を中心とした金融の世界の中で行われてきたことではあるが、しかし、投資銀行とともに今回の騒動の主役でもあり被害者でもある商業銀行は、自己資本比率規制というルールに縛られている。
一定規模の貸出資産を維持するには、一定規模の自己資本を維持しなければならない。証券化商品の評価損・売却損がかさみ、多額の赤字を計上し、資本が毀損するとその資本の減価分に見合う貸出資産を減らさなければならない。それは、貸出先から貸出金を回収するということであり、ここにいたって金融機関の世界でのマネーゲームの結末が、貸し渋りという形で実態経済に影響してくる。

まだまだ、回復への道のりは長いだろう。

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